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「ヒップタッチの女王」 - 見た目から想像するのと全く違う強烈な味わいが残る珍味

★★★★+

ハン・ジミンがキュートでお人好しな超能力者、イ・ミンギは左遷されて返り咲こうと野心に燃える刑事、EXOのスホが町に突然現れた謎のイケメンという配置。そしてとりあえずお尻を触るんだな…というタイトル(原題は「힙하게」なのでニュアンスが違いますが)とポップなメインビジュアルはドタバタコメディを連想させますし実際序盤はそんなノリなのですが、町という閉じた舞台でメインキャラクターに刑事がいるとなると一筋縄ではいかないのが昨今の韓国ドラマ。本作は特にテンションの勾配が激しかったですが、破綻することなく解き明かされていくミステリーは十二分に引き込まれるものでした。

早くに父を亡くし母も自殺でこの世を去ってしまったポン・イェブン(ハン・ジミン)。祖父のジョンファン(ヤン・ジェソン)と叔母ヒョンオク(パク・ソンヨン)の元で育った彼女は獣医となり祖父ジョンファンの動物病院を継ぎます。しかしイェブンの両親の結婚に反対だったジョンファンとイェブンの仲はずっとぎこちないままでした。

そんなイェブンたちの暮らす農村ムジンの警察署へ異動になったムン・ジャンヨル(イ・ミンギ)は、左遷されてやってきたのですが実績を上げてソウルの広域捜査隊へ復帰してみせると息巻きます。しかしムジンは犯罪とはとんと縁のない平和な町。どうにかして事件に遭遇したいジャンヨル。

100年ぶりの流星群が降る日、牛の健診のために牛舎に来たイェブンは流星に打たれて気を失います。目をさました彼女には、生き物のお尻を触るとその記憶を読み取れるサイコメトリーの能力が備わっていました。

自分の能力に戸惑い挙動不審なイェブンと出会うジャンヨル。初めはもちろんそんな超能力の話をされても頭がおかしいと取り合わないのですが、やがて信じざるをえない状況になっていき、ジャンヨルは重大事件解決のためにイェブンに力を貸してほしいと言うようになるのです。そのころ、平和だったはずのムジンでは静かに連続殺人事件が始まろうとしていて…。

とにかく不審者でしかないイェブンと、彼女を変態と決めつけるジャンヨルの掛け合いでコント色強めにスタートする物語。脇を固めるキャラクターたちも軒並みクセが強くて結構笑えます。そんな中でひとつひとつ散りばめられていくミステリーの種はよく考えられているというか、とにかく先が気になるつくりになっていました。

そして登場するのが謎のイケメン、キム・ソヌ(スホ)。優秀そうなのにコンビニでアルバイトをしていて、そもそもなぜ突然ムジンにやってきたのかも分かりません。ですがとにかく爽やかでかっこよく、イェブンに対してもほのかにロマンス風を運んでくる存在に。事件が起こり始まるともうとにかく怪しくて怪しくて仕方ないのですが、そのたび胸キュン要素をもたらしてくるのでイェブンに同化して「いや、ソヌが犯人なわけない!」となってしまいます。終始穏やかであるがゆえにミステリアスさが増し増しなソヌをスホがしっかり演じています。EXOのスホのイメージと一味違う役者の顔という印象でした。

イェブンを挟んでソヌと一応三角関係(?)を形成するジャンヨルもまたとってもかっこいいです。ここの3人はいわゆる花より団子の道明寺-つくし-花沢類みたいなバランスというか、直情的で喜怒哀楽豊かなジャンヨルは物静かで考えの読めないソヌと派閥をまっぷたつに分かちそうな気がしました。

とかなんとかロマンスに寄って眺めていると突然殺人が起こるので油断がならないドラマです。しかもそういう場面はしっかりサスペンスとして仕上げられている。最終盤、ようやく犯人が明かされるとそこからはもう普通に戦慄の展開でした(犯人がめちゃめちゃ怖い)。結構「まじか」と思うほど殺されてしまう人数も多かった…。

事件自体の結末はそこまでの話の重さに対してちょっと軽い気もしましたが、エンディングは当初のロマンティックコメディ要素を取り戻すべく明るめに収束していくので後味はよかったです。最終話のジャンヨルはとにかくイケメン!と話題に。全編とおしてイェブンがかわいい(時折イラっとさせられもしますが)ので印象として彼女の醸し出す世界観が強いのかもしれません。どんなにシリアスなシーンでもお尻を触らないと始まらないというのも妙味です。ジャンルミックスでありながらどの方向にも振り切っていてしっかり面白いというのが評価の高さに繋がるのであろう一本。



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