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「昼と夜」 - アウトローの天才を堪能させてくれるナムグン・ミン

★★★★

ストーブリーグ」でナムグン・ミンの声と喋り方がすっかりツボに入ってしまった私としてはどうしても観たかった最新作ドラマ。一見するとアウトロー感のある刑事モノといった雰囲気ですが、話が進むにつれてSF的な要素が増していき、あちらにもこちらにも怪しい人物がいる中を肝を冷やしながら這い進んでいくような展開に。

導入は比較的ノーマルなミステリーです。連続して起こる謎の予告殺人。記者のイ・ジウク宛(ユン・ギョンホ)に暗号が書かれた予告状が届き、そのあとで猟奇的な殺人が発生するという事件が続くソウル。ソウル地方警察庁で検挙率ナンバーワンを誇る特殊チームのチーム長ト・ジョンウ(ナムグン・ミン)は、暗号を読み解いて事件の真相に迫るのですが、ト・ジョンウ自身も言動にたっぷり怪しさを醸し出しています。次第に彼と部下である女性刑事のコン・ヘウォン(キム・ソリョン)、そして突然やってきたFBIの犯罪心理専門家、ジェイミー・レイトン(イ・チョンア)と牽制しあうような構図に。さらになかなか正体の見えない不思議な男ムン・ジェウン(ユン・ソヌ)も登場すると話は混迷を極めるのですが、その根元にはどうやら28年前にとある村で起こった謎の集団自殺事件があるようで…。と、ここまで来ると、このドラマの本質的な世界観が見えてきます。

完全にアウトオブ社会を生きているジョンウは、気づけば敵に囲まれていて、濡れ衣は被るわ罠だらけだわで幾多のピンチを迎えていきますが、不思議と放たれる無敵感が「なんとなく大丈夫だろう」と思わせてくれます。「ストーブリーグ」の時もナムグン・ミンは常に相手の想像の斜め上を行く奥の手を持っているキャラクターでしたが、ジョンウはまたひと味違って、野性と圧倒的な知性が、飴玉をくわえた飄々とした雰囲気の中で共存する稀有なタイプ。ジョンウという人物が形成されてきた経緯が明らかになるとそれも納得なのですが、ここでもナムグン・ミンは非常に魅力的です。

ジェイミーとヘウォンは外見的には、知性溢れる大人の女性と学生のような雰囲気を残す女子といった感じで異なるふたりですが、どちらも気は強く怖いもの知らず、内面を読ませないタイプのジョンウに対してゴリゴリと感情を表に出していく対比が全体の緩急を生み出して見えました。そして「ストーブリーグ」ではナムグン・ミンの最強の弟だったユン・ソヌが、この「昼と夜」では物語が進むにつれて不穏な空気を放つようになり、意外なキーマンであることが明らかに。こうしたキャラクターの関係性の多重構造が、展開の厚みになっています。

視聴者に委ねられるいわゆるオープンエンディングを迎える本作、感想はそれぞれになるかもしれませんが、終わってみると実は結構シンプルな道筋に沿ってきた話なのだなと感じました。個人的にはユン・ソヌが好きなので(「麗<レイ>〜花萌ゆる8人の皇子たち〜」ではあんなに情けない役だったことを思うとこれまた幅広く表現できる役者)、彼にもっと話を拗らせてみて欲しかったとも思うのですが、とにかくト・ジョンウの個性的でエッジの効いた格好良さが際立っていてナムグン・ミンという俳優の圧倒的存在感を堪能できる一本です。


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