庶民派 芸術派 衝撃派!17円から始まる中国アイスの世界
8月に突入し毎日続く上海の蒸し暑さ、こうなると恋しくなるのが冷たい冷た〜いアイスクリーム。「冷たい飲み物は体に悪い」という筋金入りの中国常温ドリンカーでもついつい手が伸びてしまう夏場のアイスクリーム。その筋金をぐにゃりと曲げるほどの熱と魅力を帯びているのが夏場のアイスなのだ。
中国のアイスといえばどんな商品を想像するだろうか。バニラやチョコレート、カップアイスにスティックアイスなど基本的には日本のアイスと大差はない。「火鍋や肉、ザリガニのアイスとか有るんじゃないの(笑」なんて冗談まじりに考える方もいると思うが安心してほしい。有ります。
今回は中国アイスを大きく三つに分類してみた。
昔ながらの安くてシンプルな「庶民派アイス」
鮮やかで見事な造形の「芸術派アイス」
どういう商品会議を経たのか気になる「衝撃派アイス」
スーパーやコンビニの市販品、中国国産ブランドの範囲内で、各ジャンルから代表的なアイスをご紹介しようと思う。冗談と思える肉やザリガニも本気で登場する。中国アイスは本気と書いてマジの世界だ。
※掲載価格は購入当時の情報
※1元=約17円換算(2021年8月3日レート 16.89円)
17円から始まる庶民派アイス
庶民派アイスはその多くが安価で、数十年間販売が続いている地元民に愛されている商品が多い。日本のホームランバーや赤城乳業のしぐれのような存在で、これらを食べて育った大人も非常に多く、また、子供でも購入しやすい価格帯なのが特徴だ。
盐水棒冰/塩水アイス
1元(約17円)
シャクシャクの塩水のアイス。塩水とはいっても砂糖やレモンで味付けされた乳酸飲料に近い味で、爽やかでとても美味しい。水分・ミネラル・冷んやりを同時に摂取できる熱中症対策に最適な上海のクラシックアイス。
糯米糍/もちアイス
1元(約17円)
小さな雪見だいふく。餅は肉厚でアイスも美味しく、1元という価格も魅力的。瀋陽の有名ブランド 中街冰点 が手掛ける間違いのない美味しさ。
白雪冰砖/ブロックアイス
4元(約68円)
上海の老舗現地ブランド「光明」の伝統的アイス。超シンプルな爽やか系のミルクアイス。ブロックというより石鹸やバブを食べているような感覚だが、さっぱりした飽きの来ない美味しさで何度も繰り返し購入してしまう。上手に食べないとどうしても手が汚れるが、これはそこが良い。
三色冰淇淋/三色アイス
4元(約68円)
こちらも光明ブランド。1980年代から上海で発売されている、チョコ、イチゴ、バニラの三色がみっちりつまったクラシックアイス。安さとボリューム感とサラッとした口あたりで、上海庶民から「三色杯(三色カップ)の愛称で長年親しまれている。
小雪生雪糕/顔アイス
2元(約34円)
キングオブ中国庶民派アイス。スタンダードなフワフワのチョコレート&ミルクアイスで飽きない美味しさ。意図してか不意にかは分からないが毎回表情が違う顔アイス。早く食べないと顔がとけて泣き顔になってしまう。
玉米香雪糕/とうもろこしアイス
2元(約34円)
味も見た目もバッチリとうもろこし。本体に玉米(とうもろこし)と書いてあるので間違い無い。とうもろこし型のコーンに包まれたバニラアイスなのだが、鼻からはとうもろこしの香りが抜ける不思議なアイス。醤油をかけても美味しいかもしれない。
清凉绿豆冰棍/緑豆ミント
1.5元(約25.5円)
日本ではあまり馴染みのない緑豆アイスにミントをプラス。あずきバーのような存在で硬度もそれなりである。甘さは控えめでミントの清涼感がクセになる、どちらかといえば大人が喜びそうな味かもしれない。
中国でよく目にする社長顔出しパッケージ。ブランディング手法の一つなのだが、あまり人望が無いのか、裏面のデザインで意地悪されているところが愛らしい。
食べるのがもったいない!芸術派アイス
日本のアイスはパッケージのデザイン性がどれも非常に高く、購買意欲を掻き立てるプロフェッショナルの意気込みが感じられる。一方中国ではアイス本体がアートに富んでいる。食べるのは惜しいが食べなきゃとけてしまう、己との戦いだ。
黄桃什锦棒冰/キッスフレッシュ
15元(約255円)
パッケージを完全透明にするほど絶対的な自信がうかがえる映え系アイス。イチゴ、葡萄、キウイ、オレンジの果肉スライスを、黄桃アイスを覆うように貼り付けており、そりゃもう美味しい。果物が安くて美味しい中国ならではのリッチなアイスだ。
桃気/ピ|チの味
9.9元(約168.3円)
煌々とした輝きさえ感じられる見事なフォルムとリアルなお桃。ホワイトチョココーティングのサッパリ系ミルクアイス。中国では縦書きと横書きで文字の向きを変えるという概念がないので、日本語の「ー(長音符)」の扱いがおかしい場合があり、パッケージ上の「ピーチの味」が「ピ|チの味」と表記されているのはそのためだ。
大白兔冰淇淋/ホワイトラビットアイス
15.8元(約268.6円)
大白兔と光明の上海老舗ブランドのコラボレーション商品。上海在住者としてはパッケージの存在感がすごい。生乳をベースに大白兔ミルクキャンディの濃厚な甘さを再現した贅沢アイス。庶民派キャンディをラグジュアリーにいただく背徳感がたまらない。
可可味熊掌冰淇淋/ココア味熊の手アイス
12元(204円)
熊の手型のココアアイス。肉球部分はパリパリチョコ、想像以上に濃くて美味しい。小学生の手のひらサイズだが厚みはおじさんぐらいある、味も食べ応えもバッチリのおすすめ商品。
明治 草莓慕斯风味冰淇淋/meiji ストロベリームースアイス
28元(約476円)
日本ブランドだって負けてはいない。明治が現地で販売する高級アイス。中国マーケットに挑戦状を叩きつけたかのような価格設定だが、価格に見合った美味しさは一度体験していただきたい。かさぶたのように見えるが、このイチゴの果肉の食感が素晴らしい。アイス1個でチャーハン3つ買える世界だ。
冗談なのか本気なのか衝撃派アイス
近年中国では「网红冰淇淋(バズり系アイス)」というジャンルがコンビニの冷凍ケースと中国人民のSNS魂を賑わせている。日本でもガリガリくんのコーンポタージュやナポリタン味が話題となったが、中国アイスと比べてしまうと常識的なアイスに見えてしまうから不思議だ。
东北铁锅炖/東北火鍋 肉松ミルク葱アイス
8.8元(約149.6円)
鍋型ミルクアイスのフタを開けると、鶏の肉松(鶏肉でんぶ)と葱がもっさり乗っかっている異次元商品。ミルクの甘味と肉松のスパイスが大喧嘩。その発想・パッケージ・鍋の造形は100点満点だが味は採点不能。
肉松爆筒/肉でんぶ塩玉子アイス
8元(約136円)
豚肉でんぶをたっぷり乗せた塩たまご味のコーンタイプのアイス。パッケージのような黄身は入っておらず、アイスに直接練り込まれている。甘味の強い肉松としょっぱい黄身が甘いアイスといがみ合って大変な味。他にも言いたいことはいろいろあるが我慢する。
大鱿鱼/いかアイス
8元(約136円)
肉が有るなら魚介が有ってもいいじゃないか。ミルクアイスとイカがニーハオ。赤い粒はイチゴの果肉ではなくイカの身。アイス自体は普通のミルクアイスなのだが、お口の中でイカの身が飛び出して来る。噛むと歯に挟まるため爪楊枝が必要という斬新なアイス。
簋街小龙虾/ザリガニアイス
5元(約85円)
鍋、肉、イカ、そしてザリガニ。もう何でも来いのリミッター解除状態。ザリガニ味のしないミルクアイスなのだが、中央の濁った箇所、ここが急激にスパイシーで、ほっぺと舌が落ちそうになる。隠された爆弾をいつ噛み潰すか、このスリルがたまらない。爆弾部分は塩たまごと調味料で、見事にザリガニの味を再現している。
蒙牛随变江小白雪糕焦糖味/江小白キャラメルアイス
16.8元(約285.6円)
本当に白酒が94mg入っている18禁アイス。ガツンとした白酒の味と香りが一気に押し寄せ、気を引き締めて食べないと軽い衝撃に襲われる。青く強めのアイスはキャラメルチョコとの相性も良く、余韻まで濃厚なアイス。食後数時間は胃から白酒の香りが上がってくる。
いかがだっただろうか、今回紹介した商品はこれでもまだ一部分である。美味しそうなアイスも有れば、気合や根性を必要とするアイスだってある。17円も有れば500円近くするアイスもある。中国アイスの世界は非常に広大で奥が深く、それは止どまることなく毎年新たな商品が生まれては消えてゆく。火鍋やらザリガニで闇の深さも止まることを知らないが、これも中国アイスの魅力のひとつなのだ。
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