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「セレブリティ」 - 誰がアリを殺した?

★★★★★

「おお、面白かった!」となった一本。セレブとか上流階級、女同士の泥沼みたいなワードにあまり興味がないので観始めるまで少し時間がありましたが、観始めたらググッと引き摺り込まれました。あらすじも事前にろくに確認しておらず平凡な女子が華やかな世界をのし上がっていく下剋上モノかと思いきや(その側面もありますが)、わりとがっつりサスペンスで裏切りや予想外の人物の登場のラッシュ。「何が起こったんだろう」という気持ちで一気観できてしまいます。普通っぽさが印象的だったパク・ギュヨンが絶大な影響力を持つザ・インフルエンサーとして華とオーラのある主人公を演じるのも面白い。

物語は死んだはずの超人気インフルエンサー、ソ・アリ(パク・ギュヨン)が突如ライブ配信を始め、他のインフルエンサーたちの裏を暴露すると宣言するところから始まります。130万人のファンは騒然となり、その暴露内容は警察も無視できない事態に。

暴露とともに明かされていくソ・アリ自身のこれまでの歩み。平凡な美容訪問販売員だったアリがどうやって頂点まで上り詰め、残酷なセレブの世界を知り、そして死んだ(殺された)のか…。

もともとSNSもやっていなければ、インフルエンサーにも全く興味がなかったアリ。彼女はもともとは裕福な家庭に育ち成績も優秀、イェール大学に留学までしたものの、父親の会社の倒産で大学を中退し家族のために必死に働いてきて、お嬢様だったにも関わらず素朴な性格をした女性でした。

そんなアリが偶然ブランド店で人気のインフルエンサーとなった高校時代の同級生オ・ミネ(チョン・ヒョソン)に再会します。インフルエンサー同士の仲違いでパーティに一緒に行く相手がちょうどいなかったミネはアリの事情を知らなかったため、金持ちで高学歴の友人としてアリをパーティに連れ出します。アリはアリで、昔は自分のおさがりのブランドバッグを大喜びで使っていたミネがどうやって今の地位を手に入れたのか、興味本位で同行することに。

しかしパーティの現場でミネは仲違いしたビニマムと壮絶な喧嘩になってしまいます。そんな中で啖呵を切って去っていったアリに興味を示したのはコスメ関連の財閥企業「ザ・ヒューコスメ」の代表であるハン・ジュンギョン(カン・ミンヒョク)でした。

そして意図せずミネの友人として知られ始めてしまったアリは、持ち前の才覚もあっていつの間にか何万、何十万ものフォロワーも持つセレブの世界に入り込んでいってしまうことに…。

メインになるのは佳賓会と呼ばれるSNSセレブの集まりなのですが、メンバーによって背景が異なり、地位や名声への執着、性格の悪さも濃淡それぞれなのがまず面白いところ。生まれながらに名家の出というキャラクターも数人いるのですが、そこでもアリのような突然成り上がってきた一般人を毛嫌いするタイプと逆に興味を持つタイプに分かれます。やっぱり化け物のような人物ばかりだと観疲れてしまうので、「良い人」がいると癒しになるのです。また一般人に近い感性の人物がいることで共感しやすくなる場面もありますが、そういう意味ではこの魑魅魍魎たちもみんな人間の持ち合わせてるひとつの側面を極端に濃くした感じかもしれません。そもそもこの物語は常に「フォロワー」という不特定多数の一般人が支えているようなものです。

アリというカンフル剤の投入によって歪み始める佳賓会の人間関係。そもそもほぼ全員が自分本位なので絆と呼べるものはあまりに脆く、妬み合い貶め合い裏切ってはまた媚びて、、となっていきます。そんな中でアリは権力に殴られ打ちひしがれかけもするのですが、これがなかなか土壇場で芯の図太さを発揮するタイプ。手折られるたびにより強くなってカムバックし最強のインフルエンサーに成長していくのです。そういえば生まれはそれなりにお嬢様だったこともあってか変に卑屈さもなく、自分自身の弱さや狡さは潔く認められる面もある。セレブの集団に混ざっても人目を引かずにおれない空気を発する魅力的なキャラクターでした。

彼女に惹かれるジュンギョンは筋金入りの財閥跡取りで笑っちゃうようなボンボンですが、感性はマトモ。女癖は決してよくなさそうですが本気になるときは一直線の様子で、アリにはわりと正面からぶつかっていきます。王子様がいてくれると観ている側としては気が楽になるもの(笑)。そこまでロマンスに振り切る趣向ではないですが、アリとジュンギョンの関係性も充分楽しめます。

とにかくアリを攻撃するキャラが次から次へと出てきて1ステージずつ敵を倒していくような展開は飽きません。そして全体を通じて最大の謎は「誰が、なぜ、アリを殺したのか」「アリは誰を殺したのか」という部分。細かいエピソードをいくつも撚り合わせて大きな結末に向かっていくストーリーは終わって振り返るとよくまとまっているなと思いました。各キャラクターの内面はもっと掘り下げようがあったかもですし、若干中途半端に感じるエピソードもなくはなかったですが、知らず知らず振り回され釘付けになり、エンターテインメントとしてとても面白かったです。Netflixの水準の高さというか、満足度は外さないこの感じ。パク・ギュヨンの今後の作品にも期待です。

余談ですがジュノがカメオ出演しているのを知らず、登場したときは声が出ました。あれだけでもものすごい存在感。そこからもう一本ドラマができそうなくらいでした(笑)。



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