私の分身
眠れない夜を、幾度となく過ごしてきた。
ある時は仕事に悩み。またある時は失恋し。
大人になればなるほど、眠れない夜が増える気がする。
学生の頃は、そんな夜の過ごし方が分からなくて、少し夜が苦手だった。だけど、最近の私は、ちょっぴり違う。
小さな灯りをつけて、温かい飲み物を飲んでみたり。
思い切ってジャンクフードを食べてみたり。
好きな映画や本を読んでみたり。
「せっかく時間ができたんだし、少しくらい夜更かししてもいっか。」そう思うと気が楽になる。
こんな風に考えられるようになったのは、多分、1人暮らしを始めてからだと思う。
過干渉な家族から逃れたくて、私は社会人になって1人暮らしを始めた。
好きな家具や食器、インテリア、入浴剤や洗剤、お花や植物……色々なものを少しずつ集めて部屋を作っていくのが楽しくて仕方なかった。
実家の自室は、物心ついた時から過ごした空間だ。
小学校の頃に使っていた机や、幼い頃に選んだカーテン。先に家を出た姉が残した本棚。自分の今までの歴史が詰まっているけど、色んなものが交錯しすぎて、実家の自室の家具やインテリアにこだわることはなかった。
ただただ寝るためにある部屋だった。
だから生まれて初めて「自分が好きなもの」を考え、集め始めたのが、1人暮らしをしてからだった。
1人暮らしが長くなればなるほど、どんどん「自分らしさ」が芽生えて、「自分の好き」が明確になっていく感覚があった。
そしたら自然と、「自分の部屋」が、私の1番の安心できる場所になったのだ。
この部屋は、私の好きなもので溢れている。
好きな洋服。好きな音楽。好きな食べ物。好きなインテリア。好きな本。好きな香り。
全部全部、私の味方。私のことを肯定してくれるものたち。
そう、この部屋は、「自分らしさ」を忘れかけてしまう眠れない夜に、私に「大丈夫だよ」と話しかけてくれる、私の分身のようなものなんだと思う。
私は、眠れない夜が怖くなくなった。
自分を肯定してくれるもの。安心できるもの。
きっとそれは、自分の居場所だと思える「自分の好き」が詰まった空間なのかもしれない。
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