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【短編ホラー小説】短夜怪談「犬の散歩」

夜の帰り道。
ぴかぴかに点滅する首輪をした犬の散歩に遭遇した。犬はとても楽しそうだ。何気なく見たら、その身体が透けている。通り過ぎて振り向くと犬の姿は無く、光る首輪は、恐らく首であろう位置に浮いていた。リードは飼い主である近所のじいちゃんがしっかり握っており、普通の散歩のように歩いて行く。それをしばらく見送ってから、前へ向き直って歩き出す。
「迎えに来てくれたのかな」
さっきまで通夜の手伝いをしていたのに。今朝亡くなったじいちゃんが、さっきどんな顔をしていたのかは、もう思い出せない。

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