【カメオの共鳴】シリーズ 第1篇 「熊蜂のささやき」 (No.0231)



・キバチ:ハナバチの俗称のひとつ。
地域によってはペット蜂やライポンともいう。針のないハチ。
黄色いふわふわした毛に覆われた大人しいハチ。

・クマバチ:胸に黄色いふわふわした毛をまとった大きなハチ。
一部ではスズメバチやクマンバチとも呼ばれる。
比較的行動的なオスは、見かけと違って針がなく刺さない。
巣を守るメスは針はあるが毒はなく、危害を加えない限り殆ど刺してこない。



 針のない 大人しいキバチたちが 蜜を求めて ネズミモチ目指して 
飛び回っている
針はあるけど やっぱり大人しいミツバチたちも 
一緒になって飛び回っている


彼らはとっても似ているけれど やっぱりちょっと違っていた
好きなものはおんなじだけれど ホントはちょっと違っていた


突然、ミツバチたちは巣を作り出した とんでもない大きな巣を作り出した
キバチたちは驚いた 一体だれが住むんだろう 
あんなに大きいのは要らないだろう


キバチたちが聞いても 誰も答えてくれなかった 
せっせと作るミツバチたちは 誰も答えを持ってなかった
たくさんの蜜を持っていった キバチたちの分が無くなるくらい 


キバチたちは驚いた 一体だれがそんなに食べるんだろう


その巣にはスズメバチたちが住んだ キバチたちはまた驚いた 
どうして敵のために巣を作るのだろう

尋ねても やっぱり誰も答えなかった 


そのスズメバチたちは貧弱だった 見るからに弱々しいのに
偉そうにミツバチの取った蜜を貪り みんなが作った巣を陣取った
ミツバチたちはせっせと働いた 
蜜も巣も取られるのに いつもよりも頑張っていた

その姿は キバチたちには痛々しくって気の毒だった 
かわいそうに思えていた


その弱々しいスズメバチたちは
汚い色したミツバチたちに 何かをこっそり話してた

青黄赤の不気味な色のミツバチたちに
何かをこっそり話してた


話しが終わった
不気味な色したミツバチたちは 一斉に飛び回った 

あっちこっちに飛び回り


ネズミモチには毒がある

と 言い始めた


この花は毒花だと 口々に言い始めた
みんなに突然 言い始めた


汚い色したミツバチたちは キバチたちの前にも現れて 
大きな声で言い始めた


ネズミモチに毒があるから
これは食べたら死んじゃうから
気をつけないといけないから


みんなはとっても驚いた
キバチたちも驚いた


そんなこと知らなかった 
まったく誰もが 初耳だった 
どうしていいやら分からなかった


ばたばた ばたばた
キバチもミツバチも 右へ左へ慌てふためき
みんな固まって ぶるぶる震えた


こんなことなかった 
今までなかったこと
どうしていいか 誰も知らなかった
ただただ みんな 震えるだけ 
ばたばた ばたばた 慌てるだけ



大きな音が聞こえてきた
大きな音が響いてきた 
ぶるぶる震えるみんなのもとに 
力強く 響いてきた


彼らを照らすお日様が隠れるくらいの
大きな熊蜂が
みんなの前に飛んできた

かたまって震える彼らに向かって
熊蜂は話しをしてくれた 


コショコショ コショコショ
こしょこしょ こしょこしょ


熊蜂の話に 集中した
その場のみんなが聞き入った
キバチたちも ミツバチたちも
震える彼らは みんなが聞いた


そして みんなが安心した
みんなが元気を取り戻した

みんな もう怖くなかった


みんな すぐさま飛び出した
いつものようにネズミモチ目指して 元気に空を飛び回った


だけどそれからも 汚い色したミツバチたちは 同じことを言い続けた
キバチたちにも ミツバチたちにも
毎日 毎日 言い続けた
来る日も来る日も 言い続けた


毒があるぞ 毒があるぞ
気をつけろ 怒られるぞ
死んでしまうぞ 駄目になるぞ



キバチたちは怖くなかった
もうすでに知っているから 
ホントのことを 知っているから

熊蜂から聞いたから


汚い色したミツバチが来ても 追い出した
さっさと出てけと 追い出した


でも ミツバチ同士はそうはいかなかった
変な色したミツバチでも 一応同じミツバチだから



毎日毎日 言われ続けたミツバチたちは やがて どんどん信じ始めた 

せっかく熊蜂が教えてくれたのに
それを聞いてたミツバチたちも だんだん またまた怯え始めた


そうして、キバチはキバチ ミツバチはミツバチに 別れていった



キバチはいつもどおりに蜜を取った 少ないけれど我慢した 
ミツバチたちも取っていた
でもそれを食べなかった スズメバチにあげていた


ミツバチから 蜜を受け取ったスズメバチは
代わりに 変な色の蜜を与えた
見るからに 不気味な色の蜜だった

ミツバチたちは それを毎日食べ続けた
これがあれば安心なんだ、と
ミツバチたちは口々に言い出した


キバチたちにも押し付けだした


キバチたちもこれを食べろ
これを食べなきゃ駄目なんだ

 
無理矢理に ミツバチたちは押し付けてきた


嫌だ いらない やめてくれ
それはとっても 不気味な蜜だ


キバチはみんな断った 



誰がそんな 不気味な蜜を食べるものか


キバチたちは みんな押し返した


キバチたちが嫌がっても
それでもミツバチたちは しつこくしつこく 押し付けてきた



お前たちも食べるんだ
私達と 同じようにしろ


キバチたちは怒った
全員怒って断った


そんなに言うほど良いものならば 君たちだけで食べ尽くせ


ミツバチたちも怒って言った


ようし わかった それならもういい お前たちには絶対あげない 
もし あとから欲しがったって もうお前らには絶対あげない


キバチたちは 喜んで言った


よーしそうだ それでいい
そのかわり 君たちはずっとそれを食べればいい
そんなに言うほど良いものならば
それだけ ずっと食べるんだ いいな


ミツバチたちは 心に決めた
もうこの蜜しか食べないと
頑固になって 心に決めた


そうして 彼らは別れていった


ちょっと前まで 親しかった仲なのに
今はもう 別れた


ミツバチたちは 毎日食べた
スズメバチからの蜜だけを
ありがたがって 毎日食べた


だけど彼らは どんどん弱った

気の毒なほどに弱っていった


弱っているのに 無理矢理に 毎日毎日 蜜を取った
必死になって 巣を作り続けた

自分たちのものじゃないのに
スズメバチに取られるのに


あきれかえるほど 巣は巨大に膨れ上がった 
あきれかえるほど 蜜もたっぷり蓄えられた
巣の下から 蜜が滴るほどに


弱々しいスズメバチたちは ふんぞり返って 生活していた  
ミツバチたちの集めた蜜を 無駄使いしながら 偉そうに言った


もっと集めろ もっと食べろ 
もっと集めさせろ
もっとみんなに食べさせろ


汚い色したミツバチたちは 仲間のミツバチたちをこき使った
そしていっぱい食べさせた 不気味な蜜を食べさせた
ミツバチたちはくたびれた 毎日どんどん 弱っていった

ミツバチたちも嫌だった ホントは誰もが嫌がってた
彼らのための蜜取りも 彼らのための巣作りも
そして不気味なまずい蜜も 

食べるたびに苦しくなる 不気味なまずいこの蜜も


でも嫌がると 汚い色のミツバチが こぞって現れイジメてくる
嫌がるミツバチを 悪いやつだ、と叩いてくる


お前はダメなミツバチだ
みんなと同じようにしろ
みんなに合わせて食べるんだ


イヤだ くるしい もう限界だ そんなに良いならお前が食べろ


何を言うんだ バカなやつ そんなの当然だ 私達はみんな食べるぞ
お前たちよりいっぱい食べるぞ そんなに言うならお前にはやらないぞ


そうしろ そうしろ そうしてくれ
お前たちこそ 誰よりも食べろ
汚い色したミツバチたちよ 誰よりもそれを食べ続けろ
おれたちは もうウンザリだ


ミツバチ同士の争いを キバチたちは遠くで見ていた
キバチたちは 教えてあげた
ミツバチたちにも 教えてあげた
熊蜂の言葉を
別れたけれど 教えてあげた


聞き入れるミツバチもいた
聞き入れないミツバチもいた


でもキバチたちは教えてあげた
一生懸命に教えてあげた
毎日毎日 教えてあげた


聞き入れるミツバチもいた
聞き入れないミツバチもいた


ミツバチ同士で争いだして スズメバチは慌て始めた
その騒動に怒り始めた


何をやってる バカモノめ
蜜が足りないぞ 巣を作るんだ
何をやってる 早くするんだ


スズメバチに怒られた、汚い色したミツバチたちは
焦って 慌てて 暴れまわった 


はやく はやく がんばれ いそげ
もっともっと なにやってんだ 
蜜だ 蜜だ あつめろ あつめろ
つくれ つくれ おおきな巣を


ウンザリしているミツバチたちは 弱って疲れて 動けなかった
無意味なことに 気づきだしてた


汚い色したミツバチたちは、仕方ないから 自分たちでも蜜を集めた
自分たちでも 巣を作り出した

だけど 自分たちで集めたことが無かったから
一度も 蜜を集めたことが無かったから
全然まともに集まらなかった 

巣なんて、一度も作ったこと無かったから
作るたびに壊れていった
呆れるほどに下手だった


スズメバチたちはどんどん慌てた
急がないと、時間がないから 急がないと

 夏が来るから



でもミツバチたちは動けなかった 不気味な蜜にやられたせいで
ぐったり倒れて 働けなかった
汚い色したミツバチたちは 不気味な蜜をたくさん食べた
誰よりも たくさんたくさん食べた 毎日毎日食べ続けた


だから 誰よりも先に くたばった
どんどんバタバタ 死んでいった

汚い色したミツバチたちは それでも食べるのを止めなかった
仲間が死んでも止めなかった
自分が苦しくっても 食べ続けた


だから 誰よりも先に 死んでいった
どんどんバタバタ くたばった


だから だれも蜜を取らなくなった
誰も巣を作らなくなった 


スズメバチたちの世話するものは
すっかり さっぱり いなくなった


貧弱なスズメバチにはもったいないほどの
不釣り合いな大きな巣は 誰一人、手入れをしなくなった


スズメバチたちは 慌てふためき ばたばた ジタバタ 逃げ回った
でも貧弱だから 飛んで逃げる力も無かった


そんなことをしている間に すぐに梅雨がやってきて
雨が続いて 湿気が溢れて
どんどん どんどん 夏が近づく
大きな巣は びっしょり濡れた 


濡れた巣が 悲鳴をあげた
湿気で巣が 崩れ始めた
たっぷり貯まった大事な蜜が ボロボロの巣から零れ始めた


スズメバチたちは 騒ぎ回った
仲間同士で争い始めた

誰が悪いか
誰のせいか
誰のミスか
誰が犯人か


ぎゃあぎゃあ ギャアギャア 暴れまわった
ボタボタ ぼたぼた 蜜が零れた
ぼろぼろ ボロボロ 巣が崩れた
バタバタ ばたばた ミツバチは倒れた


遂に 巣が落っこちた

蜜の重さに耐えきれず 木から大きな巣が落っこちて

地面で真っ二つに割れた



割れた巣の周りには
死んだミツバチたちが
死んだスズメバチたちが 転げ落ちていた
たくさん たくさん 死んでいた
幼虫も たくさん 死んでいた


バカなミツバチたちのせいで
かわいい幼虫たちまでも たくさん たくさん 死んでいた



巣の一番真ん中に逃げていた、より貧弱で より偉そうなスズメバチたちが 割れた巣から のそのそ 出てきた


死んだミツバチを蹴っ飛ばし 死んだスズメバチを放り投げ
別の巣を求めて 逃げ出そうとしていた
持てるだけの蜜を抱えて
自分たちだけ 逃げ出そうとしていた



そこにやってきた 

たっぷりの蜜に吸い寄せられて 
大きな 大きな

熊がやってきた



熊は 貧弱なスズメバチごと巣を丸かじり 

バリバリ ガリガリ
たっぷりの蜜を食べ尽くした


貧弱なスズメバチたちは
巣ごと熊に 食べられた 
一番悲惨な 最後を遂げた



バラバラの巣
散らばったミツバチ
バラバラのスズメバチ
動かない幼虫


遠くで見ていたキバチたち


あんなにみんなが騒いだのに
残ったものは たったのこれだけ
惨めな ガラクタばかりが 散らばっていた



でも キバチたちは みんな残った
ネズミモチも たくさん残った


キバチたちは 喜んだ

汚い色のミツバチたちは もうどこにも現れない
貧弱なスズメバチたちに もう誰も騙されない


キバチはみんなで 蜜を集めた 
そしてみんなで 美味しく食べた


みんな とっても 喜んだ
みんなで ありがとう
と 感謝した


熊蜂に
ありがとう
と 感謝した


ずっと ずっと 感謝した

熊蜂がやってきた
空に向かって


熊蜂は いなかった


たった一度だけしか こなかった
でもそれだけで みんな助かった



ネズミモチの蜜よりも 大切な とっても甘い



熊蜂のささやき






【カメオの共鳴】シリーズ

第1篇




「熊蜂のささやき」




おわり






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