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「インタビューフロー」の問題

実務に忙殺されしばらく更新をしていませんでしたが再開します。その間またいろいろと発見、進化もありましたので、追々ご紹介したいと思います。

「インタビューフロー」とは調査業界の専門用語です。いわば、インタビュー調査の進行表です。どのような流れでインタビューを進行していくのか、ということを事前に、発注者とインタビュアーが共有するために作成され、インタビューはそれに準じて進行されていきます。

実はこのインタビューフローの作り方にインタビューの死活を制する問題があることが認識されていません。

多少インタビュー調査をご存知の方は「当たり前じやないか」とおっしゃる方が多いと思います。しかし、一般的に作られているインタビューフローの大半は実は致命的な問題を抱えていると言われたらどうでしょうか。

これは根深い問題です。なぜならは、皆さんなんの疑問もなく「インタビューフローは重要」だと認識されており、それが故にインタビューフローを慎重に作成されているわけです。ところが皆さんがそれが良かれと認識されているインタビューフローのあり方に問題があるということだからです。

それについて以下、説明してみましょう。

意識的にせよ、無意識的にせよ、インタビューとはアスキングであると認識している場合、大半のインタビューフローは以下のような形で制作されています。

アスキング型のインタビューフロー

NOHL~アスキングフロー実際

これは「話し言葉」になっていますが、実は「〇〇さん」個別にそれぞれの「確認項目」を「設問」したものです。すなわちその本質は、アンケートの質問紙と全く同じものであるわけです。つまり、何を質問するのかが事前に「構成」されているのです。

一方、アクティブリスニングインタビューでは以下のようなフローを制作します。

アクティブリスニング型のインタビューフロー

NOHL~リスニングフロー実際

※尚、これらのインタビューフローは(一社)市場創造研究会の実験において使用されたものをそのままご提供いただいたものの一部です。

このタイプは「個別の設問」ではなく、「話し合いの話題」とその中で自然に発言が行われなかった場合に限って行われる「適宜確認」からできています。しかも、それらは事前に構成しているものではなくゆるく「目安」として決めているに過ぎないのです。故に「どんなことでも構わない」とあえて伝えています。つまり、どんな話が出てくるのかは事前に構成されてはいないということです。ある意味「出たとこ勝負」と言えるかもしれません。

この両者の違いについてですが、表にしてまとめると以下のようになります。

両者の比較


NOHL~フロー特徴比較

書かれ方がどうであろうが、作った人の認識がどうであろうが、アスキングタイプのインタビューフローは「個別質問が構成」されているのですから、それを使ってインタビューを行いますと、自然と個別対象者との質疑応答、一問一答になってしまいます。その為に、他の対象者は自由に発言することができなくなるばかりか、対象者同士が話し合うことによって刺激し合うことも偶然にしか起きなくなります。つまり、「そもそも聞かれていない」、「質問に回答する以外は自由に発言できない」、「お互いに刺激し合わず思わぬことを思い出したり思いついたりしない」といった複数の要因が重なって、設問されたこと以外の情報が得られる可能性は非常に低くなるわけです。

一方、アクティブリスニングタイプは、「聞かれていないことも話せる」、「席順や指名に関係なくいつでも思いついたことを話せる」、「お互いに刺激し合うことによってグループダイナミクスが発生し、思わぬことを思い出したり思いついたりする」という真逆の効果が発生し、調査する側には思いもしなかった領域の情報が多く得られるわけです。

かなり前に書いたのですが、このフローの違いは「ホイール型 」になるのか「完全連結型」になるのかの、根本的な要因でもあります。それについてはこちらを参考にしていただけると幸いです。
https://note.com/styley_inop1961/n/n59a530cdce25



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