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新生活にお守りを

「赤はヒーローの色」

「赤はヒーローの色やで?」とは、息子が小学校に上がるとき、新しいレッスンバッグを作ってやろうと思って「何色がいいとかある?」と尋ねた私の質問に、息子が「赤」と答え、私が「赤?」とちょっと驚いた感じで聞き返したのに対して息子が言ったセリフです。それまで、息子が特別に赤が好きだと感じたことはなかったし、ランドセル選びでは頑なに黒が良いと言い張った彼だったので、手提げカバンの色に赤を希望するというのはちょっと意外だったのです。そして、私の言った「赤?」には、やっぱり、男の子だけど赤でいいの?みたいな気持ちが含まれていたと思います。私のそういう気持ちを察して息子が言った「赤はヒーローの色やで?」というセリフは、このときの私にちょっとした衝撃を与えて、その後も、私が息子と付き合っていく中で、折りにつけ思い出すことになるセリフとなりました。色ひとつとっても、息子と私とでは捉え方がまったく違うんだということ、息子は息子の目で、この世界を見ているんだということを思い知った瞬間でした。そしてもうひとつ、この時のことは、Stduio D403で商品を作っていく中での、大事なひとつの指標にもなりました。商品の色についての考え方です。

入学式の日。ヒーローのカバンを提げて記念写真の図(笑)

色、いろいろ

Studio D403では、多くのシリーズに於いて、複数の色展開をご用意しています。開店当時からある一番古いMY STANDARDというシリーズは、リリース当時は2色展開でしたが、今は4色展開になっています。その後にリリースしたALWAYSというシリーズやLovelyというシリーズも、最初は1色しかなかったのですが、今はそれぞれ3色展開になっています。DAYSというシリーズに至っては今や7色展開です。

これだけの色展開をご用意しているのには、みっつの理由があります。

選ぶ楽しみ

まずひとつ目は、選ぶたのしみをご用意したいなぁという気持ちです。私自身、ショッピングで何かときめくものを見つけて、それに色展開があったとき、「えーやばい!どっちもかわいい!どっちにしよう…困る…(嬉しい&ぜんぜん困ってない)」となってしまう人間です。気に入るものに出会えるだけでもこの上ない喜びなのに、さらに、どっちの色も、どの色もかわいいとなった時の喜びは計り知れないものです。どちらにしようか、どれにしようかと悩んでいる時間は、ちょっと先の未来を空想して、幸せになれる時間です。それって本当に尊い時間だよなぁって思うのです。

時々お客さんが、娘が、息子が、悩んで悩んでこの色にしました、とか、母と子で意見が分かれたのだけど母が折れることになりました、とか、てっきりこっちを選ぶと思っていたのに違う色の方を選んで、我が子の成長を感じてしまいました、というようなことをメールで話してくださいます。ある時は、娘ちゃんが期限ぎりぎりまで悩んで片方の色を選んだのだけど、それがあまりに苦渋の決断っぽかった為、不憫に思ったお母さんが、こっそり、選ばなかった方の色のポシェットをプレゼントすることにしました、と言って、後日ポシェットをご用命いただいたということもありました。そういう話しをきくと、商品だけでない、目には見えない何か別のものを、D403も少しだけ提供することができているのかな、と、嬉しくなります。

色違いのおそろいは嬉しい

ふたつ目は、ご兄弟やご姉妹が、色違いのおそろいを楽しめるようにしたいなぁという気持ちです。一番古いMY STANDARDというシリーズは、元々2色展開だったと書きました。ショップをオープンさせた一年目の春先に、長男くんのご入学用にとお求めいただいたお客さまが、半年ほど経ってからメールをくださり、このシリーズに他の色を出す予定はありませんか?出して欲しくてメールしました、とおっしゃるのです。このお客さまは3兄弟のお母さんで、この3兄弟が小学校に上がるときに、全員が色違いで同じシリーズを持てるように、少なくともあと1色、色違いのものを作って欲しいと希望されていたのです。私はこのメールを読み終わる前からもう、3色目は何色にしようかなと考えはじめていました。

D403の入園入学セット(レッスンバッグ、上履き入れ、体操服入れ)は、どのシリーズも定番なので、お兄ちゃんの時に選んだシリーズを3年後4年後にもお求めいただくということが可能です。それならば、どのシリーズにも色違いをご用意して、数年にわたるご兄弟ご姉妹の入園や入学のときに、色違いを選んでいただけるように、色展開を増やしていきたいなぁと、ショップをはじめて2年目くらいには考えるようになっていました。そして、DAYSというシリーズはデザイン的に中性的で、尚且つ7色もカラー展開があるので、兄妹とか、姉弟とかのような組み合わせでもお揃いにしていただけている状況にあり、これはD403にとって、ちょっとした自慢になっています。

色のパワー

みっつ目は、D403のような小さなお店だからこそ、小回りをきかせてできることがあって、それが誰かの幸せにつながるなら、そういうことをやっているお店でありたいなぁという、ちょっと大袈裟に言えば矜持のようなものです。多色展開にしていても、ほとんど売れないカラーもあります。でも私がきれいだなと思っているカラーや、この色とこの色の色違いをご兄弟で持ったらかわいいだろうなとか思うカラーは、たとえほとんど売れなくても廃盤にはしていません。どこかに必ず、これがほしいというお客さまがいて、いつか現れる、ということを信じていたりします。これはきっと、D403のような、小さな小売店、それも、受注販売をしているお店だからこそ叶えられることだと思うのです。

東北新幹線「はやぶさ」

ほとんど売れない商品のひとつに、DAYSシリーズのミントグリーンがあります。私的には、オフ白との組み合わせのバランスがとてもかわいいと思っているし、同じDAYSシリーズのピンクやブルーとのおそろいもかわいいなぁと思っているのですが、残念ながらほとんど売れていない商品です。

それが、去年の入学前シーズンに、レッスンバッグ、上履き入れ、体操服入れの3点セットで買ってくださったお客さまがいて、そのお母さんがメールにこんなことを書いてくださいました。息子が新幹線がすごく好きなのですが、このカバンの色が、東北新幹線「はやぶさ」の色だと言って気に入っているんです、「はやぶさ」と同じ色のカバンを小学校に持っていくんだと言って、とてもはりきっています、と。私は新幹線に詳しくないのでさっそく検索してみたのですが、そうしたら…はい!たしかにこのミントグリーン、まったくもって「はやぶさ」の色だったんです。あぁそうかぁ、この色は、「はやぶさ」の色だったのね、いつか、「はやぶさ」が好きな子に買ってもらうために、D403はこのカラーをひっそりと並べ続けていたのね、と、なんだかジーンとしてしまったのでした。

東北新幹線「はやぶさ」って、とっても素敵な色だったんですね

新生活にお守りを

息子の「赤はヒーローの色やで?」のセリフに込められた思いについて、最初は、息子にとって赤はヒーローの色だからカッコいい色で、だからその色のカバンを持ちたいんだなぁと理解していました。でも、ずっとあとになって思い至ったことがあります。それは、私が作る手提げカバンを、息子は来たる小学校生活のお守りにしたかったのかもしれないなぁということです。息子は息子なりに、目の前に迫った未知の小学校生活について、いろんな思い、期待や不安を抱えていたのですよね。そんな中で、お母さんに作ってもらう手提げは赤がいいなぁと思ったのかもしれないなぁ、だって赤は、息子にとってはヒーローの色だから。

そういえば一度、入学シーズンではない、夏の終わりごろだったでしょうか。手提げカバンと上履き入れをそれぞれふたつずつ、色違いでお求めくださった方が、2学期から転校することになって、子ども達が、お友達との別れが寂しそうだったり、新しい学校での新生活が不安そうだったりするので、母親の私からのエールのつもりで、新しい手提げと上履き入れをサプライズでプレゼントやりたいんですとお話しくださったこともありました。新学期、転校先の学校に初めて登校するとき、お兄ちゃんと弟くんと、手提げをお揃いで持っていけたら、勇気が出るんじゃないかと思って、と。これもお守りだなぁと思ったエピソードです。

ランドセルほどの思い入れを持って選ばれるわけではないかもしれない手提げカバンです。けれど、入園のとき、入学のとき、転校するとき、D403のカバンが、子ども達のお守りのような存在になれたら、こんな嬉しいことはないなぁと思います。

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