クマちゃん

くも膜下出血、水頭症、脊髄損傷、後縦靭帯骨化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と、数々の…

クマちゃん

くも膜下出血、水頭症、脊髄損傷、後縦靭帯骨化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と、数々の病気と闘ってきた夫、クマちゃんの闘病記録。同じ病気で悩む方のお役に立てれば幸いです。

最近の記事

【9】朝5時のうめき声

盛りがついた猫でも鳴いているのかな? 異様な声で目が覚めたのは、朝の5時でした。 「おーい!おーい!」 それが1階から聞こえてくる人の声だと気づいたのは しばらくしてからです。 「助けて……くれ……体が……動か……ない」 下に降りてみるとトイレからクマちゃんの声が聞こえます。 急いでドアを開けようとするのですが、内側に開くタイプで 少ししか開きません。 トイレの床に倒れているクマちゃんの体がドアを塞いでいて 外に出すことができないのです。 またクモ膜下出血になったの

    • 【8】認知機能障害を抱えたままの復職

      くも膜下出血の後遺症のひとつとして記憶の認知機能障害があります。 クマちゃんの場合、水頭症の手術をしたからすぐに治るというものでもなく、社会復帰した後もちょっと前のことは覚えていられない状態でした。 本人も会社側も、どこまで仕事ができるか分からないまま倒れる前と同じ業務はできない、ということでとりあえず本社勤務に。 残業や休日出勤がない広報部門に籍を置くことになりました。 それまでが激務だったせいか、新しい部署での仕事は楽しそうでした。 「秋は本当にきれいだから」と、

      • 【7】家でのリハビリは楽しいのか辛いのか

        日課は朝の散歩から入院中ほとんど動かなかったので、クマちゃんのリハビリは、足を鍛えることから始めました。 目標は、自宅から江戸川の土手まで行って帰ってくること。 普通の速さなら30~40分で往復できるところ、最初は2時間ほどかかりました。 たった1か月で足がやせ細り、筋力も落ちて歩けないのです。 だから土手のゆるやかな坂も上れない。 「明日また来ようか」 土手まで行っては戻る日々が続きました。 江戸川までのウォーキングコースは、クマちゃんが入院してから毎日欠かさず歩い

        • 【6】退院間近の出来事、そして退院へ

          病棟の人気者?ある朝、病棟のエレベーターを降りると、ナースステーションから キャッキャとはしゃぐような笑い声が聞こえてきました。 何か楽しいことでもあったのかと覗いてみると、そこにいたのは 複数の若い看護師さんたちに囲まれ座っているクマちゃん。 何か面白いことを言って笑いを取っているようです。 「大隈さんって先生だったんですね。話が面白くてみんなで聴き入っちゃいました」 「大隈さんは、いつも優しくて私たちにも気をつかってくれるんですよ」 おしゃべり好きなクマちゃんは、い

        【9】朝5時のうめき声

          【5】横になれない、覚えていられない

          シャントバルブの圧を変える? 水頭症の手術は無事に終わりましたが、2つの理由でクマちゃんが痛みや苦しみから解放されることはありませんでした。 苦しみの一つは頭痛。 横になって寝ようとすると頭がいたくなってしまうのです。 頭の手術を何度もしているんだから仕方がない。そのうち治るだろう。 そんな風に思って数日が過ぎました。 主治医は手術したばかりだからと言っていたけど、眠れないほど痛いとなると何かおかしい。クマちゃんの頭の中で何が起きているのか、手術は本当に成功したのだろう

          【5】横になれない、覚えていられない

          【4】この子は誰だ?

          動けるようになったクマちゃんは、毎日リハビリを受けることになりました。 主なリハビリは3種類。 手を動かす、身体を動かす、頭を使うを毎日繰り返し行います。 剣道で鍛えていたからか、手足の動きは問題なかったのですが、この頃からクマちゃんの様子がおかしくなってきました。 毎朝、名前と日にち、どこの病院にいるのかを尋ねられるのですが、名前以外は答えられない。 付き添っている私や義母のことも「この人たちは誰ですか?」と聞かれても、「近所のお節介なおばさんです」とふざけているのか

          【4】この子は誰だ?

          【3】53日間で3回の手術

          1回目の手術 脳動脈瘤クリッピング術クマちゃんが最初に受けたのは、動脈瘤にクリップをかける手術でした。 再破裂を防ぐために、頭蓋骨の一部を取り外して手術を行うのです。 当時はネット検索しても詳しい情報や画像が、あまり見つからなかったので、頭蓋骨にドリルで穴をあけて人が生きていられるのが不思議でした。 でも、丸刈りになっていて、こめかみの上の骨がボコボコしているクマちゃんを見ると、「あぁ、ここに穴をあけて、また塞いだんだな」というのが、よくわかります。 脳外科の病棟には、

          【3】53日間で3回の手術

          【1】63歳で逝った夫クマちゃん

          2022年4月12日、クマちゃんは集中治療室で一人旅立っていきました。 これは41歳から63歳まで、大きな病気に何度も見舞われた私の夫、クマちゃんの闘病記です。 本人の痛みや辛さは想像でしかありませんが、家族として思い出せることは全て書いていこうと思います。 同じ病気で苦しむ方や、家族の方に読んでいただけると幸いです。

          【1】63歳で逝った夫クマちゃん

          【2】42歳 くも膜下出血 それはテレビドラマのような電話ではじまった

          ジャガイモが手から落ちた瞬間42歳になったばかりの1月19日、クマちゃんがくも膜下出血で倒れました。 クマちゃんの会社から電話がかかってきたのは、夕方6時頃。カレーでも作ろうと、ちょうどジャガイモの皮をむいているときでした。 「ご主人が会社で倒れました」 こんなドラマのようなセリフを、まさか自分が聞くことになるとは……。 持っていたジャガイモが手からゴロンと落ちた瞬間、ふと我に返った気がします。 「これは現実なんだ。倒れたってことはもう生きていないということなのか、まだ息

          【2】42歳 くも膜下出血 それはテレビドラマのような電話ではじまった