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「矛盾」にこそ国民性や文化が詰まっているのでは、という話

突然ですが、中国人がもっとも恐れるものはなんでしょうか。

それは、「冷え」です。

中国の人々は冷えを徹底的に嫌っており、体を冷やしそうなことをあらゆる方面から避けようとします。

口に入れる飲み物は基本的に常温だし、水を飲む時も一度沸かした白湯を好みます(中国人が日本に旅行に行くと、飲食店で氷入りの水が出てくることにみんな驚きます)。

どれだけ暑くても、クーラーはギリギリまでつけません。お年寄りだとクーラーそのものを忌み嫌う人もしばしば。そういうお年寄りはよくマンションの廊下で椅子に座って、夕涼みしながらスマホでショートムービーアプリを見ています。

また足先は絶対に冷やしてはいけないものらしく、靴下にえらくこだわります。僕が靴下を履かずに家をうろうろしていると、嫁にさっさと靴下を履きなさいと叱られます。

また、子どもに靴下を履かせずに連れて歩いていると、道ゆく人から「靴下を履かせなさい!」と指摘されることも多いといいます(在中の日本人の経験談としてよく聞きます)。

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かように冷えというものを遠ざけようとする中国人ですが、そうした人々の行動が唯一例外的に変化するのが、「換気」です。

中国の人々はどれだけ寒くても、換気を最優先します。家に悪い空気がこもるくらいなら、真冬であろうと窓を全開にします。冬場には氷点下を超え、全家庭に公共のセントラルヒーティングがあるような地域でさえその傾向があるというから驚きです。我が家では冬場、寒いので窓を閉めたい僕と、どうしても窓を開けたい嫁との静かな戦争が勃発します。

いっぽうで冷えを嫌うという観念は生きているので、窓を開けながら部屋の中でめちゃくちゃ厚着をしたり、靴下を2枚履いたりしています。先ほど靴下を履いていないと嫁に叱られると書きましたが、僕は内心で「その前に窓を閉めさせてくれよ……」と思うことも少なくありません。

みんなが「寒い寒い」といいながら窓を開け、やたらと厚着をしている姿は、中国の外の文化で育った僕らにとっては、一見すると矛盾にしか思えません。

しかし、よく考えてみると、こういう矛盾にこそその文化の本質というか、その国や地域の人がもっとも大事にしていることが詰まっているんじゃないか、とも思うのです。

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