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オリエンテーションから調査企画までを「意識マトリクス」で統合する②

S/C領域

この領域は、リサーチャーが専門知識を「ネタ披露」する場です。

S/C領域での「状況把握」の結果、リサーチャー側には、知っている「調査理論」や経験がその状況にどのように役立てられるかを思い浮かべながら、何が「調査課題」なのかとそれにふさわしい手法・手段やそれに伴う実務として必要なことをクライアントに提示していきます。「その状況なら、これが調査課題ではないか」と考えながら、その課題が解決できる方法を「その状況ならこんな方法がある」とクライアントと共有するのです。その際には、その方法のメリット・デメリットや、費用、納期なども同時に提示されるでしょう。

リサーチャーにとっては当たり前のことでも調査スキルに乏しいクライアントにとっては新鮮な驚きであるようなことは多々あります。何を隠そうこの私も駆け出しのころに調査会社の営業の方とお話をして、その時に初めて「インタビュー調査」というものが世の中にあることを知ったのです。「アンケート」ではない市場調査があるとはそれまで全く知りませんでした。その時、その営業(NT社名古屋支社Oさんと今でも覚えている)の方は「アンケート調査」をしたいという私に対して、「ちょっと事情を聴かせてほしい」とおっしゃり、その結果として「アンケート調査ではなくインタビュー調査がいいのではないか」とおっしゃったのです。それはまさに、ここまでに書いてきているZ攻撃のパターンそのものでした。そして、それが契機となって私はインタビュー調査を初めて経験することになりました。それが今、この文章を書くに至る第一歩であったわけです(笑)。

しかし、ここでの知識・情報の披露はC/S領域の把握があってこそ意味があるのであって、そうでなければクライアントにとっては単なる押し売りか、知識自慢でしかありません。

クライアントは、自分のマーケティング状況やそれまで潜在していた調査ニーズに合いそうな情報を与えられながら、それがふさわしいものなのかを状況を振り返りながら考えだすわけです。それが次のS/S領域への入り口となります。

S/S領域

リサーチャー側がS/C領域で提示した調査の知識に対して、クライアント側はC/S領域を思い起こしながら、それがその状況や調査結果の利用法にマッチしているのかを考えます。考えた結果、S/C領域にある疑問に思われることをリサーチャーに質問することがあります。これは正確に言うと、クライアントの意識領域が広がって、それまでS/C領域だった部分がC/C領域化しているということです。質問されたリサーチャーはその質問の意図を確認するために逆にC/S領域での質問を行うことがあります。これも意識領域が広がっているということです。

その結果、それまでS/S領域だった部分が徐々に双方ともに意識化されていくという効果が発生します。その中で、”偽”の調査目的が”真”の調査目的にブラッシュアップされそれに伴って調査課題も洗い出されます。ここまでくると、納期や費用なども含め、手段も具体化されてきます。結果として最初考えていてた予算や納期が変更されることもあります。クライアント心理として無駄なお金は使いたくない一方で、本当にマーケティング課題が解決できるのならいわば払える金ならいくら払っても良いと思うわけです。お互いに、すり合わせが行われるので、調査の成果について確信が得られてくるが故です。C/C領域のところで共有されていた”偽”の情報による調査とは雲泥の品質の違いが発生するわけです。

調査企画の原理原則を守りながら調査の企画を進めていくためには、オリエンテーションはこのようなプロセス、手順で行われる必要があります。再度全体の意識マトリクスを掲載します。

これができているクライアントとリサーチャーはお互いに教え、教えられ合う対等なパートナーと言えますが、C/C領域だけで調査の企画が決められている場合は外注元と下請けの主従関係であるわけです。リサーチャー側にとってのそのカギはC/S領域の状況が把握ができているかどうかです。

つまり、把握できればコンタクトの初日でもパートナーであるのに対して、把握できなければ100年経ってもパートナー関係ではないわけです。



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