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【短編ホラー小説】短夜怪談「聞こえる?」

「ねぇ、これ聞こえる?」
友人の唐突な質問に、首を傾げる。
「何も。何の話?」
「やっぱ聞こえないか。なんかさ、ずっと『タケ』って聞こえるんだよね」
「耳鼻科か脳神経外科とか行けば」
言えば、ゲラゲラと笑う。
「身体の問題だったらさ、同じ声な気がするんだけど。老若男女、いつも違う声なんだわ。自分の名前じゃないし」
分からんけど、と呟く声はいつも通り。ふざけてんのかと思い、適当に流した。
それから数日後、その友人から電話が来た。
“今日さ、『あと三日』って言われた”
理解するのに数秒かかった。
「まだ聞こえてんの」
“何だろな”
電話が切れる。流石にかけ直したが、繋がらなかった。
三日後。
友人は交通事故で呆気なく亡くなった。
あと三日、が百歩譲って何かの予言だったとしても。その前から聞こえていたタケの意味は、まるで分からないままだ。

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