【経理】"うちの会社は特殊なので変えられない" は本当か?
こんにちは、きくちきよみと申します。
元・舞台照明家の税理士です。
自分は舞台照明家→事業会社経理(複数)→会計事務所・税理士法人(複数)→税理士という経歴です。会社の内からも外からも多くの経理現場を経験してきた中で、会社の方からよく聞く言葉があります。それは「うちの会社は特殊なので」という枕詞です。
今日は「自社が "特別" "特殊" だと思うことは、本当に "特別" "特殊" なのか、改めて考えてみる」ということについて書きます。
「普通の会社」は、どこかにある?
自分の経理業務のスタートは、イベント会社のひとり経理でした。初めての管理部、初めての経理。始めた当初は簿記の勉強すらしたこともありません。
自分が経理だった当時、会社は経営上のいろいろな問題を抱えていましたが、その問題の対処法も改善案もわかりません。頼る知り合いや友人もいません。最初は顧問税理士もいなかったので、すがる思いで経理雑誌を読みあさりました。
当たり前のことですが、知識・経験がない状態で経理雑誌を読むだけでは、何の解決にもなりません。しかも、書かれていることは、どれも実用的でないように見えます。当初は「経理雑誌に書かれているのは、自社以外の "普通の" 会社のこと」「うちはイベント会社だし、製造業でも卸売・小売業でもない。ここに書かれていることは、自社には役に立たない。」と考えたこともありました。
中小企業の経理現場を多く見てくると、どの会社の経営者や経理さんも、多かれ少なかれ「うちは特殊なので」「普通の会社はこんなことはありませんよね?」とおっしゃいます。もちろん、違いの部分に焦点を合わせてしまうと、「どの会社も違う」と感じるのは理解できます。
迷える経営者や経理さんが考える「他の普通の会社」は、実際にはどこにも存在しないように感じることが多いです。
発想の転換をすると、一般化できることも。
経理の仕事を始めたばかりの当時、自社にとっての最大の課題は「イベント・現場ごとの収支を明確にすること」でした。今なら「これは『プロジェクト原価管理』の考え方で解決できる」「どこまで細かい管理をするか考えて、イベントが終了していない場合はどのように会計処理するか考えよう」とすぐに実際の対応に落し込めます。
ところが、当時は「イベント会社の経理ってどうやるんだ?」というところでつまづいてしまいました。学生時代は外国語学部だったので、経営や経済を専門的に学んだわけでもありません。何をしたら良いかわからず、とりあえず会計記帳するために簿記の勉強を始め、簿記2級の資格を取得しました。そしてわからないなりにも徹底的に考え抜いてやろうと思い、朝3時に起床し、大量購入したあらゆる経理雑誌を内容を端から端まですべて読んで理解するように努めていました。
すると、少しずつ、やみくもでありつつも読みあさった経理雑誌の記事の内容や簿記の知識をベースにして、「この方法は自社に応用できるかも」「手順を変えたら、雑誌に書かれているような一般的な方法に近づけるかも」ということがわかってきます。
「自分の会社は『特殊』だからできない」と考えるよりも、「どうしたら一般化できるか」を考えるようにすると、話が前に進んでいくのだと気づきました。
手札は多ければ多いほど良い。
経理で発想の転換をするには、考えるための手札が必要です。自分の場合は経理雑誌や簿記の勉強でした。またその後、多くの企業の経理現場の実務を知ったり、会社の会計監査対応をサポートしたり、税理士の資格勉強をしたりする中で知ったことも多いので、手札は多ければ多いほど良い、と思っています。(もちろん、使いかたがうまくないと全く役に立ちませんが)
ただ、この書き方をすると「資格がたくさんあった方が良いのか」と考える方もいらっしゃると思います。もちろん経理の仕事をするにあたり、共通言語である簿記の資格は取得した方が良いと思いますが、世の中に資格試験は無数にあります。本末転倒にならないよう、取捨選択は必要でしょう。
なお、経理雑誌は『税務通信』や『旬刊経理情報』などをおすすめすることが多いですが、最初は「読んで抵抗感がないもの」がベストでしょう。
また、「こういう時、他社ではどうしていますか?」という質問対応は、会計事務所や税理士法人はとても得意です。税理士さんは他社事例の宝庫なので、顧問税理士がいるのであれば、顧問税理士に質問をするのが一番早くて確実だと思います。自分の場合、最初は顧問税理士がいなかったので非常にきつかったのですが、経営者を説得して税理士さんと顧問契約をしてもらってからは、本当に楽になりました。
現実は、泥臭いけれど。
・・・とここまで書きましたが、何かを改善しようとするとき、現実はとても厳しいと思います。
経理さんが会社の仕組みやルールを変えて改善しようとするとき、必ずしもうまくいくというわけではありません。反発や軋轢が生じることもあるでしょう。
中には、人には話したくないような泥臭い事情や、げんなりするような会社内の嫌な部分に触れざるを得ないこともあるかもしれません。実際、そのような場面に立ち会うことも非常に多かったので、決して一筋縄ではいかないことも理解します。
だからこそ、変えるべきことがあるのであれば、ひとりで孤軍奮闘することは考えないようにしなくてはなりません。
是非、協力者を増やしながら、少しずつ改善を試みてはいかがでしょうか。
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
この投稿に対するご意見・ご感想などありましたら、コメントを頂けますと幸いです。