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これまでの家づくりのメリット・デメリットと アフターコロナの注文住宅の考え方(8)

アフターコロナの時代に合った新しい家づくり
 
ウッドショックによる建築用木材の値上がりや、高性能住宅が求められることによってローコストな家づくりが難しくなっているなか、「躯体と内装を分ける」というこの新しい注文住宅の建て方は画期的な方法だと自負しています。
しかし勘違いしてほしくないのは、私はなにも自分が儲けるためにこの方法を勧めているわけではないということ。私は不動産エージェントであって、大型パネルを製造・販売しているわけではありません。ただ単純に、この方法がアフターコロナにおけるベストな注文住宅の建て方だと確信しているからにすぎないのです。
そしてこの「躯体と内装を分ける」という方法自体も私が考えたわけではなく、建築業界の人間なら誰しも思いつくアイデアなんです。
しかしハウスメーカーの人は、誰もそれをやろうとしない。なぜか?自分たちの儲けが少なくなるからです。
実際、私も10年ほど前にローコストの注文住宅を手掛けているハウスメーカーの店長さんに「躯体だけで引く渡してくれないか?」とお願いしたことがあります。その店長さんもこちらの意図を汲み取ってくれて、面白い方法なのでぜひやってみようということになったのですが、結局本部からNGが出て実現できなかったということがありました。
ただ単に儲けが薄いというだけではなく、引き渡した建物の保証の問題もあって難しかったのかもしれません。
しかし、今は違います。
メーカーさんが引き受けてくれなくても、工場で作った大型パネルを使って躯体を組み上げ、リフォーム会社に内装工事をお願いすることによって、ローコーストな家づくりが実現できるようになりました。
工場で木造在来金物工法という方法で大型パネルを組み立て、サッシを取り付け、断熱材や防水紙を張ったパネルにして現地に搬入します。あとは組み立てるだけ。
木造在来金物工法という手法自体も何も新しい方法ではなく、むしろ日本の伝統的な工法を簡略化・発展させた工法にすぎません。
これまでは工場で材木をプレカットしたものを現地に搬入して、大工さんが組み立て、金物を使って留め、サッシを付けて、合板を貼り、断熱材を合わせて躯体を組み上げました。大型パネルの場合も全く同じ。その組立を現地でやるか、工場でやるかの違いだけです。
ですから、躯体と内装を分けるというのは突拍子のない話では全くなくて、時代の流れに合わせたごくごく当然の考え方と言ってもいいのです。大型パネルを使って躯体の組み上げを請け負ってくれる施工会社と、リフォーム会社が手を組んで注文住宅を建てるというだけの話なんですから。
 
大型パネルにもデメリットが全く無いわけではありません。工場でパネルを加工して現場に運ぶため、4トンロングクラスのトラックが入り込める道路に面している敷地でないと、パネルを使った躯体づくりができないのです。
ただしその場合も、躯体と内装を分けるという方法自体をあきらめる必要はありません。新築の上棟までを請け負ってくれる工務店に躯体を作ってもらい、内装をリフォーム会社にお願いすれば良いのです。
これをハウスメーカーや設計事務所にお願いするのは難しいですが、地域の工務店であれば引き受けてくれるところも多い。というのも地域の工務店の場合、新築はできるけど施主の細かい要望に応えるのは難しい、というところも少なくないからです。それには施主との細かなコミュニケーションが取れる営業マンが必要ですが、そういった人を雇う余裕はない。それならば、むしろ上棟までと区切って依頼される方が助かる、という工務店も多いのです。
先ほども述べましたが、たとえ大型パネルを使わなくても、このように躯体と内装を分けて新築住宅を建てることは現実的に可能なのです。建築業界の人間もそのことに気づいていました。ただ、お客さんの側が躯体と内装を分けるという建て方があることを知らなかった。つまり、ニーズがなかったのです。
でも躯体と内装を分けるというのがアフターコロナの時代に合った最適な方法であることが知られるなら、この建て方を積極的に選ぶ人も増えてくるでしょう。
 
躯体についてはわかりました。でも、内装をリフォーム会社に頼むのは?
第二章で述べたように、リフォーム会社に新築物件を頼むのは長いスパンで見たときにとても有効な方法です。でもそれだけではなく、躯体と内装を分けるというアフターコロナの家づくりにベストなシナリオでもあるのです。
なぜなら、家の内装部分は家づくりで一番頭を悩ませるところで、リフォーム会社はその力強い相談相手となってくれるからです。
新築の注文住宅を建てるときに悩むのは、ほぼ内装や設備に関すること。躯体のことで悩むポイントがあるとすると、間取りや外装のことくらい。でもその間取りや外装も、これまでさんざん述べてきたように、建てる敷地によって最適なデザインは決まってしまいます。特に都心では、面している道路によって駐車場のスペースは決まるし、近隣の家の建ち方で窓の位置や光の入り方がわかるので、窓の位置も決まってしまいます。都市計画があれば、屋根の形状や延床面積だって決まってしまうはずです。あとは壁の色とかイメージだけの問題ですよね。ですから、躯体部分に関して悩むことは実はそんなに多くないのです。ということは、しっかりとした性能の躯体を作ってくれるのであれば、どこで作っても構わないということでもあります。
でも、内装部分は全く異なります。
内装は床、壁、ドア、タイルや棚などの造作やお風呂、キッチン、洗面、トイレなど自分で決めなければならないことが山ほどあります。その分、自分のこだわりを反映させることができるわけですが、それにしても選べる選択の幅が多すぎる。ショールームに行ってみると、数が多すぎて何にした良いのかわからなくなってしまう程です。
さらにスイッチや配線、防犯カメラ、インターホン、ケーブルテレビやLANケーブルなんて細かいところにまでこだわろうとすると、気が遠くなってしまうことでしょう。
内装というのは自分のこだわりを詰め込むことができる反面、一番悩むところで、一番面倒くさくて、そして時間とともにそのニーズも大きく変化していくもの。
だからこそ、内装のプロを頼ることが、満足のいく家づくりのためには絶対に大切なことなんです。
リフォーム会社は、お客さんが思い描く理想の家がどんなものかを汲み取って、それを実現させることを非常に得意にしています。だって、彼らはそれこそお客さんごとに異なるオーダーを毎回実現させているのですから。お客さんの希望や予算の中から、最適の内装プランを一緒に考えてくれる。それは家づくりにおいてリフォーム会社を頼る一番のメリットと言えるかもしれません。
 
アフターコロナでローコストな家づくりを実現させるには、無駄を省いて本当に必要なところにコストをかけるというのが一番大切なポイント。
家は躯体部分と、内装部分の組み合わせでできています。
特殊な間取りや外観にしようとすると、当然それだけコストはかかってしまいます。
そうではなく、敷地に合わせたなるべくシンプルな形にして、躯体にかけるコストを抑える。そのかわりに内装部分や家の性能にこだわることによって、ローコストでも自分らしい家づくりが可能になるのです。
 
まとめると、こういうことになります。
 
アフターコロナの新しい家づくり「躯体と内装を分ける」とは?
 

  1. 敷地に合ったシンプルで高性能の家をデザインする

  2. 大型パネルを工場で作成する

  3. パネルを現地で組み立てて躯体を作り上げる

  4. 内装はリフォーム会社にお願いする

  5. DIYやその後のサポートもリフォーム会社にお願いする

 
家の構造はなるべくシンプルにして、工場で作った大型パネルで躯体を組みたてる。自分のこだわりを反映させるために、内装部分はリフォーム会社と一緒に作っていく。
これが、アフターコロナの家づくりのベストシナリオなんですね。
 
そしてこの家づくりの方法は、実は資産価値を高める家づくりの方法でもあるのです。
その点を、次の四章で考えていきましょう。

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