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なぜ海外現地法人で働く日本人が心を病むのか

こんな痛ましいニュースが流れてきました。

大手メーカーの若手社員が、駐在先で自ら命を絶ってしまったという話です。コロナ禍の中での初めての海外赴任と、割り振られる未経験の業務、上司からの叱責などに耐えかねてのことだったようです。ご冥福をお祈りいたします。

僕自身も海外で働くこと(この場合、日系企業の現地法人での勤務)で心を病んでしまった人を知っているし、なんなら自分自身が危ない状態にまでなったこともあるのですが、上記のニュースはそうして病んでしまう人が置かれがちな状況の典型例が詰まっているように見えます。

今日は自分の経験とこの事例を合わせて、なぜ海外で働くなかで心を病んでしまう人がいるのかということについて考えてみたいと思います。

「日本人である」ことで回ってくる理不尽

日系企業の中国現地法人でのあるあるを戯画化した↑のnoteに、こんな一節があります。

日本人社長「はあ、また本社から『管理部門のコストが高い』って言われたよ。今まで生産一筋でやってきて、ここに来るときも、『生産量はこっちが指示するから、生産効率のことだけ考えてくれたら良いから』って言われたのにさ。実際来てみたら管理部門のこととか、会社の決算のこととかいろいろ言われるよ」

上掲記事より

駐在であれ現地採用であれ、日系企業の海外現地法人に身を置く日本人は、理不尽にいろいろな業務を振られがちです。

日本人であるというだけで重要な仕事を任されるといえば聞こえはいいですが、このnoteや冒頭のニュースの例を見てもわかるように、そこにあるのは多くの場合、本人の能力やキャパシティを考慮しない無茶振りです。

前任者や上司が現地スタッフと良好な関係を築けておらず、ロクに指示が出せなかったり、業務の適切な現地化ができていなかったりして、そのしわ寄せが日本人の中で立場の弱い人に行ってしまうのです。そういう現場をいくつも見たし、自分でも経験しました。

冒頭のニュースのように、日立造船という大企業にしてそういうことが起きるのですから、それ以下の中小企業など推してしるべしです。もちろんみんながそうではなく、良い職場もあるにはあるのでしょうが、僕の知る限りではこうしたキャパオーバーに寄り添おうとする会社は皆無です。

優秀な人であったり、気の弱い人、あるいは新参者などが理不尽にさまざまな業務を押しつけられるということは日本国内の職場でも起きうることですが、海外の現地法人では能力や性格ですらなく「日本人である」というだけで業務が回ってきてしまうので、そのギャップや負担はより大きなものとなります。

加えて異国では業務の内外ともに信頼できる人間関係を築くことも容易ではなく、助けてくれる人やよりどころとなる友人などにも恵まれず、一人で問題を抱え込まざるを得ない状況に追い込まれがちです。さらに海外では本社からの目も届きにくく、問題が放置されがちにもなります。

このような八方塞がりの状況の結果として、海外で心を病んでしまう人が出てきてしまうのです。

仕事の範囲をはっきりさせよう

この問題の所在は、予算や人員の都合と、責任範囲の曖昧さにあるのだと思います。

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