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【2つめのPOV】シリーズ

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#伝えること

【2つめのPOV】シリーズ 第4回   「波」 まとめ記事

パターンA〈ユスタシュの鏡〉

[side:D]

もう、時間の感覚は無かった。

あるのは右手に握られたスナブノーズのリボルバーに取り付けられたクルミ材の握りが放つ暖かな感触だけだった。
ポケットにあるのは満タンのスピードローダがあと1つと、バラの9ミリ弾が僅かだけ。

もうだいぶ前からこのショッピングモールの空調は止まっているらしい。
風が無く、熱気がまとわりつく。

分厚いガラス窓から入って

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Last Part(No.0184)

Part.9のつづき

長老の巣穴に連中を入れ、皆で囲むようにして集まりいざ数えて見ますと、なんとあれだけの騒ぎを起こした張本人達の数はたったの6匹だったのです。

奴らの貝殻を取り払い、よくよく姿を見てみますと、自分達と似ているようで似ていない、あまり見かけない種類のカニ達でした。
しかし、中には同じ種類のカニ、それも顔なじみのカニもおり、それに気づいたカニ達は

裏切り者!

と罵声を浴びせ、

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Part.9(No.0183)

Part.8のつづき

遅れて来といて大声を張り上げる無遠慮なこの若カニに、少々目くじらを立てる古カニもおりましたが、しかしその質問に答えるられるカニはおりませんでした。

この若いカニはズイズイと集会の中へ中へと進みながら声を張って皆に尋ね回りましたが、やはり答えられるものは誰も居ない。

やがて長老の前まで来た若カニは 

長老さん、どうやらこの中には誰も理由を知るものはおりません。
理由がわ

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Part.8(No.0182)

Part.7のつづき

しかし、いつもの仲間たちとは少し違う、あまり見たこと無いカニ達でした。

どうしてそんなものを被っているの?

と、声をかけたものの、芳しい返事は無くどうにもハッキリいたしません。

みんなのもとに戻ったカニは 

変な奴らだなぁ 

なんて首をひねりながらも、井戸端会議にもうひと花咲かせて呑気に過ごしておりました。

しかし、その晩にまたしても誰かの声で

 危ないぞー 

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Part.7(No.0181)

パターンA〈ユスタシュの鏡〉

[side:F]

 悲しいことに、人の世にはどんなときでも悪巧みをする輩は居るものであります。

自分の利益のために人を騙す詐欺師っていう奴は、途絶えたことがありません。

ちょっとおつむを冷やしてみれば、子供だって解るような幼稚な詐欺に、普段は肩肘張った大人でも簡単に騙される事があるものです。

いやあ何であんなものにコロッと騙されたものかなぁ、なんて他人事みた

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Part.6(No.0180)

パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉

「全く世の中はどうしようも無い馬鹿ばっかりだ!」

『ほんとに馬鹿な人ばっかりで嫌になる』

「本当に情けないよ。私達でもう世界は終わりだ。ここまでバカばっかりの世の中になるなんて」

『毎日何処へ行ってもすぐに解るよ。あ、この人馬鹿だなって。今までマシだと思っていた人さえもそうだと解るとガッカリするよ』

「私達の世代が一生懸命頑張って汗水たらして築いた

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Part.5(No.0179)

Part.4のつづき

「誰であろうと結局そうなる。殆どの人がそうなるの。」

大きな透明のガラス瓶にぎっしりとキャンディが詰まっている
瓶が爆発し、キャンディもガラス瓶も粉々に飛散する

テレビ、アイドルグループのパフォーマンスが映っている
集中しているアリスの顔
テレビの前でジッと座っているアリスの姿

アリスの部屋にはアイドルグループのポスターや表紙を飾った雑誌などがある

学校のクラスで友

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Part.4(No.0178)

パターンC〈セルゲイのMix Up〉

色とりどりのキャンディが詰まったケース

キラキラと輝きを放っている

色とりどりのキャンディがゆっくりと盛り上がると、下から甲を上にした指を伸ばした手のひらが出てくる

手がゆっくりとスローに持ち上がると、甲や指の上に乗ったキラキラと輝くキャンディが下のケースにこぼれ落ちてゆく

その手がキャンディをひとつ摘む

その摘まれたキャンディにゆっくりと近づく

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回「波」Part.3(No.0177)

パターンB〈ラウディのサングラス〉

[Remove sunglasses]

今は真夏なのでこの喩えはあまり相応しくないが、枯れ葉を集めるにはバカボンのキャラが持っているような竹箒はとても効果的で、近未来で描かれてきた時代になった今でもアレはとても活躍しているし良いものである。

しかし人をかき集めるにはどうしたらよいかと考えると、枯れ葉には枯れ葉のやり方があるように、人には人のやり方があるもの

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Part.2(No.0176)

Part.1のつづき

俺は3つしくじった。

1つ目は走って逃げずに思わず銃を向けてしまったことだ。

すぐにさっきの喫煙所まで戻れば良かったのだ。

メインの通りはだだ広くて狙いが定めづらい。路地に入ってゾンビの行動範囲を狭めれば対処しやすい。しかし、走った時に感じた身体の違和感のせいで俺はこの基本行動に移らなかったのだ。

2つ目は、さっき残弾チェック時にウッカリ撃ち終わった空の部分が一発目

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【2つめのPOV】シリーズ 第4回 「波」Part.1(No.0175)

パターンA〈ユスタシュの鏡〉

[side:D]

もう、時間の感覚は無かった。

あるのは右手に握られたスナブノーズのリボルバーに取り付けられたクルミ材の握りが放つ暖かな感触だけだった。
ポケットにあるのは満タンのスピードローダがあと1つと、バラの9ミリ弾が僅かだけ。

もうだいぶ前からこのショッピングモールの空調は止まっているらしい。
風が無く、熱気がまとわりつく。

分厚いガラス窓から入っ

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【2つめのPOV】シリーズ 第3回 「仕切り」 まとめ記事

パターンA〈ユスタシュの鏡〉

[side:D]

私の通う中学校でイジメが起きた。
私のクラスで起きた。
被害者は私だった。

他にも多くが色々な被害にあった。
加害者は複数人で、根っからの不良たちであった。
中学にあがった時から問題行動で何度となく注意を受け続けていたが、改善無く今日まで来た。
3年になって中学も最後の時に、よりによって彼らと同じクラスになってしまったのは悲劇であったが、しかし

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【2つめのPOV】シリーズ 第3回 「仕切り」Last Part(No.0167)

パターンD〈ホロウマンのネガフィルム〉

いいや お前は俺と一緒だよ
おんなじだよ おんなじ 
俺には見えるんだよ
似た者同士だよ 似たような人生を繰り返して終わるんだ

俺はそれが嫌だった
でも結局そうなっちまった

でも 自業自得さ 甘かったんだ 失敗したよ
俺はお前みたいになんか成りたくなかった 

でも なっちまった だからこうして同じところにいるわけだ
お前が腹を立てるのもわかるが でも

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【2つめのPOV】シリーズ 第3回「仕切り」Part.7(No.0166)

パターンC〈セルゲイのMix Up〉

Part.6のつづき

どこまでもまっすぐに伸びる階段を登る子供

ゴミだらけのワンルームの部屋の締め切られたカーテンを開ける年を重ねた女性

青々とした葉を茂らせた木々が窓越しに見える

窓も開けると明るい日差しと風が入り込みレースのカーテンを元気に揺らす

窓を開けたり部屋の片付けをしている姿を毛布を被った女が部屋の隅で眺めている

田舎道を歩く男

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