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【読書感想】烏に単は似合わない

小野不由美の十二国記の世界観と似たような作品を読みたくて彷徨っていた時に購入した本書。
「八咫烏シリーズ」と古風な文字列の並ぶポップとは正反対のその表紙を、本屋に行く度、何度か目にはしていた。
ただ正直な話、ライトノベルでいわゆる「女子女子した感じ」の物語だと思っていた。いや、実際その要素は大いにあるのだけれど。
けれど、読み始めたらなかなかに合ったようで、すいすいと読み進めてしまった。
これを当時、若干二十歳の女子大生が生み出したのだから、脱帽である。

物語は、八咫烏の一族が治める世界。
東西南北の名を継ぐ貴族四家の頂点に立つ宗家。そしてその宗家の次期長、若宮の后を決めるため、四家の姫が中央へ集められることに。それぞれ異なる美貌を兼ね備えた四人の才女たちが、若宮の后、ひいては未来の皇后になるべく優雅に競っていく。そんな后選びの豪華絢爛な舞台に、次第に血なまぐさい暗雲が立ち込めていき...

そんな感じできゃっきゃしながらマウントの取り合いをする姫たちを横目に、徐々に様々なキャラクターたちの思惑が交錯し、曇天が広がっていく物語だった。

ちょっとネタバレになってしまうかもしれないけれど、最後まで読んで、うわーなるほどねー...と思ったのが、「東家は腹黒だから」という台詞。
作中前半で2,3度ほど出てくるこの文言が、読んでいてずっと疑問だった。
話し手は東家の姫に焦点を当ててはいるけれど、東家の姫が一人称で物語を進めてるわけではない。そしてその語り方から「腹黒」という部分を、終ぞ見つけることが出来なかった。
だからこそ、オチの部分でうわー...となり、納得した台詞。
ただ、そこまでの語り方で客観性が足りていないと思う方はいるかもしれないけれど...

ほとんど女子しか出てこない、女子がメインの物語だったけれど、煌びやかなマウントの取り合いばかりでなく、それぞれの内面を描き、家々の思惑を仄めかしながら進んでいったからこそ、とても読みごたえがあった。
特に四家の姫は、それぞれ個性が異なり、可愛らしさがある反面、重責を負っている事を自覚している言動が、ギャップとなり、苦しい面もあった。
ちょっと東家の姫に関しては異色だったけれど...

シリーズ完結という事で、これで気兼ねなく続きが読めそう。
十二国記は待てど暮らせど状態が長かったのでね...
ちなみに十二国記って、本当に完結してしまったのかしら?

2巻では、今回表には大々的に出てこなかった、各家家の奸計が描かれているそう。
1巻を忘れてしまわぬうちに、照らし合わせながら読み始めたいところ。

そうだ、本屋へ行こう。

おしまい

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