センセーショナルを捨てよ、ファクトを見よう
近々始まるシナリオプランニング案件の準備として、医療関連の情報をいろいろと仕入れている。
書籍にもいろいろあたっている中で、あらゆる人が読むべきだなと思ったのがこの本。
タイトルだけを見ると「自分の今後の人生を考えよう」みたいな本だと思ってしまう人もいるかもしれないけど、これはこれからの日本を考えるための本だ。
著者はメディヴァ代表の大石さん。メディヴァは、医療機関、行政、企業、介護施設などのコンサルティングやオペレーションを行う会社。
この本がどんな本かわかってもらうために、同社のプレスリリースに本のイメージが載っていたので、そこから拝借。
こんな感じで、左側にトピックとその解説、右側にトピックに関連する図が載っている。図の多くは、こんな感じでトピックの状況を表すデータが視覚化されている。紹介されているトピックは100個。
この本の優れているところは、私たちの周りで起きていることを、データを使って、その実態を正確に伝えているところ。
例えば、日本で高齢化が進んでいるというのは誰もが知っているけど、本書の2つめのトピック「高齢者の数は、すでにカナダの人口より多い」というタイトルと、それを年齢別構成で表した図を見るだけで、言葉を聞いて漠然とイメージしていただけでは感じないインパクトを受けるだろう。
介護人材が不足しているという話しもよく聞くことだけど、本書の35番目のトピック「今後、介護人材は大きく不足」を見ると、「それは地方の話しでしょ?」と思っていた人も、迫りつつある深刻さを感じてもらえるはずだ。
本書で使われているデータは、その多くが公開されている。例えば、いくつかのトピックで使われている国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口のデータなんかは、誰でも見ることができるし、自分でもシナリオプランニングのプロジェクトの時は必ず参照するデータだ。
データから意味を読み解く練習に
ただし、データを読み解くことに慣れていないと、そういうデータを見ても、ただの数字の羅列にしか見えないかもしれない。
そういうデータを元にして、今の日本に生きる自分たちにとっての意味をわかりやすく表現し、紹介してくれているのが、この『DESIGN MY 100 YEARS 100のチャートで見る人生100年時代、「幸せな老後」を自分でデザインするためのデータブック』だ。
新聞やテレビ、ネットなどで、高齢化や介護、認知症なんていう言葉を聞いても、他人事だとしかとらえられていない人には、ぜひ読んでもらいたい本だ。
ファクトを積み上げ、未来に向き合う
そうすると、そういうメディアでセンセーショナルに取り上げられている時にも、変に不安になったりすることなく、冷静にとらえることができるようになるだろう。
なぜなら、本書を読んで現状を知り、データの読み方の訓練をすれば、そのセンセーショナルさの裏にあるファクトを自分で見に行くことができるようになるからだ。
同時に、これまで素通りしていた情報やデータに今まで以上に敏感になり、大きく「日本の社会課題」と言われていたことを、もっとリアリティを持って、自分事として向き合えるはずだ。
今の私たちが直面している社会課題は、普通の個人からしてみると、そのスケールが大きいために、なかなか自分事として受け止めるのが難しいと感じるかもしれない。
しかも、日々いろんなメディアでそういうキーワードが取り上げられているので、いつしか、悪い意味で「当たり前のこと」になってしまう。
そういう「当たり前のこと」になってしまっている状況を打破するために、センセーショナルに危機感をあおるというのも一案かもしれない。しかし、それは諸刃の剣で、最初は気を引くかもしれないけど、それにもいつしか慣れてしまうのが人間だ。
だからファクトにあたるのだ。言葉だけを聞いていてはわからないリアリティをファクトからは感じることができる。
以前に弊社で実施したシナリオプランニングの公開セミナーでも、ある人が漠然と少子化を話題にしていたので、データを調べてもらったところ「数字を見てゾッとした」と言っていた。
そう、センセーショナルなメディアに頼らなくても、ファクトにあたればリアリティを感じることができる。
ファクトを積み上げ、楽観でも悲観でもなく、これから起き得ることに目を向けながら、来たるべき未来に向き合っていきたい。
■最後まで読んでいただき、ありがとうございました■
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Photo by William Warbyon Unsplash
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