「今、私たちの学校は...」 - 想像より少し過酷な超正統派の青春ゾンビドラマ
★★★★+
正直ティザーを見た時は、既視感たっぷりなドラマだなと思ったのですが、「Sweet Home」や「キングダム」は面白かったですし、そもそもゾンビものの面白さは決して斬新さで生まれるわけではない気がしたので観てみました。感想としては現代ゾンビホラーの様式美に正しく則り、確実に面白い枠組みで仕上げられたドラマ。人間の暗くて汚い部分は突き詰めてデフォルメし、それでも青春の香りを希望として残している。そんな印象でした。
ある日突然ゾンビウィルスが発生するヒョサン高校。突如豹変した生徒たちが周囲を襲い出し学校は一瞬で地獄絵図となります。そしてそれと分からず感染者のひとりを病院に搬送してしまったために市内にも一気に広がる感染。原因不明の状況にヒョサン市は封鎖され、起点となったヒョサン高校には一部まだ感染せずに耐えている生徒たちが脱出できず閉じ込められた状態になっています。
消防士の娘で勉強は苦手だがサバイバルに才能を発揮するオンジュ(パク・ジフ)、そんな彼女に想いを寄せる心優しい幼なじみのチョンサン(ユン・チャニョン)、オンジュが告白した運動神経抜群でイケメンのスヒョク(ロモン/パク・ソロモン)、スヒョクが気にかける無愛想だが頭脳明晰な委員長のナムラ(チョ・イヒョン)。中心となるのはこの4人で、そこに虐められていた女子生徒のウンジ(オ・ヘス)や、ウンジや他の生徒たちに壮絶ないじめを加えてきたグィナム(ユ・インス)などがそれぞれ学校内に潜んでいます。ほとんど全員がゾンビ化してしまっている学校から彼らは抜け出すことができるのか。そもそもなぜこんな事態が起こってしまったのか…。いくつもの糸を撚り合わせて進んでいくドラマ。
基本的には高校生たちが中心となる物語です。劇中にも登場する話が、「大人(知恵)を守るのか、子供(希望)を守るのか」ということ。希望を象徴する子供たちが大人を頼みにせず自分たちの力で脱出を目指していくことになるのがこのドラマの肝かもしれません。そしてそんな彼らを妨害する敵もまた同じ高校生です。子供であろうと、とことんクズ!というキャラクターが数人おり、彼らに対してはどこまでも救いがないですが、ゾンビより人間のほうが怖いというのはもはや定説の必須エピソード。すっかり悪者に振り切っている役者たちにはある意味覚悟を感じます。
一方で希望が徐々に削ぎ落とされていき、主人公たちに次々と訪れる悲劇。このあたりが意外と想像を上回る部分がありました。好き嫌いあるところかもしれませんが、個人的には容赦のない展開がこのドラマを印象に残るものにしています。
大筋としては複雑でいくつも散らばっている伏線の人間関係を前提に、ゾンビに追い詰められる恐怖の中で剥き出しになっていく各自のリアルな本性が骨子。近年のゾンビものの鉄板ではないでしょうか。ですが主役たちが高校生であることでそんな人間ドラマにより青春の色合いが濃く、時に爽やかで時に大人以上に残酷なのです。
基本的にこれまたゾンビものお約束のバイオ・ハザード展開ではあります。生存者と政府や社会のような大きな何かとの間に芽生える対立。ゾンビの完全な撲滅は恐らくなく、シーズン2も見据えていそうな状況へ。チョンサンが好きなキャラクターだったので(オンジュを想う彼の姿が本当に癒し)、いろいろと想い残しのあるエンディングでした。チョンサン役のユン・チャニョンは子役出身の実力派。
オンジュの父親役のチョン・ベス、元凶を作った科学教師のキム・ビョンチョル、正義感ある警官を演じるイ・ギュヒョンなど、脇役に濃いめの演技強いメンツが揃っており大人たちのエピソードも濃淡いろいろ面白いです。メインは新人俳優が多いので、今後注目したい存在を見つけるのも楽しみ方の一つかもしれません。強烈にやさぐれた女子生徒・ミジンを演じているのが「赤い袖先」でヒロインのドクイムの心優しい親友・ヨンヒ役だった役者さん(イ・ウンセム)と知って驚きました。
ゾンビたちの動きはダンサーが振り付けをしているそうですが、ゾンビ表現のクオリティも日々進化しているんだろうなと思いました。というかゾンビがしっかりしていないとこういうドラマって成立しないですね(とにかくゾンビって数が重要だなとも感じました)。
当然ながらゾンビからひたすら逃亡を続けるストーリーなので、スピード感は抜群、全12話ありますが存分に一気見できる作品。型通りの正統派であってもこれほどに観せられるということが、韓国ゾンビドラマの達している境地なのかもしれません。
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