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「今日もあなたに太陽を ~精神科ナースのダイアリー~」 - 誰の心も想像より脆い

★★★★+

パク・ボヨンのとびきりキュートな笑顔と「太陽」というワード、ポップな色合いの画面からはいわゆるハートウォーミングなヒューマンドラマを思い浮かべて観始めましたが、想像したよりもヘヴィ。そんな風に感じる作品でした。そのあたりはやはり精神病棟が舞台なわけで。原題の「정신병동에도 아침이 와요(精神病棟にも朝は来ます)」のほうがニュアンスは伝わる気がします。

チョン・ダウン(パク・ボヨン)は3年目の看護師で、ミョンシン大学病院の内科に勤めていましたが精神科に異動することになります。仕事が遅くいきなりミスをしてしまったダウンは落ち込みますが、生来の優しさと真面目さで患者たちに向き合ううち、やり甲斐を見出していくようになります。肛門科のトン・ゴユン(ヨン・ウジン)はエキセントリックな性格の医師。彼は次第にダウンに癒され興味を持つように。ダウンの親友であるソン・ユチャン(チャン・ドンユン)もまた、ずっとダウンへの想いを秘めてきました。

ダウンはいろいろな病を抱えた患者たちと出会っていきます。双極性障害のオ・リナを担当することになったダウンですが、リナは「自分は病気ではない」と言い張ります。やがてダウンはリナが母親との間に抱える問題に触れていくことに。誰の心の中にも一見すると分からない、深い奥行きが存在しているのです。

どんな人でも心を病んでしまう可能性があるということを強く訴えるような物語でした。そして心を病んでいる/病んだ人が社会的弱者になってしまう世間に対して疑問を投げかける。一方で、精神に疾患があるからといって他者を傷つけていいわけでもない。善悪の判断や道徳心、良心を司る心の病だからこその難しい問題を、わりとありのままに様々な視点で提示するドラマだと思いました。

ひとつひとつのエピソードは安易な解決に感じるものも中にはありますが、「ああ、そうか。これは病気なんだ」と実感させられる場面が多かったです。精神疾患って、どこか気の持ちようで治りそうだったり、性格の問題と紐づけてしまったりする部分があったのですが、身体的な病気と同じで原因があって意志だけではコントロールできない域のものなんだなと。だからここに登場する患者たちは理解できない行動もとるし、正常な状態と行ったり来たりを繰り返しもします。そのあたりがグッとヘヴィに描かれているのです。実際に精神病棟で看護師として働いていた作者によるウェブトゥーンが原作と聞いて、納得するリアリティがありました。

とはいえ主役はパク・ボヨン。彼女の笑顔ひとつで場面がぱっと明るくなるのはさすが。そして彼女を取り巻くロマンスラインもしっかり存在しているのでドラマとしての面白さもしっかり味わえました。もうひとつ側で描かれる看護師ミン·ドゥルレ(イ·イダム)と精神科の医師ファン·ヨファン(チャン·ユル)の恋も少し大人の趣きと陰影が加わって物語を深めます。

気がつくとエピソードごとというよりは大きな流れのような展開になっていき、思わず一気観してしまうドラマだと思います。病棟のメンバーも患者たちも問題は多くても良い人たちなので、視聴者もまた心に傷を負う痛みに共感し、誰かとの関わりの中で得る癒しを知ることができる、そんな一本でした。



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