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「学びのための評価〜東京コミュニティスクールにおける探究の実践から考える〜」セミナー動画+一部文字起こし

本記事は、2023年7月4日開催したオンラインセミナー「学びのための評価〜東京コミュニティスクールにおける実践から考える〜」のアーカイブ動画と、文字起こし(一部)です。

セミナー「学びのための評価〜東京コミュニティスクールにおける実践から考える〜」

「東京コミュニティスクール」とは

「東京コミュニティスクール(以下TCS)」は、2004年に東京都杉並区にて開校された、幼児・小学生対象の全日制マイクロスクールです。開校時の児童は3名、一軒家にて、文字通り"小"(さな)学校として、その歴史をスタートしました。

今ほど普及していなかった「探究(テーマ学習)」を開校当初より実践、数値化が難しい子どもの成長をどうやって評価するか、今も日々の実践の中で振り返り研鑽を重ね続けています。

セミナーのテーマ「学びを促進するための評価」

本セミナーではTCSの創立者である久保一之氏(KAZUさん)と、教員の中島敦子氏(あっちゃん)を招いて、以下の内容をお話しいただきました。

  1. TCSの学び …以下に文字起こし(一部編集)

  2. 探究(テーマ学習)の実践例 …例年、TCS1年生が最初に経験するテーマ学習「紅葉山見っけ隊」を取り上げて

  3. TCSの評価 …アセスメントポリシーや大事にしているカルチャーなど

本セミナーは、弊社グローバルパートナーズが2024年3月まで日本総代理店を務めていたデジタル・アセスメント「ストーリーパーク」のセミナーとして開催したものです。
本セミナーのスピーカーである久保と、司会の永易がプロジェクトリーダーとして始めたプロジェクト「とらすとベース×フリースクール(とらべFS)」の考えのベース(基)にもなるため、本内容を取り上げ、記事化しました。

ちなみに、とらべFS8月合宿では、TCSの学びを深く知り、新しい学びの内容を参加者同士でじっくり考えていきます。
詳細)https://tbl2408.peatix.com/view

本記事は、セクション1「東京コミュニティスクールの学び」をスライド写真付きの文字起こし(一部編集)、セミナー全体のアーカイブ動画を含みます。


1. 東京コミュニティスクールの学び[久保から]

学びの様子

東京コミュニティスクールの学びの全体像について、雰囲気を感じていただくために、写真をお見せしたいと思います。

TCS全員整列!

初等部52名、小さな小さな学校です。

TCSコメタン田植え

コメタン(米作りの探究)田植え。水が抜けたりいろんなことがあるのですが、米作りをして年末に餅つきを行うこともしています。

TCSのテーマ学習

テーマ学習「治の力」。現地・現物・現人を大切にしています。国会議事堂に行った時の写真です。

編集者注)他にも、「編集の達人」「TCS大運動会」「ホースキャンプ」「算数」の写真もご紹介いただきました。

学習環境の概要

TCS学習環境の概要

この、!・?・[もやもや]で表されている3つのマークは学びのアンテナと読んでいて、とても重要な要素です。

この学びのアンテナを持った学習者が、ある程度設定された学習内容(カリキュラム)について、リソースを使いながら、スタッフと学んでいく。自然と関わりながら、コミュニティがその学びを支えます。

TCSの学習環境の全体像

それを自和自和《じわじわ》という時間軸で学んでいき、少しずつ学んでいきます。これが東京コミュニティスクールの学習環境の全体像となります。

教育理念・育む人材像

TCS教育理念

今、出てきた 自和自和《じわじわ》という言葉。これは、東京コミュニティスクールの教育理念になります。

「自分らしさを活かし、人や社会や自然との和(つながり)を楽しみ、ともに学び着実に成長する。」

という意味が込められた造語です。

”着実に”、”じわじわと”というところを大切にしています。

子どもたちは、覚えることやできることが早かったりすることもあります。だからこそ、小学校6年間で完成を目指すようなこと、中学受験を目指すような短い目標ではなくて、その子なりのスピードで、前よりも着実に成長することを目指していきます。

そういったことの結果として、「学び続ける人」「創造し続ける人」を育みたいと考えて、東京コミュニティスクールは設立されました。

では、「学び続ける人」「創造し続ける人」をどうやって育むのか、といった時に出てくるのが、ラーニングフレームワーク(学びの要素の全体像)です。

フレームワーク…評価のサイクル、概念、スキル、知性、スピリットなど

TCSフレームワーク

赤色の部分、「モチベーション」→「習得」→「実体験」→「生きる力」という4つの評価サイクルが今回のテーマになります。学び続けるには「モチベーション」が重要で、それがどうなっているのか分析する時に使います。

ではどのように分析したら見えてくるのか。

TCS「はじめる力(Act)」

まず「はじめる力(Act)」。子どもたちを後押しする部分です。

「なんでもいいから始めてみようよ」
仮に三日坊主でも構わない。三日坊主も120回すれば、360日何かやっていることになります。

失敗しても、飽きてもいいから何かやってみようよ。
これが、東京コミュニティスクールの基本スタンスです。

TCS「概念(Inquiry Keys)」

何かを始めた後、未知のものを理解するための鍵が、緑色の部分の「概念(Inquiry Keys)」です。「探究の鍵」と言い換えても良いかもしれません。

  • 特性や構造についてどうなっているのか(Form

  • 機能や役割はどうなのか(Function

  • 原因や理由はなんだろうか(Causation

  • どう変わったか(Change

  • 私たちの生活とどう関連・影響するのか(Connection

  • 私の観点はこうだけど他の人はどうだろうか(Perspective

これらを武器として、未知のものに向かっていきます。

TCS「スキル(Skills)」

それから、「スキル(Skills)」です。
先ほどの「概念」もですが、東京コミュニティスクールは何でも6つにする特徴があります。各スキルごとに6個ずつ設定がされています。

  • 思考スキル

  • リサーチスキル

  • コミュニケーションスキル

  • 身体的スキル

  • 社会的スキル

  • 自己管理スキル

これらが学びの中に計画的に張り巡らされており、スキルを獲得していくことができます。

TCS「知性(Intelligences)」

他に、「知性(Intelligences)」があります。
知性と聞くと、言語や算数などの教科領域がイメージされると思います。我々も教科の内容をやりますが、重要視しているのは「探究領域(Life themes)」といって、人生で探究するものを、「自主自律」「時空因縁」「意思表現」「万象究理」「社会寄与」「共存共生」6つの領域で設定しています。

6つの領域を、6年間でこのようなかたちでプログラムにしています。

TCS探究プログラム(テーマタイトル)

横軸に、「自主自律:私たち自身の探究」であったり、「時空因縁:私たちと場所の繋がりや、過去や未来への繋がり」であったり、「意思表現:人との繋がり」であったり、「万象究理:万物はどういう仕組みになっているのか」、そして「社会寄与:私たちはどのように社会と関わるのか」、「共存共生:この地球上のいろんな生物とどのように共存共生していくのか」、といったことがあり、これらを6年間で深めていきます。

このスライドに表示されているのは、探究のテーマタイトルです。それぞれのテーマで、概念(セントラルアイデア)を学んでいきます。

例えば、

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