見出し画像

自分の存在価値を疑ってしまったときこそ、読み返したい

「人はどういうときに最も苦しいのか? 働いて働いて、死ぬほど忙しいときでは決してない。人が最も苦しいのは、自己評価が極端に低くなっているとき。自分自身で自分の存在価値を疑う状況に追い込まれたときだ」

USJをV字回復させた「凄腕マーケター」として知られる森岡氏が、進路に悩む長女のために書いた一冊。華々しい実績だけが強調されがちだけど、その裏にあった孤独、孤立、不安などが赤裸々に綴られていて、胸を激しく揺さぶられる。

特に、P&G世界本社のブランドマネジャー時代の話は、読み進めるのもつらいほど。いきなりやってきた日本人に部下たちの目は冷たく、陰湿なイジメを長期間受け続けた。「お前は無価値、ただのお荷物だ!」と激しく罵倒されたことも。会社へ行くのが嫌になり、ストレスから血尿が続いて、「もう何もかも諦めて、日本に帰ろう」と真剣に考えていたという。

誰からも理解されず、それでもギリギリのところで踏みとどまれたのは、独自のデータ分析から打ち出した戦略への確信があったから。最終的には圧倒的な成果を上げて周囲の評価をひっくり返してしまう。

「君からは好きなことばかりやって何でも実現してきたように見える私も、キャリアの途上で情けないことや惨めなことはたくさんあった。しかし、『きっとなんとかなる』ことを覚えておいてほしい。私だけではない。一人一人が似たり寄ったりの苦しさと向き合って、それでもなんとか生きてきたことを。そしてたいていの人がハッピーになれたことを」

自身の歩みを支えてきた考え方や、強みの見つけ方、自己ブランディング、キャリア構築、勝ち抜くための戦略なども詳しく解説。悪戦苦闘しながら実践で練り上げてきた虎の巻を、誰にでも使える形に落とし込んで紹介している。就活中の学生や社会人初期だけでなく、きっと生き方に悩むすべての人にとって、バイブルとなりうる一冊。


***

「ネガティブケイパビリティー」についての書籍と並行して読み始めたけど、こちらの内容のほうがずっと「ネガティブケイパビリティーとはどういうものか」という具体例に満ちていて、とても勇気づけられました。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,568件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?