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「ザ・キング: 永遠の君主」 - 圧倒的な世界観に散りばめられた極上のエピソード群

★★★★★+

ある意味で突き抜けて"ハマった"作品でした。

"並行する2つの世界をつなぐ門をくぐり、別世界から現代の韓国へとやってきた若き皇帝イ・ゴンと、正義感の強い刑事チョン・テウルの2人が繰り広げる異次元のロマンス・ファンタジードラマ。"

舞台は現代。幼少期に父である皇帝を父の弟イ・リム(イ・ジョンジン)に殺され、そこに居合わせてしまったイ・ゴン。ゴンも殺されそうになりますが、黒ずくめの謎の人物が間一髪のところを救ってくれます。その人物が落としていったのが女性刑事のIDカードで、ゴンはそのカードを大事に持ち続けながら自分を助けてくれた人を探し続けています。しかしIDカード自体がどうも実際の警察のものとも違うようで手がかりすらありません。

25年後、すっかり大人になり皇帝として役目を果たしているゴン(イ・ミンホ)。そんな彼がある日、ふとしたことから異世界への門を見つけます。門の向こうにあったのは大韓民国。どうやらゴンが暮らす大韓帝国とは並行の関係にある世界のようで、一見すると同じですが社会のシステムや歴史が少しずつ違っており、皇帝も存在しません。そこでゴンは女性刑事のチョン・テウル(キム・ゴウン)に出会います。テウルは紛れもなく、ゴンが持っているIDカードの写真の女性でした。けれど何も知らないテウルは、ゴンの言動を完全に不審者扱いします。

しかし次第にゴンが並行世界から来たというのを信じざるを得なくなっていくテウル。そしてどうやら死んだはずのイ・リムが並行世界を利用して生き延びており、新たな謀反を考えていることが分かってきます。大韓帝国と大韓民国にはパーソナリティは違っても同じ顔をした人間が存在しており、リムは裏で両者を入れ替え世界を混乱に陥れようとしているのです。

写真だけを頼りに、けれど一途にテウルを想ってきたゴンはテウルに直球のアプローチを繰り広げ、皇帝として真摯に責務を果たすゴンの姿に次第に惹かれていくテウル。そして2つの世界共通の敵となったリムに立ち向かうことになるふたり。

事前の告知から気になって仕方なくて。まずパラレルワールドと言う舞台、その一方の世界の皇帝と、もう一方の世界の刑事のラブロマンスと言う設定。皇帝と"刑事"って新しいな、と。全く想像がつかないカップル。もちろん、「トッケビ 」のキム・ヨンスクさん脚本と言うのも惹かれました。

さらにイ・ミンホの皇帝。ここに来て白馬に乗った皇帝陛下!日本で言えば昭和の少女漫画から続くような超ど直球のビジュアルが、逆に真新しく、ものすごくカッコいいと思いました。

極めつけはキム・ゴウンです。やはり私はこの女優さんが大好きで。事前情報だけで必見と思えるドラマでした。

実際に配信が始まり、最初の2話を過ぎたところでハマる予感しかしませんでした。皇帝、帝国、時空の移動…それらが安くならず、恐らくものすごくお金もかけられ徹底的に作り込まれた世界観。ただの「良いドラマ」、「泣けるドラマ」というのは一度観て満足するものですが、世界観に囚われることでいわゆる「ハマる」状態に陥ります。このドラマはまさにその世界観が最強でした。

ですが、とことんファンタジーな設定にも関わらず、人物たちやその生活はリアル。皇帝イ・ゴンも、日常的に白馬に乗って何かと「皇命だ!」なんて言いがちですが、意外と地に足着いた性格で、キム・ゴウン演じるチョン・テウルやそちらの世界の住人たちが自分をどう見ているか、至って客観的に論理的に考えられるタイプです。そんなわけで突拍子ないばかりになり過ぎず、気がついたらその世界にどっぷり浸かってしまっているのです。

物語は過去の因縁から現代の殺人事件、人物の入れ替わりもあり舞台も2つの世界を行き来して…と実に複雑に絡み合って進みます。ややこしいので観ていて途中で脱落してしまう人もいるようですが、それもまあ分かります。ただ軸はとてもシンプルで、親を謀反で殺された皇帝が運命的に出会う女性とともに逆賊の野望を打ち砕く、といった感じでしょうか。そしてふたりのロマンスには当然「住む世界が違う」という壁が立ちはだかりますが、そこはこのふたりなりに乗り越えていくことになります。

で、大筋は大筋としてあるのですが、このドラマの凄みは個々のエピソードの持つパワーにあると思っています。例えばふたりが出逢うシーンの圧倒的な映像美。悲しい未来を予感させる花束を渡すシーンで静かに涙を流すイ・ゴンと引き摺り込むように号泣するテウル、逆賊イ・リムと対峙した時のイ・ゴンの皇帝としての凄み、敵に囲まれたテウルを間一髪で救い出すイ・ゴンのアクション…単体のエピソードとして焼きついて忘れられない場面が数え切れないほど畳み掛けてくる。それが「ザ・キング」というドラマ。

そしてそんな名シーンを作り上げるのが役者たちの演技。パラレルワールドという設定上、1人2役をこなしているキャストが多いのですが、真逆のキャラクターでもとことん演じきっていて、その2役が共存するシーンでさえ全く違和感がなく、感嘆せずにはいられません。これだけ演技力ある面々を揃っていると、本当にそれだけで観る意味があります。

イ・ミンホも、お金持ちのお坊っちゃまみたいな役ばかりと言われがちなのかもしれませんが、それは他の誰よりもこうした高貴なキャラクターを体現できるからという気がします。何より、「花より男子」や「相続者たち」と同じような育ちがいい孤高の御曹司的存在であっても、今回は"皇帝"。またちょっとレイヤーが違い、本当に皇帝として生まれ育ってきたかのような圧倒的な気品と、育ちの複雑さから清濁併せのむ大きな器を完璧に表現していると思いました。まさにハマり役。

キム・ゴウンの不思議な存在感も健在でした。どの作品を観ても感じますが、話が進むにつれ、彼女ほど魅力的な女性はいないと感じるようになるのです。チョン・テウルのブレない芯の強さは、彼女のオーラと相まって物語がどう進んでも大丈夫、という安心感をもたらしていました。

Netflixで毎週エピソードが追加されていくスタイルだったので、4話のラストで完全に物語の世界に入り込み、10話のラストでもう他のことが手につかないほど先が気になり、11話・12話と呼吸も忘れてしまうほどの展開に突入し(印象的なシーンも多かった)、14話でふたりの26年を超える愛に涙して、15話の終わりで「どんな終わりでもいいがとにかくハッピーエンドにしてくれ」と願う…そんな日々をたっぷり満喫させてもらいました。

終わり方には賛否あるのかと思います(個人的には大好きな終わり方でした)。回収できていない伏線や説明され切れていない設定もあります。ですがトッケビでも感じましたが、この脚本家さんの紡ぐ物語は、細かいところはスパイスみたいなもので、フワッと香って良いのかと思っています。それらを削ぎ落としたところに、刻み付けられるようなエピソードが並ぶ、とてつもなくエネルギーに溢れたドラマです。


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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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