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「Song for a Whale」by Lynne Kelly / レビュー


Song for a Whale

by Lynne Kelly

【作品情報】

ジャンル:フィクション、児童書(ミドルグレード)
出版:2019年(Delacorte Press)


【レビュー】

主人公Irisは、耳が聞こえない女の子。手話ができる人としか話せないのに健常者ばかりの学校に通っており、家族でも聞こえないのは自分だけ。母親と兄は手話が使えるが、父親は習得しておらず会話もままならない。

誰かといる時に感じる孤独は、1人でいるときの孤独感よりも冷たく悲しい。そのことを身をもって知っている彼女が、学校の授業で孤独なクジラ「Blue-55」のことを知った。Blue-55は、発する歌のヘルツが通常と異なるため仲間とコミュニケーションが取れず、相手にもされず、ずっと独りぼっちでいるクジラだ。Blue-55を自分に重ねたIrisは、何とかクジラを助けようとプロジェクトを進めていく。

まず、私は手話がベースの本というのを読んだことがなかったので、今回とても不思議な感じがした。Irisと周りとの会話はすべて手話で進行していく。モノローグはモノローグで違和感はないけど、周りとの会話はすべて手話。会話があってもそこに音は存在していない。そう思いながら読んでいると、自分も音のない世界にいるような気分になり、知りもしない手話を理解できているような不思議な感覚がした。

そして、Irisはプロジェクトを進めながら何度も壁にぶつかり挫折感を味わうが、周りの助けを借りながら道を切り開いていく。私は小さい頃から1本筋を通すようなことは苦手だったので、確固たる目標を持ち続け、大人の科学者にも引けを取らない意思と行動力を持つ彼女は純粋にすごいと感じたし、そんな彼女の冒険を一緒に味わうことができて楽しかった。未来への可能性を秘めた子供たちに、挑戦する力と勇気を与えてくれる作品。


【訳書情報】

日本語版なし(2023年現在)


#洋書

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