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日本人であるという理由だけで、なんでもやらせようとしていませんか

以前、中国にある日系企業(中小メーカーの製造拠点)に勤めていた時のこと。

その会社において僕は、中国人の上司がいる部署で働いていました。その部署に、僕以外の日本人はいませんでした。

この時にとても、本当に、心の底から嫌だったのが、その拠点の長である日本人の総経理からの指示が僕に直接飛んできて、その部署に反映させなければいけない場面が頻発していたことです。たとえば業務改善であったりとか、先々に控える受注などの大きなイベントへの準備などです。

「命令系統的におかしくない? その部署に反映させたいことがあるなら、まずその中国人の上司に言うべきでしょう」と思った人もいるかもしれません。ああ、あなたが総経理ならどんなに良かったでしょう。しかし、これは在中日系企業にはあるあるなのですが、日本人による指示などはとりあえずそこにいる別の日本人に出されることが多いのです。日本人どうしで言いやすいからでしょうかね。

仮に直接の指示がその中国人の上司に出されたとしても、僕はその部署を預かる(預かってないのに)誇り高き日本人として、その部署が指示を実行するまでの「フォロー」を命じられます。要は「こいつらがちゃんとやってるかどうか、お前が見張っとけよ」ということです。スパイ活動でもやらせてるつもりなんでしょうか。

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で、まあこの中国人上司が、言うこと聞かないわけですよ。当たり前ですよね、僕は部下で、向こうは上司なんだから。

そこで「総経理の言ってることなんだから、さっさとやろうよ」などと言っても、まるで効果なんてありません。先日も書きましたが、日本人的なスジ論に基づいた組織論など、中国人相手にはハナクソ程度の役にも立たないのです。

しょうがないからその上司に言うのはやめて、自分で部署の人間に声をかけたり、時には他部署の力を借りながら仕事を進めていると、その中国人上司から「勝手なことするんじゃねえ」と文句を言われます。相手は上司でもあるので「クソしょうもない面子ってやつが潰れるからか? だったらさっさと自分で動けやクソが」とキレ散らかすわけにもいかず、はいわかりました、と一旦手を離します。

しかし、そうしているとコトが何も進展しないまま月日だけが過ぎていってしまうので、「もう我慢ならん、俺がやる」とふたたび自分で動き始めます。しかしそうしていると、今度は日本人の総経理が「お前が自分でやってどうするんだ。ローカルスタッフをマネジメントして、仕事をさせるのがお前のプライオリティじゃないのか。もっと巻き込み力をつけろ」と、さっきPRESIDENTを読んで覚えたばかりみたいなうっすいビジネス用語を織り交ぜた説教をしてきやがったりするのです。仕方がないのでまた手を離し、中国人上司に委ねるターンが始まります。

そしていたずらに時間だけが過ぎていき、結果として仕事や改善活動はまるで進まず、どこかでトラブルが発生し、その責めを日本人である僕が受けることになるのです。なぜ中国人上司じゃないのか? 思い出してください、在中日系企業においては日本人による指示などはとりあえずそこにいる別の日本人に出される、ということを。

かくて日本人総経理は仕事の進まなさにイライラし、中国人上司はなぜか「お前のせいで部署の評価が下がった」と責任をスライドさせてイライラし、僕は両方からのイライラを受けてわりとマジな殺意を抱くという、地獄のような状況が生まれるのです。

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お読みいただいている人の中で、中国(もしくはその他の国)で仕事をしており、日本人を含む部下をマネジメントする立場にある人はいらっしゃいますでしょうか。

もしそういう方がいらっしゃいましたら、「誰に指示を出すかと言う命令系統はちゃんと決まっているのか」「日本人であるという理由だけでなんでもやらせようとしていないか」というあたりを、再度点検してみてください。

それが、このような環境下でうまくやれず心を壊してしまった人間が、自分の能力のなさを棚に上げつつ、切にお願いするところであります。これ以上不幸の総量を増やさないために。

何卒、よろしくお願い申し上げます。

いただいたサポートは貴重な日本円収入として、日本経済に還元する所存です。