がん化の超初期段階で起こる現象
こんばんは。
今回はちょっと趣向を変えて、個人的に面白いと思った「日本の研究」について、理解できたところまでまとめてみました。
今日は「がん化の超初期段階で起こる現象」というお話です。
今回は『日本の研究.com』さんより↓の論文についてです。
がん細胞が排出される?
がん細胞は、普通の細胞から発生した正常でない細胞=変異細胞で、がんはこの変異細胞の塊です。
正常細胞は、体や周囲の状態に応じて、増えたり、増えることをやめたりしますが、がん細胞は、体や周囲の状況を無視して殖え続けます。
増え続けるので、どんどん数を増し、周囲の大切な組織を圧迫したり、壊したり、機能障害を引き起こします。
しかし、この変異細胞は正常な細胞に囲まれると、はじき出されるように排出されることが発見されました。
一方で、そのメカニズムが分からないでいたのですが、今回の研究で明らかになりました。
ポイントはカルシウムシグナル伝達
基本的に細胞間では種々の化学物質がやり取りされることで、細胞同士のコミュニケーションを行い、それぞれに応じた反応を示します。
筋肉の収縮でもそのやりとりが行われていて、カルシウムイオンがその役割を担います。
このように細胞間でシグナル(信号)のやりとりをすることを「シグナル伝達」と言い、カルシウムベースのシグナル伝達を「カルシウムシグナル伝達」と言います。
ちなみに、この「筋収縮のカルシウム説」を唱えたのは、東京大学名誉教授の江橋 節郎先生というお方です。
参考までにこちらも↓
カルシウムウェーブによるがはん細胞の排出
最初に述べた変異細胞の排出について、「カルシウム説」をもとに実験を行い、そのメカニズムを解析しようとしたのが、今回の論文の内容です。
まず必要ながん細胞を持った培養細胞やマウスモデルを使って、変異細胞が排出される際のカルシウムイオン濃度を測定することで、検証を行っています。
その結果、変異細胞が排除される際に、変異細胞から周囲の正常な細胞に向かってカルシウムイオンが同心円状に波のように伝播することが確認されました。
これをカルシウムウェーブと名付けられました。
そして、カルシウムウェーブを受けた正常な細胞には様々な変化が生じ、正常細胞が変異細胞に向かって押し寄せるように動くことによって、変異細胞を押し出すようにしていることが分かりました(下図の最下段のイメージ)。
※実際の論文よりイメージ図を持ってきています。
まとめると、一定の条件を満たすとがんの元となる変異細胞が、カルシウムイオンの働きをきっかけに、周囲の正常な細胞が押し出して排出するということになります。
がん予防薬の期待
この現象はあくまで「がん化の超初期の状態」における現象ですので、ある程度のステージが進んでしまったら、この現象が起こる可能性は非常に低いと思われます。
しかし、「超初期状態」であれば自然治癒(と言っていいのかな?)が起こり、そのメカニズムが今回の研究で分かったので、がんの予防薬につながる研究として期待されています。
まとめ
・がん化の超初期状態では、変異細胞が排出される現象が起きる。
・カルシウムウェーブというカルシウムイオンの働きをきっかけに、正常細胞が変異細胞を押し出す。
・超初期状態におけるがんの自然治癒に関するメカニズムが分かった。
実験方法を見ると種々の試験薬に色を付けて区別しやすくするなどの工夫がされていて、その画像も見てみたかったなー、と思いました。
生物系の研究でよく見られる、細胞に色つけてマッピングした画像はきれいなので、機会があればご覧ください。
それでは本日は以上となります。
最後までお読みくださりありがとうございましたー。
【おまけ】
今回、初めての試みで論文の要約をしてみましたが、めちゃくちゃ不安…。
間違ってたらどうしよ、っていう気持ちで書いてました(-_-;)。
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