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【短編ホラー小説】短夜怪談「幻自販機」

久しぶりの残業で、帰りが遅くなった。

昼間が暑かったせいで、夜が進んでも蒸し暑い。喉が渇いて、自販機を探した。いざ探すと見つからず苦労したが、一軒家と一軒家の間にある小路。その路の入口を塞ぐように、一台侘しく立っているそれを見つけた。寂れた感じの自販機だな、と思ったが特に気にせず、お茶を買う。ボトルを取り、そのまま何気なく自販機の下を見た。血の気のない青白い両手が、甲を上にして出ている。それは一瞬で引っ込んだ。
「えっ、」
誰かいるのかと、恐る恐る、自販機の後ろを見る。何も無い。買ったお茶を飲む気が急に無くなり、置いて逃げた。

翌日、自販機を見つけた場所に来たが、手どころか、そこに自販機は無かった。
そもそも、その家と家の間に小路自体、初めから無かったのである。


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