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UAE-エジプト留学体験者Zoom座談会-後編-(『二国での諸経験における夜話の優美と真珠の収穫』) -لطف السمر و قطف الدرر من الخبرات في الدولتين -

前編・中編に引き続き、筆者とUAE大学留学組三人衆による留学座談会です!後編では、現地での授業・留学前後の変化と今後についてです。

>授業について

ヌール では授業について。個人レッスンでアラビア語。1h約800yen. 毎日3時間を5日間。前日までに連絡すれば休めたので旅行など行きやすかったです。交換留学などの場合は休みがとりづらく旅行に行きづらかったという話をエジプトでは聞きました。基本的にアラビア語でアラビア語の授業、ときどき英語で解説してくれることもありました。初めてアラビア語を学ぶ人もかなりいました。

スルターン クラス分けは特になく、その年度にアプライした全員一緒に受けてましたね。僕の年度は、先生1人に対して学生4人の講義形式で1コマは90分、間にアザーンのタイミングで1時間休憩を挟んでもう2時間くらいやるという感じでした。先生の気分で休みになったりフレキシブルな感じでちょっとUAEぽい感じも。笑 授業は週に4回、勉強と休日のバランスは丁度よく旅行も行けました。UAEは地理的にも近隣の中東諸国とは非常に近かったので、僕はクウェートやオマーンに良く足を運びました。コロナの影響で現在は分かりかねますが、サウジアラビアもビザが解禁されたので、より旅行の選択肢は増えたと思います。ちなみにクラスのレベルは中級と上級の間ぐらいでした。何ならアラブで生まれ育った国籍がドイツの子もいて、ナゼ語学留学に来ているのか分からないほど話せる子がちらほら(笑)
初心者には正直厳しい環境かと思いますが、学びの姿勢は大いに参考になると思います。

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カスラーン 交換留学なので授業は英語でした。アラブに関することでなく自分の学部の学びに即したものでした。私は経済学科なので経済学を学びました。
1つの授業が75分で各授業週に2回ある、各学期5コマくらいとるのが普通なようです。中東っぽい、中東ならではの授業をできるだけとるようにしていました。ただその一方で、一般のマクロ経済学や計量経済学などをコマ数埋め合わせのために取らざるを得なかったです。
特に面白かったのは、イスラミックファイナンスアンドバンキング(イスラーム金融)という授業です。
イスラーム金融は早稲田では聞かないし他の大学でもあんまり授業は多くない分野だと思います。宗教の禁忌で利子をとれないから代わりに、様々な方法で利益を上げねばならず、それが興味深かったです。
また、石油などの環境資源経済学という授業。
こちらは、日本とは逆で石油を売る側の視点なのでおもしろかったです。
エジプト人、インド人など様々な国籍の先生がいて、いろんな訛りの英語があったのもおもしろかったですね。クラスの人数は10~30人くらい。ラマダン期間中は一コマ70分になり授業のタイムスケジュールも変わります。留学担当者からは初級の授業を推されたが、上級生向けの授業のほうがおもしろく感じました。

メイサ カスラーンくんと同じ英語枠の交換留学で、専攻は国際政治学でした。UAEの目線で世界を見る練習になったかなと思います。一番おもしろかった授業はスペシャルトピックスという授業で、少人数のゼミのようなもの。5回くらいずつトピックが変わっていきながら(テロリズムから都市工学まで)レポートや発表とかアウトプットの機会も多かった。他の先生と比べて厳しかったけれど、上級生向けの授業だったので刺激が多く楽しかったですね。授業は全部留学生は私だけだったので、皆すごい優しくて、話したことないクラスメイトがテストや宿題の範囲を突然送ってきてくれたり、席をとっておいてくれたりしました。VIP待遇笑。

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授業の様子

ヌール  UAEの文化などを学ぶことあったりしました?

カスラーン 生徒はほとんどがローカルなのでUAEの文化に関して授業で学ぶことはあまりなかったですね、日常生活の中で現地の子達と関わったり、ナショナルデー(独立記念日)のイベントなどから学んでいく感じ。現地の文化を体験できる施設などはアルアインやアブダビ、ドバイにいくつもあり、そういった場で学ぶことができました。

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ナショナルデーの日の様子。独立にまつわる各種イベントも行われる。

ヌール なるほど。私の語学学校ではアラビア書道を体験するイベントがありました。また、アズハルモスクの近くの書道教室に個人的に通っていた友人もいました。あと、全然関係ないですが、国際交流基金のカイロ事務所で茶道を習っていました(笑)。みなさん授業以外の課外活動などはどういったことをされていましたか?

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(写真上)普段の稽古の風景・ちなみに裏千家です。(クラスの人撮影)
(写真下)日本大使公邸で行われた初釜の様子。茶道の先生を務められている方が、長年の文化活動の功績が認められ、外務省より表彰を受けました。

スルターン UAEのアルアインにはkharshaという日・UAE文化交流団体があって、僕たち3人はイベントをサポートするチームのメンバーでした。レストランとコラボして日本語のミートアップをしたり、日本文化に興味のある方々を呼んでイベントを開いたり。

カスラーン kharshaの他にはUAE大学のスピーキングセンターというところでUAE大学の学生に日本語を教える活動(ちょっとだけお金ももらえた)や、大学での日本の文化に関するイベントに参加したり、ひとりでドバイに行ったり、現地人の人とあそんだり、UAE在住の日本人の方とお会いしたこともありました。他の国へ旅行にも行きたかったのですが、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行により春休みに計画していた旅行には行けなくなってしまいました。

メイサ 私がいた頃kharshaの和太鼓チームの活動が活発で私もメンバーだったので、チームの仲間と毎日のように会って練習していて、週末は演奏にいくという感じでした。レストランや会社、イベントなどでの演奏の機会を与えて頂いて、皆と1つのことに取り組めたのは本当に一番の思い出です。授業とkharshaの活動の合間を縫って旅行に行ったり、メンバーだった大学音楽クラブ主催のピアノのコンクールに出たりもしました。本当に楽しかったなあ…。

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ヌール 私の場合、週末によく日帰り旅行に行きました。また、西部砂漠のオアシスやルクソール・アスワンの古代遺跡巡りの数日間の旅にも行きました。またエジプト国外にも一度、モロッコに2週間行くことができました。
それ以外、現地での交流でいうと、カイロ大学の日本語学科の授業に出たり、バンハー(カイロから北に1時間くらいの町)大学の日本語学科の人たちのパーティーに参加しました。このほかにも個人的に仲良くなった子達と遊んだりもしました。

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パーティーの様子。ナイル川の船上でとにかく踊りました!


ヌール 実際に行ってみて興味が変わったことや、意外だったことはありましたか?私は、もともとフスハー(正則アラビア語)のみを勉強するつもりですが、現地の友達ができてくる中でアーンミーヤ(方言)も勉強したいと思うようになり、注力するようになりました。

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自分の場合はベドウィン出身の友人がたくさんできたので砂漠で遊ぶのが主流でした。四駆の車やバギーで砂漠に駆り出すあの爽快感とスリルは堪らなく最高ですよ。Liwaという美しい砂漠のある町まで3時間ぐらいかけて行って遊んだこともありました。都会に住んでても、ベドウィンの血はしっかりと残ってるんだなあと感激しましたね。

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カスラーン UAEへの印象の変化。中東っぽさはあまり感じられないのではないかと思っていたが全然そんなことはなかった
アルアインだからということが大きかったのかもしれないけれど、思ったよりも中東の文化を感じられてよかったなという印象。治安が良いのとご飯が美味しかったのがよかったポイント。英語は総じて通じる(クリーニング屋以外 笑)。
 
メイサ 外国人労働者についての興味が増した。1つの枠に縛られなくなったというか、”普通”なんてどこにもないんだなと思うようになり、異なるものを受け入れられるようになりました。あとは、希少すぎたことからお酒と豚の美味しさに気づきました。笑

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UAEの豚肉売り場。このようにゾーンが分けられています。

ヌール 豚の美味しさはとてもわかります…たまにご馳走になった豚料理の尊さよ…

カスラーン 日本食の美味しさも!!!!

メイサ カスラーンくん日本食レストランでおにぎりと味噌汁にめちゃめちゃ感動してたもんね笑

スルターン 僕は今まさにラクダ肉が恋しいぞ?(笑)


〜留学後編〜
中東に留学した4人による、留学を経た変化や将来への展望

ヌール 留学後に、性格の変化を感じましたか?留学中、アラビア語しかわからない人たちと接する機会が多かったこと、強く主張しなければいけない文化だったことから、積極的に行動できるようになった気がします。例えば、エジプトを出国する際に、荷物の超過料金を取られそうになりましたが、主張と交渉、行動をした結果、なんとか取られずに済みました。あれはエジプト生活のハイライトだった気がします(笑)ストレスがかかることは多かったですが、それが成長の原動力になったと思います。

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メイサ 特に情報もないままUAEに1人飛び込んだことなどで行動力がアップしたというのはあるかもしれないですね。あとは…良く言えば、寛容になった、悪く言えば適当になったというか笑 UAEって週末のことは金曜日にならないと何の予定もわからないし、本当に全てインシャアッラー(神が望めば)の世界。日本だったら何週間も前に決まることが直前までわからない。まあ、なるようにするしかないのでセカセカせず、あ〜そう!オッケ〜!やれたらやるわ!っていうマインドになりました。思い詰めず、だいぶアラブナイズされてのんびりした性格になりました。日本社会で生きていくにあたって良いのかわからないけれど笑、楽になりましたね。
”私をリスペクトして!認めて!大切にして!”という主張がすごいのがUAEの女の子達なので、その中で生活したことで自己肯定感を多少身につけました笑 留学は自分ととにかく向き合う時間が長く、自分について理解し受け入れる過程を踏んでいたので、就職活動の際にも役立ちました。今でも日本の価値観だけでなくUAEの考え方が頭の片隅にあるので、なるようになる精神が残っていますね。何より帰る場所があるのは大きいし、心の支えとも言えますね。

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カスラーン 自分に自信がなくネガティブ思考になりがちだったのですが、UAEの雰囲気やUAE人のおおらかでポジティブなメンタリティに感化されて前向きに生きていけるようになりました。また、自分から主張したり行動していかないと何も起こらないので、行動力や自己主張力が上がったと思われます。留学前に大学からやらされた留学適性検査(自己分析みたいなやつ)では、”異質性への許容”という項目が低かったのですが日本とは大きく異なる文化や価値観、生活様式の国での留学を通して許容度は大きく広がったと感じます。また、”社会生活への適応力”の各項目総じて低く、社会生活不適合だったようですが、留学生活における様々な経験を通して社会に適合できる人間になった気がします(笑)

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スルターン 元々UAEという国のエネルギッシュさと歴史の入り交ざるSF世界のような空間が好きでこの国に留学したんですが、知れば知るほどこの国の魅力ー情溢れる人達や家族愛たっぷりな現地人たちーに気づいて、「もっと知りたい!」という好奇心から、行動力が相当身についたと思いますし、あらゆることに興味を持てるようになったのが一番の変化かな。特に漫画やアニメは日本人なのに知らない点が大きかったので、UAEで学ぶことになるとは思いませんでした(笑)

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ヌール みなさま様々な学びをされていて、変化も大きかったとのことですが、将来に向けて…この留学の体験をどう活かしていきたいですか?私は、留学で少しはアラビア語力を伸ばせたと思うので、それを使って、卒論の執筆に活かしたいと思っています。大学院の修士課程までは卒業したいと思っていますが、その後の進路は未定です。アカデミックな道に進んでも、ビジネス方面に進んだとしても、アラブ圏、特にエジプトとは(腐れ縁かもしれませんが…笑)関わって行きたいですね〜

カスラーン 私は今年大学3年生でこれから就職活動をしていく予定です。留学に行くまでは海外志向が強く、特に就職に関しては海外勤務に強く憧れていたのですが、留学してからはそうでもなくなりました。これは海外が嫌になったとかそういうことではなく、留学することで海外から見た日本のよさや、日本企業や日本経済の世界でのプレゼンスの高さなどを感じたり、海外への変な憧れみたいなのがなくなりました。ただ、中東に関わる仕事や企業には興味はあります。まだ留学が終わったばかりで正直今後の進路についてはあまり決まっていないのですが、今回の留学が生かせるといいな、と思いますね~

メイサ この春コロナ禍の中ですが、社会課題解決に取り組む公益財団で勤務を始めました!中東に駐在のある仕事は?と就活中によく聞かれましたが、あくまで留学は学生時代に取り組んだ沢山の活動のうちの1つだったので、絶対に中東に関わる仕事がしたい!とは思わなかったですね。
でも、留学中に関心をもったことや学びは職業選択の際に凄く影響したと考えていて、何より自己分析は凄く為になりました。どうしても営利企業で商品を売るために一生を捧げる人生がイメージできなくて。関心が強くなった多文化共生をはじめ、教育格差や防災、地方創生など「社会課題解決に関われること」が軸だと自信を持てたので指針になりました。内定を頂いたのは、政府系の金融機関と新聞社、公共インフラで、でもやっぱり自分が社会課題解決のフェーズに関わるアクターになりたいと思って今の職場を選びました。とにかく社会課題に向き合う組織の中で、世界中で様々な経験をされてきた方々から刺激を受け、毎日とても充実しています。

スルターン 日本と中東の架け橋となる活動を本格化させていきたいと思っています。「架け橋」と言うものの、そう容易く使える言葉ではないので、言い換えるとするならば、中東の人達の気持ちが分かるようになる活動ですかね。僕は何かしら中東に携わる仕事に就きたかったのですが、本命の企業には入社できず。現在勤めている企業は正直そこまで中東と携わっているわけではないのですが、自由な時間を活用して、これまで出会ってきた中東の友人たちとは毎日連絡を取り合っています。その友人たちと密に連携を取りながら、これからビックなことを起こしていきたい。はじめて見たドバイの街の迫力やエマラティの優しさに触れたことで、何事にも挑戦しようとするマインドが身につきました。現地の人達とこれまで過ごしてきた時間は何にも代えがたい経験ですし、僕の人生を変えてくれた恩人たちでもあります。そんな彼ら・彼女らに少しでも恩返しをしたい。その思いで、中東とは今後も関わり続けていきたいと思います。

 全3回の長編となりましたが、皆様いかがでしたでしょうか?特にアラブ諸国への留学は、自分自身の性格や出会った人・経験などによって、嫌いになって帰ってしまう人が多いという現状があります。ただ、私含めて多くの人が留学中に出会った良かったこと、嫌だったこと両方の経験を通じて、その後の人生の糧としていることもまた事実だと思います。もし、興味があり、それを実現するための条件が整っているのならば、ぜひ一歩勇気を出して挑戦することを強くお勧めしたいです。本noteが、されかの挑戦の後押しになれたらと願って止みません。(対談者一同)

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