見出し画像

やさしさにあふれた世界 「ぬいぐるみ病院」体験記

ちょうど2カ月前の今日、我が家のアイドル、くまのぬいぐるみたちが「ぬいぐるみ病院」に入院した。そして、1カ月前の今日、治療が終わって、病院内で退院パーティをしたという連絡をもらった。

「ぬいぐるみ病院」の体験記を記しておこうと思う。

目次
1.2年待ち! 大人気のぬいぐるみ病院
愛されすぎのくまたち
いよいよ入院! 丁寧なアンケートと優しい宅急便のおにいさん
楽しそうな入院生活ときめ細かいメール内容
「おかえり!!」 涙の再会
生まれ変わったよ! ビフォーアフター

. 2年待ち! 大人気の「ぬいぐるみ病院」

我が家のアイドル、くまのぬいぐるみたちが「ぬいぐるみ病院」から帰ってきて、もうすぐ1カ月になる。すっごくきれいになって帰ってきたのに、もうすでに“愛され色”に染まりつつある。

“愛され色”とは、「ぬいぐるみ病院」がサイトで使っている用語。
本当は、だっこされまくったぬいぐるみが薄汚れてしまった様子を指すのだけど、「汚れた」とか「きたない」という表現ではなくて、「愛され色」という言葉を見たときに、「ここなら信用できる!!」と確信したのだった。

「ぬいぐるみ病院」を知ったのは、自分のぬいぐるみを入院させて、元気に戻ってきたという、ある方の体験談を読んだのがきっかけだった。
その記事を読んですぐに検索して、ぬいぐるみに対する愛、ぬいぐるみを愛する人への愛にあふれたサイトの内容を読んで、「必要になったら絶対にこの病院にしよう!」とそのときに決めた。
我が家の体験談も、だれかの参考になればと思う。

「ぬいぐるみ病院」のサイト
http://nuigurumi-hospital.jp/

2. 愛されすぎのくまたち

今回、入院させようと思ったのは、同じ形で色違いのくまのぬいぐるみ2匹。
白いくまは、20年前、姪が生まれるときに私が出生祝いでプレゼントしたもの。デパートのおもちゃ売り場で見つけてひとめぼれして、即購入した。その子は、姉が里帰り出産で実家に帰ってきたときに渡して、生まれた姪と共に姉の家に帰っていった。

その後、2〜3カ月して、別のお店で姪にあげたものと色違いの茶色いくまを発見した! 「茶色がいるっ!!」と、また即購入した。
茶色いくまは、そこからずっと私と一緒だった。さらに、10年前に娘が生まれてからは、娘が茶色いくまをずっと抱きしめて過ごして、一気に“愛され色”が増していったのだった。2012年のロンドンパラリンピックにも一緒に行ったよ!

白いくまと茶色いくまは、それぞれ別々に過ごしてきたのだけど、娘が小学校に入る直前の春休み以降、2匹とも我が家で過ごすことになった。
久しぶりに子供たちを連れて姉の家に遊びにいったときに、茶色いくまも一緒に連れていったのだけど、姉が「白いの、うちにいるよね」と、しまいこんでいた白いくまを出してきてくれた。
姪たちは、他に気に入ったぬいぐるみがあったみたいで、私があげた白いくまとはあまり遊ばなかったらしく、15年近く経っていたのに、すごくきれいな状態で再会できた。
娘が「ほしい!!」と言い出して、白いくまも連れて帰ることになった。

それから3年ほど経って、いよいよ茶色いくまが、私と子供たち(現在、中1の息子と小4の娘)に愛されすぎてボロボロヨレヨレになってしまった。
指先には穴が開いて、中のビーズが出てきてしまっていた。子供たちと「白血球が出てきちゃう!」と言って、包帯代わりのガーゼを巻いてあげていた。背中にも穴が開いていて、その穴が大きくならないように気を付けて遊んだ。

何度か経験があるのだけど、穴が開いてしまったぬいぐるみを直そうと思っても、もう生地自体が劣化してしまっているから、縫ってもそこからさらに穴が大きくなってしまうことが多い。
茶色いくまも直してあげたいけど、自分で直しても傷が大きくなるだけだと思い、子供たちに「入院させようと思うけど、どう思う?」と相談した。

私が事前に見つけていた「ぬいぐるみ病院」のサイトを見せたら、「ここなら大丈夫そう!」と思ったようで、入院して手術するのは怖いけど、でもこのままだともっと傷が大きくなってしまうからと、子供たちも同意してくれた。

それでも、やっぱり本当に入院させるのは勇気が必要で、それからまたしばらくしてから、ようやく「入院の申し込み」をした。
入院の申し込みをしてから、実際に入院ができるのは1〜2年後ということだった。すごい人気!

我が家のくまたちも、「入院申し込み」をしてから、2年近く経ってようやく「入院のご案内」というメールが届いた。

画像1

3:いよいよ入院! 丁寧なアンケートと優しい宅急便のおにいさん

「入院のご案内」は、実際にいつ入院させるか、具体的な日付を指定して入院の日取りを決めなくてはならない。
さすがにこの段階に来て、「本当に入院させるのか!?」「治ったら、違う感じになってしまうのでは?」とか、いろいろ考えてしまって、なかなか入院の日を決められなかった。
子供たちとも、「本当に入院させる? どうする?」と、何度も相談した。

入院の日程を決めて、申し込みをしたら、同時に「問診票」を記入する。
ぬいぐるみの名前、年齢、出会いはどんなだったか、という基本情報のほかに、どこをどんなふうに直したいかなど、とても細かく要望を聞いてくれる内容になっている。
入院までの流れと問診票併せて、8枚の書類に目を通さなくてはいけなかったので、時間を作ってじっくり読んで、問診票も子供たちの意見を聞きながら記入した。

くまたちを入れる段ボールは、別にスーパーとかで使い古しのものをもらってきてもよかったのだけど、やっぱり新品の段ボールに入れてあげたい! という思いから、新しいものを購入した。
段ボールの中も、快適に過ごせるように、ふわふわのものを入れたり、お手紙を入れたり、準備にも気を遣っちゃった。

入院日を決めて、いよいよ送り出し!
入院日の午前中に日時指定で送らなくてはいけなかったので、二日ほど前には病院近くの営業所に到着できるように、早めに送り出した。
子供たちは、無事に病院に到着するかどうかが、まず不安だった。
集荷に来てくれた宅急便のお兄さんと少しやりとりをしたのだけど、お兄さんが「これが、病院の電話番号なんですね」と言うので、「あ、ぬいぐるみの病院です」と言ったら、「ああ! ぬいぐるみの修理の病院なんですね! お子さんが入院してるのかな? とか思っちゃいました」と言っていた。
それだけのやり取りで、宅急便のお兄さんはこちらの気持ちを察してくれたみたいで、「取り扱い注意とかできますか?」と聞いたら、「大丈夫ですよ!」と言ってくれた。「あのお兄さんなら信頼できそう!」ということで、子供たちも私も、ちょっと安心できた。

画像2

4:楽しそうな入院生活! きめ細かいメール内容

荷物の追跡を頻繁にチェックして、今どの辺りにくまたちがいるのか確認した。病院最寄りの営業所に到着したのを確認して、まずはひと安心。わざわざGoogleのストリートビューで営業所の写真まで確認して、「今、ここにいるみたいだよ!」なんて話していた。

入院日当日の午前中に、無事に病院に到着したという宅配業者からのメールが届いた。
そして、午後、病院からも「無事にご到着くださいました!」という丁寧なメールが届いた。

単純に「到着したよ」というのではなく、「大切にお迎えさせていただき、少しづつ病院に慣れていただけますよう、ゆったりリラックスしていただいております」とか、「同室のお友達とのんびり過ごしていただく予定です」とか、スタッフさんたちからのメールも、とってもかわいらしくて、読むたびに思わず頬が緩んでしまう。

入院日が水曜日、週明けに診察を受けて、見積もりなどの連絡が届いた。
見積もりは、だいたい予想していたものから大きく外れていなかったので、そのままお願いすることにした。

先生の診察中〜。看護師さん見守ってくれてる!

画像3

病院から写真も届いて、子供たちもほっとしたみたいだけど、娘は病院でくまたちが大事にされてる安心感と会えない寂しさでの両方で、写真を見るたびにぽろぽろ涙を流していた。

入院から10日前後で、毛が抜けてしまっているところはどう治療するか、使う生地はこれでいいかなど、治療についての具体的なやり取りをした。
その際にも、「病院に慣れてこられて、お友達もできたみたいですので安心してください」なんていうちょっとした一文を入れてくれたりする。
そのときは、かわいらしくてきれいなベッドに、お友達と一緒にねんねしている様子が送られてきた。
枕元に絵本も広げてあって、その写真を見た娘は「読み聞かせもしてくれるんだね!」とうれしそうだった。

画像4


娘は写真を見るたびに、会いたくなっちゃって涙ぐんでいる。でも、私も寂しいとかそういう感情以上に、大事に扱ってもらってる優しさみたいなのにも、なんだかぐっとくるものがあったなあ。

そこからさらに4日ほど経って、こんどは内臓(綿)を抜いて、お風呂できれいにしてもらった状態の写真が届いた。
白いはずがほぼ「グレー」になっていた白いくまも、真っ白のふわふわになっていたし、ヨレヨレになっていた茶色いくまも、すっきりした雰囲気になっていた。

画像5

2週間ほど経ってから届いたメールにも、また感動してしまった。茶色いくまは、肉球がに穴が空いてしまっていて、それを新しい生地で“移植”してくれることになっていた。先方が「この生地でいいですか?」と白い生地を用意してくれていたのだけど、その生地をもとの茶色いくまの肉球の色味に調整したという連絡だった。
お風呂に入ってみて、真っ白のままだと少し印象が違ってしまうから、少し色を付けてくれたのかな? そんなことまでしてくれるんだ! と、本当に感動した。

入院からちょうど1カ月後、治療も終わり、退院パーティをしたという連絡が入った。支払いを完了すれば、5日後には退院できるという。

すぐにOKして、すぐに支払おうと思っていたけど、送ってきてくれた写真は、くまたちがシャキッ!! と、姿勢よく座っている写真だけだった。
これは、しっかり綿が入りすぎていて、うつ伏せにならないんじゃないかと、不安になってきた。もしカチカチな感じだったら、少し修正してもらおうと連絡をした。
「もう少しクタッとさせてください。うつぶせの写真を送ってください」とお願いしたみたら、たぶん元々ちゃんとうつぶせができる状態だったのだと思うけど、リクエストどおりうつ伏せの写真を送ってきてくれた。
そして、なんと!
入院中に、腕立て伏せまでできるようになってしまったみたい!
こんなに元気になっちゃった!

画像6

5:「おかえり!!」 涙の再会

9日に退院の準備ができますという連絡が来て、そのとき「最速で14日に出発できます」との案内だった。
うつぶせになれるかどうかの確認とかをしてもらっていたので、こちらからの入金と最終確認が13日になってしまった。
「14日の退院は無理だろうなあ。うちに到着するのは、もう少し先かな?」と思っていた。子供たちには、「10月中には帰ってくると思うよ」と、少し遅めに伝えておいた。

すると! なんと、14日に退院しますという連絡が!!
そして、「明日の午前中に到着予定」とあってびっくり!!
なんだか急にそわそわし始めてしまった。

10月15日の朝、子供たちには帰ってくるということは伝えないで、学校に送り出した。そして、ひとりでそわそわ落ち着かずに過ごしていた私。
お昼前にピンポーンとインターフォンがなって、宅急便が来た! 「ぬいぐるみ病院」からの箱は「お箱バス」といって、バスのかわいいイラストが描いてある。ニヤニヤしてしまいそうになるのをぐっとこらえて、いかにも「子供たち宛の荷物ですから〜」とクールな感じで荷物を受け取った。

箱からすぐに出して抱っこしたかったけれど、子供たちに最初に抱っこさせてあげようと、半日我慢してすごした。とりあえず箱を空けて、顔だけは見たけど。息子と娘が帰ってくるまで、ちょっと待っててね、と奥の部屋で待機してもらっていた。

娘が15時すぎごろに帰ってきて、息子はまた例のごとくお腹が痛いと、青い顔をして帰ってきた(好酸球性胃腸炎の記事を読んでね!)。元気に喜んでほしかったのになあ。
息子の腹痛も少し落ち着いたところで、こそこそと、奥の部屋に置いておいたお箱バスを子供部屋に移動させて子供たちを呼びつけた。

「ちょっと! 部屋が散らかりすぎだよ! 片付けてよ!!」と怒り口調で。
息子はすぐに部屋に入ってきた。
「これ見なさいよ!」とお箱バスのあたりを指差すと、「ああっ!!」と声にならない声を出して感激していた。そして、ふたりでニヤリと笑って、今度は娘を呼びつけた。
「○子ちゃん! 早く来なさい!!」
「なにー?」と言って入ってきた娘は、私の顔を見て、「なに笑ってるの?」と。
そして、お箱バスを見つけて
「え? これ? どうせ入ってないんでしょ?」と半信半疑。
開けるようにうながすと、くまたちの顔を見た途端に号泣してしまった。息子はお腹が痛くて調子が出ないから、「すごい嬉しいのにいいリアクションができないよー」と嘆いていた。

ふたりともふわふわもこもこになっていて、ちょっとふっくらしたみたい。
病院でおいしいものを食べさせてもらっていたのかな?
ちょっとマッチョになって帰ってきたので、以前のようなくたくたな感じはなくなったけど、プリプリっとして、とってもキュート。

私たちの大切な家族を、本当に大事に扱ってくださった「ぬいぐるみ病院」。随時報告とともに写真も送ってくれたし、とても安心感があった。
本当にありがとうございました!

画像7


6:生まれ変わったよ! ビフォーアフター

くまたちを入院させていることは、夫にはあえて話していなかった。どうせ「そんなの無駄だ」とか言うに決まってるから。
手術を終えて帰ってきてしまえば、こっちのものだからね!

きれいになったくまたちを見て、さすがの夫も違いに気付いた。
値段を聞いてきたので伝えたら、「そんなに!? それなら新しいの買えばいいじゃん」というので、「新しいぬいぐるみなんていらないのっ!!」と子供たちと反撃した。
「予約してから2年くらい待ったんだよ」と話したら、「そんなに人気なの!?」と驚いて、それだけ世の中にはぬいぐるみを大切にしている人がいるんだと実感したみたいだった。

翌日、娘が学校の友達に大好きなくまたちが「ぬいぐるみ病院」から退院して帰ってきたと伝えたら、「そんなのないでしょ」と信じてもらえなかったらしい。
「ホントだよ! ホントに「ぬいぐるみ病院」あるんだよ!!」って、トトロのめいちゃんみたいに言いたくなっちゃうね。

さてさて、くまたちのBefore & Afterを大公開しちゃいま〜す!!

画像8

画像9


白いくま

画像10

画像11

画像14

画像15


茶色いくま

画像12

画像13

画像16

画像17

移植手術を受けた茶色いくまは、古いほうの”皮膚”も、体の中に残っているそう。そのことについて、息子はすごく気にしていて「前の皮膚も、この中に残ってるんでしょ?」と何度か確認してきた。
完全に違う”皮膚”になってしまうのではなく、思い出の”皮膚”も残されているだけで安心するみたい。
そんなところもきめ細かいなと思った。

ぬいぐるみなんて、命があるわけでもないけれど、それでも人によっては、大切な家族のような存在になりうるんだよね。
そこを汲み取ってくれる「ぬいぐるみ病院」って、本当に素敵だと思う。
この素晴らしい体験が、また次のだれかの感動につながるといいな。


ぬいぐるみ病院入院マガジン
https://note.com/stwchairtennis/m/mc2512a4cd64d

よろしければサポートお願いいたします!