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中国の民業圧迫、現代のマイルド下放説

中国で日本語教師をされているくまてつさんが、所属する会社から日本語関係の事業を年内で中止すると言われた件について書いています。同じ在中邦人として、前途がうまくいくことをお祈り申し上げます(たぶん優秀で生活力もある人なので、すぐにどうにかなるとは信じていますが)。

お話を読む限り、直接的な理由は勤務先の経営の都合のようですが、その背景にあるのはやはり一昨年から続く教育業界への規制でしょう。

以前は「学習塾禁止」というお触れのもとに大手学習塾などが「お取りつぶし」となりましたが、いまは規制が学校の細かいカリキュラムなどに及び、教育業界に民間の入り込む余地がさらに少なくなっているような状態のように見えます。

教育費の高騰はたしかに問題ではありましたが、いまもじわじわと進む規制を見ていると、すでに本来の目的は見失われているというか、規制をかけること自体が目的化しているような気がしてなりません。

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ところで近頃の中国は、教育業界に限らず、特定の業界を名指しして圧迫するようなことばかりやっています。

大きなところでは、IT業界があるでしょう。ゼロ年代から2010年代中盤までの中国の経済的・文化的発展を大きく牽引してきた各種テック企業ですが、ここ数年は政治的な厳しい規制の憂き目に遭っています(現在はひと段落したようですが)。

IT業界の一部として、ゲーム業界も締め付けられました。子どもの健全な教育のためなどという触れ込みで、子どもは週に3時間しかネットゲームが遊べなくなると同時に、一時は新規にゲームを発売するライセンスの新規発行が完全に止まるなどしました)。

広い意味では、いま中国を揺るがしている不動産業界なども、政府による制限によってその苦境が始まったといえます。中国で不動産バブルが崩壊しかけているのは、日本でかつて行われた「総量規制」にも似た、不動産デベロッパーへの融資の規制が原因です。おかげで中国にも本格的な不景気の波が、と騒がれています。

不景気の足音が鮮明になり、若者の失業が大きな問題になる中で、なぜ中国はこうした民業への圧迫を続けるのでしょうか。まさか中国は、景気対策をする気がなく、人々が苦しむだけ苦しめばいいと思っているのでしょうか。そんなはずはなく、そこには何か意図があるはずです。

中国がなぜそうするのかについての仮説をひとつ思いついたので、以下にはそれについて書いてみたいと思います。あくまで仮説だと念頭に置いてお読みください。

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政府が特定の業界への圧迫をやめない理由の一つは、労働市場の調整を意図したものなのではないかと考えています。

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