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#週一文庫

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毎週1冊の文庫もしくは新書を読み、その本の中でじぶんが一番おもしろいと思ったところを引用しながら、「なぜおもしろいと思ったのか?」を踏み込んで解説。 いわゆる書評ともちょっと違う…
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#読書日記

ぼくのマンガ人生 (岩波新書)手塚 治虫

この本は、みなさんご存知のマンガ家「手塚治虫」が、幼少期にマンガと出会い、マンガに助けられ、そしてマンガを描き続けてきた自身の人生について、改めて振り返りながら、自分がどのようにして「マンガ」、ひいてはマンガを通じて「人」と、向き合ってきたかを書き記した一冊です。 「好きだから」で選べるか一番おもしろかったのは、P72 「生命の尊厳」がぼくのテーマ より ぼくは医者になれたらいいなとも考えていましたし、マンガも描きたいと思っていました。そしていよいよ進路を決めなければなら

居酒屋の誕生: 江戸の呑みだおれ文化 (ちくま学芸文庫) 飯野 亮一

この本は、江戸の頃にできてきた「居酒屋」の誕生期について、当時の文献から明らかにしていく一冊です。徳川の時代における禁止令の話や、それでも止めることのできなかった世俗の様子。またどんな風にして飲まれていたのかということがわかるようになります。 変わらない飲み人たち、変わる居酒屋の経営一番おもしろかったのは、P100-101 酔っぱらい天国・江戸 「われわれの間では誰も自分の欲する以上に酒を飲まず、人からしつこくすすめられることもない。日本では非常にしつこくすすめ合うので、

日本の税金 第3版 (岩波新書)三木 義一

この本は、日本の税金入門書として書かれた本です。「税金のことはよくわからない」と、ブーたれて文句言い続けのでなく、まず現在の税制を理解できるようにとの想いで書いてくださったそうなのです。 前回、週一文庫で取り上げた本で、税金に興味を持って、もうちょっと深掘りしたいと思って手にとりました。買ってから気がついたのですが、著者同じの一冊ですね。 ▼前回の週一文庫はコチラ 消費税と派遣社員一番おもしろかったのは、P99第3章 消費税 多くの消費者は、「消費税」という名前からし

給与明細は謎だらけ (光文社新書) 三木義一

この本は、主にサラリーマンの給与明細に関係する税とその控除に関連する基礎的な内容や、その制度にまつわるここ数十年の間に起きた様々ないざこざなどを、皮肉たっぷりに取り上げる一冊です。 会社の財務三表や、株取引に関する書籍は数あれど、手元の財布に影響する、税やその控除について詳しく説明してくれる本は意外と読んだことなかったので手に取りました。 ぜひこのnoteの最初の章「一年間、いくらあったら最低限の生活ができる?」について、数字を思い浮かべてから読み進めてください。 一年

痛快! コンピュータ学 (集英社文庫)坂村 健

この本は「コンピュータって一体何をしているの?」「誰が開発してどんな風に育ててきたの?」「えっ、コンピュータが広まった背景にはそんな事情があったんだ!」といった、コンピュータにまつわる原理的・歴史的事柄をまとめた一冊です。数式だらけになったりはしないので、専門知識は持ち合わせていなくても気軽読める内容です。 読み終わってからTRONについて調べ始めて知りましたが、日本では知らぬところでTRONが結構使われているようですね。wikipediaによれば、ニンテンドースイッチのO

方法序説 (岩波文庫) デカルト

この本は、有名な「我思う故に我あり」の言葉が書かれているデカルトの書物です。フルネームでは、『理性を正しく導き、学問において心理を探求するための方法の話[序説] 加えて、その方法の試みである屈折光学、気象学、幾何学』というタイトルなんだそうです。近代合理主義の基となった考えというのが、一体どのようなものでるのか知りたくて手にとりました。 いずれはこちらも読まなければと思っており、まずはデカルトから。 後から続くものに道を遺す一番おもしろかったのは、P83-84 第6部

ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 (光文社新書) 大鐘 良一, 小原 健右

この本は、2008年に日本で実際に行われた宇宙飛行士選抜試験の様子を、つぶさに記録したドキュメンタリーです。帯にも書かれている通り、宇宙兄弟を観たり、読んだりしている方には絶対オススメしたい一冊です。 NHKが取材を行ったものであり、ドキュメンタリー番組自体は今も観ることができます。 なぜ、今ここにいるのか?一番おもしろかったのは、P200-203 第4章 NASAで試される"覚悟" まず声をかけたのが、リンゼー氏だった。 「ノリ、アオイ? NASAへようこそ。私の名前

問い続ける力 (ちくま新書)石川 善樹

この本は、予防医学で有名な石川善樹先生が、出口治明氏(ライフネット生命創業者)や若林恵氏(元WIRED編集長)といった、”考える達人”に行ったインタビューを編纂しつつ、彼らのような”考える達人”たちが、いかにして問を立て、物事を考えているのかということを浮き彫りにしていく一冊です。 遠くまで考えつづける歩き方一番おもしろかったのは、P232-233 松嶋啓介--アートとは何か? 土地を感じるために、自分を空っぽにする 修行中は「シェフ、なぜこれを考えたの?」と聞いていた。

アリエリー教授の「行動経済学」入門 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)ダン・アリエリー

この本は、"行動経済学"関連の著書で有名な、ダン・アリエリー教授がNHK白熱教室で語った内容を書籍にまとめたものです。 人のめんどくさがりは、マーケティングの対象一番おもしろかったのは、P26-27 第一回 人間は"不合理"な存在である 意思決定は"合理的"か? こんなピザのメニューがあったら君たちはどう注文するだろうか? 一方は、記事に好きなトッピングをのせられるようになっている。ピーマンやオリーブなどのトッピングをクリックして選ぶんだ。もう一方は、あらかじめすべてのト

サイバー攻撃 ネット世界の裏側で起きていること (ブルーバックス)中島 明日香

この本は、インターネット空間における攻撃行為(俗に言う「ハッキング」)が、具体的にどのような仕組みで行われているのか、またそれに対抗するセキュリティ側が世の中でどのような取り組みを行っているのかを取り上げた一冊です。 著者の方の年齢が、じぶんと1歳違いということで、親近感を得て手に取りました。 著者のtwitter▼ サイバー攻撃はすぐそばに一番おもしろかったのは、P196-203 第7章 脆弱性と社会 Exploit Kitにより下がるサイバー犯罪参入のハードル 私

牛乳とタマゴの科学 完全栄養食品の秘密 (ブルーバックス) 酒井仙吉

この本は、牛乳とタマゴが、食用に至るまでに辿ってきた歴史の考察と、それらが栄養学や生物学的に持つ性質を詳説していく一冊です。 僕らは、食べているものの育ち方をもっと気にしてもいい。一番おもしろかったのは、P139-141 第6章タマゴを産むニワトリ、肉をつくるニワトリ 毎日はタマゴを産めない 産卵数には餌が関係し、多くタマゴを生むほど、バランスのとれた栄養が必要である。タンパク質は体の維持に一日七~八グラムが必要であり、タマゴ一個のタンパク質は約七グラム、生産にこの倍が必