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創作:「ぬいぐるみ登校日」

ぼくのママは小学校3年生。パパは小学校6年生。
学期に1回、ぼくたちもママとパパの学校に行ける日があるんだ。

あ、はじめまして。
ぼくはくまのぬいぐるみのフモフモ。
こっちのしろくまのぬいぐるみはフムフムだよ。
ぼくとフムフムは、パパとママといつもいっぱい遊んでるんだ。

でも、いつも朝になると、パパもママも学校にお仕事に行っちゃうの。
その間は、“おかあさん”と一緒にいるんだよ。
“おかあさん”は、パパとママの“おかあさん”なんだって。
パパとママの “おとうさん”は、ぼくたちとはあんまり遊んでくれないんだー。

今日は、待ちに待ったぬいぐるみ登校日!
いつも玄関でパパとママを「いってらっしゃーい」ってお見送りするけど、今日は一緒に行けるんだ。
学校に行くと、ほかにもいっぱいお友達に会えるんだよ。

「フムフムー! 学校の用意できた?」
「待って待ってー。おかあさんにえんぴつを削ってもらってるの」
「学校の準備は夜のうちにやりなさいって、いつも言ってるでしょ?」
ママもいつもおかあさんに言われてるのに、この日だけはママがおかあさんみたいなことを言ってくるよ。

「フモフモ、今日は算数と国語、あと図工もあるからね!」
「パパ、絵具のセットは?」
「あ! 忘れてた!!」
「この前も忘れそうだったよー」

ぬいぐるみ登校日の朝は、いつもバタバタなんだ。
さあ、いよいよお出掛け!
「「「「いってきまーす」」」」
おかあさんの「いってらっしゃい。気をつけて」にお見送りされて、おうちを出たよ。

パパとママと手をつないで、学校まで歩いていくんだ。
「マンションから歩道に出るときも、自転車が来てないか、ちゃんと見てね!」
「横断歩道の信号が青でも、車がちゃんと止まってくれているか、運転手さんの顔を見るんだよ!」
ママとパパが交代で、いろんな注意を教えてくれるの。
いつもおかあさんに言われてることばっかりだね。うふふ。

ぼくたちがいちばん苦手なのが、歩道橋。
何段も階段があるし、ひとつの段が高いし、上に上がると高くて怖いし、いつもすごく時間がかかっちゃう。
抱っこしてもらいたいけど、でも、学校に行くんだから、自分で克服しなくちゃね!!
この日は、学校に向かうぬいぐるみたちで、歩道橋は大混雑するんだ。
たくさんのぬいぐるみのパパやママたちが「がんばって!」って声をかけて応援しているよ。

歩道橋を越えたら学校!!
 今日はどんな一日になるかな?

学校の門をくぐると、先生にごあいさつをします。
大きな声で「おはようございまーす!!」って。
ぼくもフムフムも、パパとママが恥ずかしくないように、いつもしっかりとごあいさつをするようにしてるんだ。
今日もごあいさつしたら、先生に「フモフモもフムフムも元気がいいね!!」とほめられてうれしかったな。

パパとママの教室は、校舎が違うから、建物に入るときにバイバイするんだ。
今日は、ぼくがパパの教室、フムフムがママの教室に行くことになったの。ママとフムフムが校舎に入るとき「ばいばーい」ってしたよ。

校舎に入るとき、パパたちは靴を上履きに履き替えるよ。
ぼくたちは靴を履くと危なくて歩けないから、校舎に入る前に足をよーく拭いてもらうんだ。自分たちだとうまくできないから、パパやママに拭いてもらうの。
きれいに拭いてもらうのって、お世話してもらってる感じがして、くすぐったくてうれしいんだ。

教室は3階だから、またたくさん階段を上がらなくちゃいけない。
最後まで自分で頑張って登ろうと思ったけど、途中で疲れちゃってパパに抱っこしてもらっちゃった。フムフムには内緒だよ!
教室に着いて、荷物を置いて、さあ授業!
今日は図工の時間が楽しみなんだー!!

あ、あとでママとフムフムのところに行ってみよーっと。

※       ※       ※

あれ? パパだ。どうしたのかな?
「ママー、フモフモ見なかった?」
「えー? 知らないよ。どうしたの?」
「もうすぐ休み時間が終わるのに、いないんだよね」
「えっ!? 行方不明になっちゃったの?」
「もうちょっと探してみる!」

パパと一緒にいるはずのフモフモが、どこかに行っちゃったみたい!
大変だー!!
ママも心配そうだけど、もうすぐ授業も始まるし、探しにいこうか迷ってるみたい。
「ママ、先生に相談したら?」
「そうだね。迷子になってたら、フモフモ、かわいそうだもんね」
ママは担任の先生に「フモフモが行方不明になっちゃったみたいなので、探しにいってもいいですか?」と相談した。
先生は「それは大変だ! みんなで探そう」と言ってくれた。

クラスのみんなも探してくれることになった。
「フモフモー!」
「フモフモー!」
と、みんなで探していると、ママの隣のクラスのりっちゃんと犬のぬいぐるみのコロちゃんが、「フモフモなら図書室にいたよ」と声をかけてくれた。
「ありがとう!」

パパとママとボクで図書室に行ったよ。
パパとママの学校の図書館は、上履きを脱いで上がるんだ。図書室の中に入ってみると、フモフモは床に寝転がって絵本を読んでいたよ。

「フモフモ!」と、パパが駆け寄っていったら、フモフモは「あ、パパ! どうしたの?」なんて、のんきに聞いてきたんだ。
「もうすぐ授業なのに、フモフモが見当たらないから探してたんだよ」
「ごめんなさーい。渡り廊下でちょうちょが飛んでるのを見つけて、追いかけてたら図書室に着いちゃったの。でね、この絵本を読んでたんだよ!」

フモフモは、ねずみくんのチョッキの絵本を読んでたよ。この絵本、おうちにもあるけど、みんな大好きだよね。
「フモフモ、楽しみにしてた図工の授業が始まっちゃうよ!」
「いけない! いそがなくちゃ!!」
パパは、ママの担任の先生やクラスのお友達にお礼をいいながら、フモフモを抱っこして急いで図工室に行ったよ。
ボクはママとクラスのお友達と大急ぎで教室に戻ったよ。

今日の算数はわり算。ボクにはまだ難しかったけど、ママがゆっくりおしえてくれたんだ。
「6わる2は、6をふたつにわけるんだよ。そうすると、いくつずつになるかな?」
「うーんと、3個と3個?」
「そうだね。だから、答えは?」
「『3』かな?」
「そう! 正解!!」
先生も「フムフム、よく分かったね!」と言ってくれたよ。えへへ。

※       ※       ※

パパに連れていってもらって、図工の授業には間に合ったよ。
今日の単元は「手形で絵を描く」だったんだよ。手にいっぱい絵具を付けて、真っ白な画用紙にいっぱい手形をつけて絵を描いたんだ。
授業が終わってから一生懸命手を洗ったんだけど、毛についた絵具がなかなか落ちなかったの。でも、楽しかったー!

帰りの会で、ぼくはウトウト寝そうになっちゃった。
ぬいぐるみたちが疲れちゃうから、ぬいぐるみ登校日の日は4時間なの。それでももうクタクタ。
ほかのぬいぐるみのお友達たちも眠そうで、もうぐっすり寝ちゃってる子もいたよ。
校庭でママとフムフムと合流しておうちまで帰ったんだけど、ぼくもフムフムも、パパとママにずっと抱っこしてもらっちゃった。

「「「「ただいまー!」」」」
おうちに着いたら、お母さんが「おかえり!」とお迎えしてくれたよ。と思ったら、
「フモフモ! おててどうしたの!?」って、すごい大きい声を出すからびっくりしちゃた。
「図工で手に絵具を付けて、絵を描いたの!」
「赤い絵具を使ったのね。びっくりした!」
お母さんは、ぼくがケガをしたと思ったみたい。ふふふ。

夜はお風呂でしっかり洗って、手についた赤い絵具もきれいにとれたよ。
今日も学校、楽しかったなー。
パパとママとフムフムとみんなでお布団に入って、学校の話をしながら寝ようと思ったんだけど、
もう……
まぶたが……
おやすみなさい……

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左の茶色がフモフモ、右のしろくまがフムフムです!
迷子になったのは茶色のフモフモです。

いつかこの子たちのお話を作りたいと思っていたのだけど、 #こんな学校あったらいいな のお題を見て唐突に思いついて書きました。
子供たちに読んでもらったら、とても楽しんでくれたので、書いてみて本当によかったなと思いました。書こうと思わせてくれた「#こんな学校あったらいいな」の企画に大感謝です!

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