見出し画像

小説版『アヤカシバナシ』方向音痴

服屋さんだった頃、出張で大きな街へ行く事に。

我が町でもさっぱりわからない極度の方向音痴の私は、会社でもそれは有名で、駅のすぐそばにホテルを取ってくれた。


親切な庶務課の女性がホテルまでの地図、ホテルから会議場所への地図を書いてくれた。


無事ホテルで目覚めた私は早めに行動開始。

地図を見ると目印は煙突!と書いているので、駅から出て周囲を見渡すと煙突が見えた。

絵に描かれているのとそっくりだったのでそっちへ向かった。


やや暫く歩くとなんか山っぽい。

いあ、街の雰囲気が無くなってきている。

絶対間違ってると思って会議で待ってるSV(スーパーバイザー)に電話をした。


答えは全く逆だった。

そこから少し坂を上ると右手にバス停あるから、〇〇行きってのに乗って、〇〇で下りれば目の前だよ。

と教えられたのでバス停を探すと、バスが止まっていて数人並んでいるのを発見。

やった!と思い列の最後尾に並ぶ。

でもやたらと人が乗るのも降りてくるのも遅い気がした。


遅刻するじゃん・・・


やっと自分の番になったのですが、そこには献血と書かれたバスが。

『はぁ?献血?』

『どうぞーバスに乗ってください、帰りにオレンジジュース差し上げますね』

と看護師さんみたいな女性に言われた。

『いあいあいあいあ、そうじゃなくて・・・あの・・・』


『おーい!!!!!!』


私を呼ぶ声が聞こえて振り向くと車で迎えに来てくれたSVだった。

『お前の店に電話したら究極の方向音痴だって聞いてよ、

つか献血のバスに並んでるって方向音痴のレベルじゃねーだろ』

と大声で言われ、周囲の人に爆笑された。


それ以来私はそのSV仲間からは『献血』と呼ばれるようになり、『お前は出張来なくていい、書類送るから』と言われるようになりました。


化かされるってこんな感じだろうかと感じたのを覚えている。

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?