「秘密の森 シーズン2」 - 信頼でなく信用も土台なくして得られない関係性

★★★★★

シーズン1も以前に観ていますが、シーズン2も変わらぬ鬱蒼とした世界観がやはり好くて鑑賞しました。安定のスタジオドラゴン制作です。

かつて共に闘った最高検察庁の刑事法制団に所属することになった検事ファン・シモク（チョ・スンウ）と、警察庁捜査構造革新団にいるハン・ヨジン（ペ・ドゥナ）が、検察と警察の捜査権を巡る対立の中でそれぞれの代表のひとりとして相見えることになり、ふたたび秘密の森に絡めとられていくことに。

そして前作でもバリバリの小物感を発揮しながらも結果的には仲間のような、シモクのライバルのような…不思議な愛嬌を感じさせる野心家の検事ソ・ドンジェ（イ・ジュニョク）も改めて登場し、相変わらずの雰囲気でシモクと行動を共にします。

最初こそ主役ふたりの立場的に警察、検察それぞれの過去の事件における隠蔽問題を暴いていく空気感で進んでいきますが、シーズン1で禍根を残しまくっていたハンジョグループも登場し、シモクとヨジンそれぞれの上司にも怪しい挙動が見られて、例のごとく全員が何か秘密を持っているような、誰も信じられない深い森の中へと突き進んでいくことになります。そんな中で安心感を与えてくれるとすれば、ヨジンのシーズン1時代の同僚である龍山警察署メンバーたち。唯一まともな人間味を見せてくれる存在です。

ドラマはまず大学生の溺死事件で幕を開けます。この事件は人間の他愛ない悪意と組織の薄らとした腐敗を匂わせて、胡乱な雰囲気で一応は真相が分かります。じんわりとその余韻が残る中で、他の事件についても隠された部分があるのは間違いないのですが、明快などんでん返しになるでもなく、ただ鈍痛を抱えているような感覚のまま話は進んでいくのです。この最初の方の印象がこのドラマならではのように思えました。決して物語の来し方行く末を視聴者に分かりやすく提示してくれるミステリーではありません。どんな方角へ導かれようとしているかも見えない、霧の中を歩くようです。

とある失踪事件が発生し、物語は急展開を迎えることに。ここから先は主にその失踪事件の解明が軸となって、それこそ「どうなるか分からない」不安から一気に最後まで観てしまう、そんな流れになっていきます。意外と全ての事件が地味なのですが、登場人物たちの保身や怒りのひとつひとつが説得力を持っていて、根底の力を感じさせられました。

このシリーズの魅力はなんと言ってもシモクとヨジンのキャラクター。幼いころに受けた手術の影響で感情らしい感情を失ってしまったシモクは、今作でも相変わらず融通が効かず、論理で動くマシンのような能面です。ですがシモクは決して冷たいわけではなく、周囲から忖度を求められればその真意を読み取ろうとしますし、納得がいかないことに対しては静かな怒りをおぼえる。ヨジンのちょっとした冗談に微笑みを見せたり、改めて感情を得ていく過程にいるような、独特の人間味を滲ませるのです。これは結構、チョ・スンウだからこそ見せられる唯一無二のキャラなのではと思います。

途中、シモクがドンジェのために声を荒げて怒りを見せるシーンがあるのですが、ここまでのさざなみひとつ立たない佇まいとの対比が実に鮮やかで、なかなか震えました。

一方のヨジンは朗らかで嘘を感じさせず、シモクをよく理解し信頼してくれる大事な存在です。観ている側からすると、彼女だけはシモクを支えてあげて欲しい、そんな気持ちに。ぺ・ドゥナがまた素朴で嫌味がない彼女をよく表現してくれています。

ヨジンはもちろんですが、ドンジェやカン検事長といった付き合いの長い面々が、それぞれにシモクとの間に信用できる距離感を作っていて、それが徐々にシモクに影響を与えていく様子が好きです。ポジティブな面ばかりでなくても、関係性が築ける間柄には何がしか心を許せる場面があり、繋がらない人たちは決して繋がらない。単純な愛憎の二極だけではない人間関係の多様さがつくづく面白いドラマだと思います。

今回の物語の前提となっている警察・検察間の捜査権問題はリアル韓国でも旬な話題なのかと。もともと韓国では日本と違い検察が主な捜査権を握っていて警察がその補佐をする、みたいな構図なので、日本人の感覚だと見慣れないうちは違和感がありました。韓国のドラマだと警察官と同じくらい検事という職業にもスポットライトがあたるイメージがありますが、それはドラマが生まれやすい事件の捜査という場を仕切ってきたのが検事だからでしょうか。実際にはドラマ同様に検察権力が大きすぎることが問題視され、ついに検察の捜査指揮権を廃止する法案が可決されたようなのでドラマの世界の様相も変わってくるのかもしれません。

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