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労働から目をそらす中国の若者たちに思う

こんな記事を読みました。

中国で若者の就職難が深刻なことについては連日ニュースなどでも騒がれているので、ご存じの方も多いと思います。僕も何度もマガジンで扱ってきました

では就職できない若者、とりわけ大学を卒業した高学歴の若者はどうしているのかというと、配達などのギグワークでその場をしのぐか、さらなる学歴を積み重ねるために大学院や国外への留学を目指すか、あるいは記事のように「専業子供」、つまりは家事手伝いをするなどしています。

いずれにしても彼らは、いまの条件の悪い労働市場に立ち向かうぐらいなら、いっそモラトリアム期間として思い思いに過ごしたほうがマシだと考えています。

少し前にはBBCの中国語版で、陶器の名産地である江西省の景徳鎮に移住し、社会のストレスから逃れて陶器作りに没頭する若者の姿を伝えていました。これもひとつのモラトリアムであり、労働市場からの逃避といえるでしょう。

こうした若者の動きを、どう評価すべきでしょうか。

個人的には若者に同情する部分もありつつ、それでもやっぱりどっか甘えてるんじゃないかなあというようにも思ってしまうこともあります。

それはどういうことか、中国での社会的背景や個人的な人々との交流のなかで感じたことをもとに、具体的に書いていきたいと思います。

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まず、理解できる部分について。中国の労働市場から若者が逃げたくなるのは、ある程度仕方のない部分もあるよな、と思います。

中国において、普通の雇われの労働者をやるということは、なかなかしんどいことです。

場合によっては日本よりも長い労働時間に耐え、これまた場合によっては日本よりも複雑かつ婉曲な人間関係に心をすり減らしながら、いくらでも代わりのいる14億人の労働市場での競争を勝ち抜いていかなければなりません。

そのくせ、平均的な給料は(あくまで絶対値で見た場合ですが)日本より低いのです。さらにいえば、ひとたび何らかの立場でそこに参入してしまえば、ステップアップが非常に難しい環境でもあります。向き合う気が起きなくても無理はないでしょう。

また、冒頭の記事でも少し触れられていますが、実は今の中国には「仕事がない」わけではありません。正確には、「大卒の若者が積極的にやりたいと思えるような魅力のある仕事がない」のであって、そうではない仕事はむしろ慢性的に人手不足です。だから仕事はあるにはあるのですが、若者は意地でもそういう仕事に就きません。

このことは若者の「よりごのみ」として批判的に捉えられてもいますが、若者だけにその責を負わせるのは少し酷かなという気もしています。

というのも、これも何度かこのマガジンで書いていることですが、中国においては世間的によいとされている仕事「以外」に向けられる目線が、あまりにも冷たいのです。これは本人というより社会の価値観であり、個人の行動がそこに影響を受けるのは仕方がないでしょう。

さらに、これも冒頭の記事にあることとして、若者に高等教育という「投資」をした親が、子のキャリアを諦めきれないということも大いに関係しています。「そんなことをさせるためにお前を大学に行かせたんじゃない」といって、子どもに仕事を「よりごのみ」させている・・・・・部分もあります。これも本人のせいとは言い切れません。

かように中国の若者は、難しい社会の中での選択を迫られているのであり、一概にサボっていたり、逃げ出したりしているわけではないのです。

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と、そこまで理解したうえで、実際に中国の若い人と関わる現場にいる人を聞いたり、自分が接した若者とのやり取りを思い返すと、「そうはいってもお前ら現実見ろよ」と言いたくなるような場面がないわけでもありません。

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