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「御手洗家、炎上する」 - 鈴木京香×永野芽郁、唯一無二の動とすべてを鎮める静

★★★★+

周囲の評判が良かったのもありますが、鈴木京香×永野芽郁はハズレはなさそうだなくらいの気持ちで観てみました。鈴木京香で言うと「グランメゾン東京」みたいな役柄も良かったですが、こういう強烈で貪欲アグレッシブなミドルエイジの美女は激ハマりだなと思いました。年齢相応のオーラと品格がありながら、この世代独特の芯が太い強さも感じさせ、しっかりした味付けなのに胃もたれしない肉料理といった雰囲気。あまり他にここを張れる女優さんも思いつかない気がします。対する永野芽郁はいかにも平成生まれらしい洗いざらしのコットンみたいな爽やかさがありながら、意外と内面にいろいろ秘めてそうな雰囲気を無理なく醸し出せる人。圧倒的な薔薇の花束とかわいらしく和ませるオオイヌノフグリみたいな対比ですが、この主演ふたりの競演は非常に見応えがありました。

代々病院を経営する御手洗家。この家では13年前に屋敷が全焼するという事件がありました。原因は嫁である皐月(吉瀬美智子)の火の不始末とされ、それを機に御手洗の跡取りである治(及川光博)は皐月と離婚、ふたりの娘、杏子(永野芽郁)と柚子(恒松祐里)は皐月について家を出ていくことに。

それから13年、杏子はある目的を持って家事代行の仕事に就き、「山内しずか」という偽名を名乗って御手洗の家に戻ってきます。そこには治の後妻に収まった真希子(鈴木京香)と彼女の連れ子である息子、希一(工藤阿須加)と真二(中川大志)がいました。

杏子と真二は事件当時は同じ学校の同級生で、真希子はなんと皐月と親友とも言えるほど親しくしていたママ友でした。杏子は当時から火事の原因は母親ではなく真希子ではないかと疑っており、真実を暴くためにやってきたのです。セレブ読者モデルとして支持を集め始めていた真希子にうまく取り入っていく杏子。陰で杏子とともに動いている妹の柚子。姉妹とそれぞれに接点を持っていく希一と真二…。それぞれに違う思惑を抱えながら13年前の真実に迫っていきます。

正直もろもろの設定は少女漫画的だなと思うところもちらほらで、ミステリーの観点でものすごい作り込まれているストーリーというわけでもありません。ですが、テンポの良さと鈴木京香のとにかく派手なキャラクターで一気に最後まで観れてしまう印象。そしてそこに永野芽郁がいることで、大仰さに胸焼けして面白さを損なうことなく、地に足つけて観続けられると思いました。その他の役者陣がいかにも従来の日本のテレビドラマっぽさを感じさせるのが少し惜しくもありましたが(それこそ漫画っぽい演技が個人的に不得手なのもあり)、キャラクターの心理模様はそれぞれよく描かれていて終盤はだいぶ感情移入しながら観ていました。あと中川大志とても好きだなと思いました。工藤阿須加ははじめ工藤阿須加だと気づかなかったのですが、かっこいいんだなとしみじみ。吉瀬美智子も鈴木京香と風味の違う美しさで華を見せていました。

杏子のやや達観が入った強い(ときどき弱い)ヒロインはすごく現代的な気がします。真希子がいかにも平成ドラマ的悪女(ただし、トータルでは今風にマイルドになってる)なので、その一見すると世界線が違うようにも思えるふたりが絶妙に共存しているのがこの作品の個性なのかなと。いずれにしろ真希子が強すぎたり品がなくてもダメだし、杏子が可愛すぎたり騒がしくてもダメだと思うので、やっぱり鈴木京香×永野芽郁に尽きる一本かなと思います。


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