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牛乳とタマゴの科学 完全栄養食品の秘密 (ブルーバックス) 酒井仙吉

この本は、牛乳とタマゴが、食用に至るまでに辿ってきた歴史の考察と、それらが栄養学や生物学的に持つ性質を詳説していく一冊です。

僕らは、食べているものの育ち方をもっと気にしてもいい。

一番おもしろかったのは、P139-141
第6章タマゴを産むニワトリ、肉をつくるニワトリ
毎日はタマゴを産めない

産卵数には餌が関係し、多くタマゴを生むほど、バランスのとれた栄養が必要である。タンパク質は体の維持に一日七~八グラムが必要であり、タマゴ一個のタンパク質は約七グラム、生産にこの倍が必要であり、合計すると二一グラムにもなる。人での必要量は体重一キログラムあたり一・〇~一・二グラムとされるが、ニワトリでは約一〇グラムにもなる。(中略)
ここでニワトリ用の餌を見てみよう。養鶏では配合飼料が使われており、主原料はトウモロコシとマイロ(トウモロコシに近い穀物)で、これに油かす(菜種や大豆など)、魚粉、肉骨粉、米ぬか、動物性油脂などを加えてつくられる。(中略)トウモロコシといっても食用にするスイートコーンと別種のデントコーンやフリントコーンなどで、多収穫を目的に品種改良された種類である。餌を丸呑みにするニワトリに味覚はない。配合飼料の原料で人が食用にするものは一つもなく、このことからニワトリは人が食べられない資源をタマゴと鶏肉に変えてくれる動物ともいえる。(中略)
配合飼料購入価格は一トンあたり五万円台、成鶏は約一〇〇グラムを食べることで餌代は五~六円となる。安さの秘密は、原料が廃物に近く安価で入手できることである。
 ただ一〇万羽の養鶏場であれば餌の消費量は一日一〇万トンともなり、この供給が保障されなければ養鶏業は成立しない。養鶏用に限っても日本での餌の消費量は年間一〇〇〇万トンにもなる。配合飼料の原料の九割は外国産、これを安心といえるだろうか? これは本書の目的と異なるので皆さんへの宿題とする。参考までに日本における食用米の年間消費量を示すと約八〇〇万トンである。

「人は食べたものでできている」
そんなフレーズを聞くことがあります。

それが正しいなら、じぶんらが食べているタマゴや肉も同じように「食べものは、彼/彼女らが食べていたものでできている」とも言えるのではないでしょうか?

今回引用した場所を読んで、そのようなことを感じました。

一昔前に、「BSE(『牛海綿状脳症』あるいは『狂牛病』)」というものがありましたよね。

日本では、2001年に千葉県で確認され、TVで報道されていた様子を覚えていますし、米国産牛肉が輸入禁止になっていたのも記憶に残っています。

その「BSE」が発症した原因は、牛たちの食べていた肉骨粉だと考えられているそうです。

「異常プリオン」というものが「BSE」の原因として考えられており、それが肉骨粉に多く含まれているのが理由だそうです。

日本では、2001年10月に法律で肉骨粉を含む家畜飼料・肥料の製造・販売が停止。

徐々に見直されていった後、今は「牛由来肉骨粉について、原料は食品として利用可能な牛の部位とし、交差汚染防止対策として、大臣確認制度を導入のうえ、魚用飼料への利用を再開」となっているようです。

<飼料の安全と品質確保 - 農林水産省>

「グラスフェッド」のバターなどが、ここ数年流行っていますが、そういった「人間が食べるものが、食べていたもの」にもっと目を向けてもいいと思いました。

その他、驚き「牛・タマゴ」

「鶏は廃材のようにめちゃ安い配合飼料を食べてタマゴを産んでいる」このことだけでも充分発見でした。しかし、その他にも牛とタマゴについて初めて知ることがいっぱいあったので、いくつか書き残します。

タマゴの殻の赤/白は、栄養とも美味しさとも無関係

ただ、鶏の種類が違うだけ。値段が高いのは、単に赤い卵を産む鶏の方がコストの掛かっているため。特別に栄養がいいとかそういうわけじゃない。


すべてのニワトリは米国産。

日本にいるニワトリたちは、たとえも両親は国内にいても祖父母は米国にいるらしい。一番日本で卵の流通数が多い白色レグホーン(日本に流通する内の80%を白色レグホーンが占める)をはじめとし、ニワトリたちのルーツは基本アメリカ。それにニワトリが食べる配合飼料の原料は海外で生産されたものだそうです。


日本は1872年(明治五年)まで、基本は食肉禁止の国だった

1872年に明治天皇が試食され、僧侶と尼僧に食肉を勧める公布が出された「肉食妻帯勝手なるべし」と。そこに至るまでは基本的には肉食が主流ではなかったそう。どうやら仏教伝来以降、狩猟で得たものはOK、家畜はNGということだそうな。「ご養生肉」などという名目で、体調の悪い時の栄養食として食べられるようなことはあっても、日常的に食べる習慣はなかったようです。


醍醐味の「醍醐」は牛乳を加工した何か?

「醍醐」とは仏教の経典「涅槃経」に書かれている最上の味がするものだそうです。残念ながら正確な正体はわからないそうですが。

譬如從牛出乳 從乳出酪 從酪出生蘇 從生蘇出熟蘇 從熟蘇出醍醐 醍醐最上 若有服者 衆病皆除 所有諸藥、悉入其中 善男子 佛亦如是 從佛出生十二部經 從十二部経出修多羅 從修多羅出方等経 從方等経出般若波羅蜜 從般若波羅蜜出大涅槃 猶如醍醐 言醍醐者 喩于佛性
— 『大般涅槃経』
牛より乳を出し、乳より酪(らく)を出し、酪より生酥(せいそ)を出し、生酥より熟酥(じゅくそ)を出し、熟酥より醍醐を出す、仏の教えもまた同じく、仏より十二部経を出し、十二部経より修多羅(しゅたら)を出し、修多羅より方等経を出し、方等経より般若波羅蜜を出し、般若波羅蜜より大涅槃経を出す

「酪」はヨーグルト。「酥」は練乳やチーズ。と、この本の中では推測されています。そして「醍醐」はというとわからないそうな。最上の味がするというのに残念。

ただ「醍醐味」という言葉に残っているだけなそうです。醍醐味という言葉の意味からしても、きっとめちゃくちゃに美味しいものなのでしょう。ぜひ味わってみたかった。


いやはや、日常目にする牛乳とタマゴですら知らないことだらけだ!

終わりに

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