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自己紹介が苦手だ。

出会いは自己紹介から始まる。自分が子どもだろうと、大人だろうと、自己紹介してください、と言われる機会は出会いの数だけあり、そこで何を印象付けるかが、その後の関係性構築に極めて重要な役割を果たす。

うん、知ってる。

どれだけ年月を重ね、そのような機会に何度となく立ち会ってきたとしても、改めて「自己紹介してください」と言われると、僕は途端に何を話していいかわからなくなってしまう。

自分語りが苦手なのは、過去にフォーカスしていないから。そう言えばカッコいいのかもしれないが、単に自分の経歴やキャリアをプレゼンすることに対する強烈な「照れ」「恥じらい」があるのだと思う。常に相手の顔色を窺ってしまうから、自分自身をフルアクセルでぶっ放すことができないのだ。

でもそれじゃ、あなたのこと誰も理解してくれないよ?

それも知ってる。自分を語らないヤツには誰も腹を割って語り掛けてくれない。世の中そんなに都合よくできてない。誰かと何かを共有したければ、まず自分の腹の中を晒せ。それが世の中のルール。

だから自分を守るために、最低限の自己紹介ができるようにならないといけなかった。中学生が英単語カードをめくるように、何度も自己紹介文を反芻し、言葉と言葉の隙間をセメントで埋めてガチガチに練り上げた。

私は東京の市場調査会社で約15年働いてきました。リサーチャーの世界は分析5年、企画10年と言われます。その基準値を超える年月をかけ、調査設計から分析提案までの一通りの業務に従事してきました。調査の世界で築いてきた基礎素養をベースに、御社のビジネス発展に貢献していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

かくして、感情を挟む余地もないレベルにまで叩き上げた自己紹介の骨組みなるものが出来上がった。しかしそれは、僕自身を1ミリも表わしていないものに思えて仕方なかった。情緒がないし、誰の心も動かさないものに思えたし、事実としてほとんどの人の心を動かしてこなかった。


調査屋さんってただ頭の固い人たちだよね。

自分が調査業界を代表する人材であるという自信は全くないので、僕を見て「調査屋さん」「リサーチャーとかいう人種」を判断しないでいただきたいとは思うが、確かに調査の世界には業界特有の用語・ルールが山ほどあり、マーケティングの一環でありながらマーケターにとっては近寄りがたい独自のワールドを構築していて、何かといえばバイアス、ロジック、統計的検定とか何ともまあ、おカタイ感じではある。

実際の仕事も、例えば調査票を作るときには主語述語の関係をハッキリさせ、「てにをは」によるニュアンスに配慮した絶妙なワーディングが求められる。設問順によるバイアスの排除、選択肢もMECEでなければならないし微妙な言葉を使って誤解を招くような設計はNGだ。

集計時にはロジック矛盾を修正したりとか、「その他」の内容を選択肢に戻すとか、自由回答の内容を手作業で分類したりとか、とにかく泥臭い。
報告書のグラフをひたすら描き続けるグラフ屋さんにならなければならなかったり、定性調査に至ってはグラフで見せるという単純な技が使えないので、発言録を何度も読み返してインサイトのヒントになりそうな発言をピックアップしたり、地味で膨大な作業が待っている。

そんな仕事柄、調査設計や細かい条件の確認、分析見解の展開、地に足の着いた提案など、華麗なるマーケターとはどうしても相容れない「頭の固い」ソリューションを提供することになる。

リサーチャーってこういう人たちなんだ…(引き気味)

リサーチはマーケティングの根幹に関わる重要な役割を持つにも関わらず、誤解やアレルギーを招くような仕事を完遂しなければならないジレンマと闘うのもリサーチャーならではの悩みだったりする。見ている目的は一緒なのに、手法の部分で煙たがられることはできれば避けたいのだが、如何せん何ともしがたい。

固い自己紹介文に加え、頭の固い仕事人という印象。
ツカミが大事な自己発信の場において、あまりに勿体ない。


結論:情緒イメージを重視した自己紹介を作ろう。

まだ全く手を付けられていないが、自分というコンテンツを発信するためには、機能的な情報と情緒的な情報を、いかにバランスよく見せるかが大事になるんだろう。
これが長年「固い」自己紹介を繰り返してきた僕なりの答えだ。

情緒的な情報を与える自己紹介とは、「努力と根性が取柄です、頑張ります!」とか「皆さんの仕事を陰から支えるサポーターになりたいです」とか、直接的な相手への呼びかけという形を取ることも一つだが、僕なら恐らくそういう方法ではなく、

「好きな食べ物は“すあま”です。すあまのように弾力と粘りのある仕事をしていきたいです」
「最近リモート会議中に、うちの猫が自分も参加したいのか、ニャーニャー鳴くのが悩みの種です。会議で猫の鳴き声が聞こえるかもしれませんがご容赦ください」

みたいな、言ってしまえばしょうもないフレーズを選ぶだろう。
情緒に訴えるというのは、恐らくそういうことだ。一見仕事とは関係のないエピソードを混ぜつつ、さりげなく仕事人としての態度にも触れる。
社内とか同じ境遇の人たちへの自己紹介だけでなく、クライアントとか異業種の人に向けてのアピールも、結局はそういう、

僕という人間にまつわるちょっとした隠し味

を表現すること。

現時点で、僕なりの「ベストな自己紹介」はまだ出来上がっていないけれど、もしかしたらSNSとか、noteみたいな媒体がそれを補完する役割を持つのかもしれない。

そんなわけで、初めましてのnoteを書いてみました。
今後ともどうぞよろしゅう。

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