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「偶然出会ったあなた」 - ヒューマンドラマ風、童話仕立てのサスペンスファンタジー

★★★★+

キム・ドンウクと言われるとどうしても観たくなってしまう気持ちがあります。圧倒的イケメンというよりも、雰囲気で醸す大人の男。他にない存在感に惹かれるのです。今回も正直、あらすじだけ見るとどう転ぶか分からなそうだなーと思ったのですが、キム・ドンウク保証みたいな感じでスタートしました。

突然タイムマシンを手に入れたアナウンサーのユン・ヘジュン(キム・ドンウク)と、偶然の事故でヘジュンとともにタイムスリップしてしまった女性ペク・ユニョン(チン・ギジュ)が、タイムマシンの故障で1987年の世界に閉じ込められ、そこで各々の目的を果たそうとする物語。

冒頭でふとしたことからタイムマシンである車に乗ってしまうヘジュン。彼は好奇心で未来の自分を見に行くのですが、そこで目にする衝撃的な光景…。過去にとある村で起きた連続殺人を阻止することで、自分の見た未来を変えようと考えたヘジュンは1987年の世界に向かいます。

一方、出版社の編集者として働くユニョンは担当する作家ミスクのパワハラに耐えながら必死で仕事をしています。そんなユニョンが母のスンエに辛くあたってしまったあと、スンエはまさかの自殺をしてしまうのです。母の遺書を読んだユニョンは、もし過去に行けるなら自分の両親の結婚を食い止め自分を愛する未来など訪れないようにするのに…と深い後悔に苛まれることに。

そんな中、現在と1987年を行き来していたヘジュンのタイムマシンである車とユニョンが偶然接触事故を起こし、ユニョンもタイムスリップに巻き込まれ一緒に1987年の世界へ飛ばされてしまいます。しかも車が故障したようで現在に戻れなくなってしまうふたり。当然にわかには状況を受け入れられないユニョンですが、かつての母の姿を見つけて自分が本当に過去にいることを悟ると、チャンスとばかりに父と母の結婚を阻止しようと乗り出すのです。ヘジュンはヘジュンでこれから起こる殺人を食い止めようとしているのですが、そんなふたりの目的は意外とすぐそこで交わっており、協力しあうことになってゆきます。

ヘジュンがタイムマシンを乗りこなしちゃうくだりや、ヘジュンとユニョンが特に不自由なく1987年で暮らし始めてしまうあたりはまあファンタジーだなぁと思いますが、全体に美しくまとまった画面と平和な村で起こる猟奇的な殺人事件の組み合わせで童話的な魅力を見せています。ユニョンと若き日のスンエが友情を育んでいく絵面は青春ドラマのような趣きも。

長年ヘジュンが抱いてきた生い立ちのトラウマがいつしかスパイスになっていき、物語は結構意外な方向へと転がっていきます。予想外の真実なんかもありますが、トーンが終始落ち着きめだからか度肝を抜かれるというより「なるほどなるほど」といった感じ。最後に明かされるあれこれだったりエンディングは思いのほかすっきりと話をまとめてくれて、観終わったあとの感覚はとても良いものでした。タイムスリップものの永遠の命題とも言える「未来を変えていいのか」みたいな視点で観てみるとまた一味違うかもしれません。いずれにせよ良くも悪くも刺激に振り切らず、殺人事件が軸になりつつそこまで重くもない、わりと気軽に観られる作品。

キム・ドンウクがニュースキャスターと言われると「その男の記憶法」がよぎりますが、本作ではキャスターとしてのシーンはほぼないので少々もったいなさも。でもやっぱりそういう賢くて声がいい役、よく似合います。これからも定期的に主演作品を出し続けていってほしい俳優さんのひとりです。



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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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