🎄【神宮の森に響け】「戦場のメリークリスマス」坂本龍一さん、最後まで神宮外苑再開発に反対
【写真】解体工事が始まった神宮第二球場=東京都新宿区(撮影・飯竹恒一)
10代のころ、この曲を映画館で初めて聴き、ラストシーンなど映画そのものの壮大さと合わせ、大きな衝撃を受けました。この曲が聴きたくて、何度も映画館に通いました。あれから40年。曲を手がけた坂本龍一さんが亡くなりました。まだ71歳でした。
世界的な作曲家である坂本さんは環境問題などにも取り組み、大量の木を伐採する神宮外苑再開発に反対していました。「先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」という内容の手紙を、小池百合子都知事らに送っていたと伝えられています。
私自身、神宮の森には少なからぬ思い出があります。特に許せないのは、神宮球場と隣の秩父宮ラグビー場の場所を交換する形で再開発をするという安易な発想です。ビジネス優先の効率を追求するとこうなるのでしょうが、野球ファンも、ラグビーファンも、思い出のある土地への愛着心が踏みにじられる思いをしているのではないでしょうか。
坂本さんの訃報に触れる少し前、現地を訪れました。新国立競技場を横目に、神宮球場わきの第二球場の前で立ち止まりました。すでに報道されていた通り、先陣を切る解体工事が始まっている様子でした。
第二球場には、小学3年か4年の頃の思い出があります。当時、東京のリトルリーグに入りたてだった私は、右も左もわからないまま、何かの大会の開会式の入場行進に参加したのです。また、記者時代には、野球にまつわる連載のため、東都大学野球リーグの試合を取材したこともありました。メーンはあくまで神宮球場ですから、言わば格下の試合が行われる場所で、ゴルフ練習場を併設する珍しい球場としても知られました。
反対署名などの抗議行動は無視され、このまま樹木も、神宮球場も、秩父宮ラグビー場も、跡形もなく葬り去られるのでしょうか。少しでも知恵を働かせて、妥協点を見いだせないのでしょうか。モノ言わぬ風潮が目立つ今の日本にあって、坂本さんのメッセージを私たちがどこまで受け止められるのか、試されているようにも思います。
坂本さんが貫いた信念のおかげで、私の中では「戦場のメリークリスマス」の旋律が「神宮の森」に響き渡り、両者が分かちがたく結ばれている不思議なイメージがあります。この曲を改めて聴きながら、最後まで神宮外苑再開発に反対し続けた坂本さんの使命感と勇気に、心から敬意を表したいと思います。
ありがとうございました。
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