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【3】53日間で3回の手術

1回目の手術 脳動脈瘤クリッピング術

クマちゃんが最初に受けたのは、動脈瘤にクリップをかける手術でした。
再破裂を防ぐために、頭蓋骨の一部を取り外して手術を行うのです。

当時はネット検索しても詳しい情報や画像が、あまり見つからなかったので、頭蓋骨にドリルで穴をあけて人が生きていられるのが不思議でした。

でも、丸刈りになっていて、こめかみの上の骨がボコボコしているクマちゃんを見ると、「あぁ、ここに穴をあけて、また塞いだんだな」というのが、よくわかります。

脳外科の病棟には、頭蓋骨に穴が開いたまま皮だけかぶせた状態で、自分でご飯を食べている人もいたので、人の体は案外丈夫にできているのかもしれません。

手術ってすごい!
長時間、神経を集中させて細かい手術ができる脳外科のプロってすごい!

後で、どんな手術だったのかを聞いて、この病院に運ばれたクマちゃんの運の強さを実感したのでした。

集中治療室にいるのに病院食を完食

集中治療室でのクマちゃんは、思ったより元気でした。

「食後のデザートはヨーグルトじゃなくてプリンにしてほしいな」
そんな冗談が言えるぐらいの回復ぶり。頭蓋骨に穴をあけて手術をした人には見えません。

頭や胸が様々な器具につながれているのに、普通に話して、自分で箸をもって食事もできているのです。

「トイレに行けないから、お前オムツかえてくれるか?」
若い看護師さんに世話をしてもらうのが恥ずかしいようで、私は初めての大人のおむつ替えにチャレンジ。
でも、大きな体を動かすのはもちろん、おしりの汚れをふき取るのも大変!義父と二人でやってもなかなかうまくいきません。

「お義父さん、これはもうプロに任せましょう」
頼むと、きゃしゃな看護師さんがやってきて、いとも簡単におむつ替えをするではありませんか!

プロってすごい!
動きに無駄がない看護師さんってすごい!

出産以外で病院にお世話になったことがない私は、ただただプロの仕事ぶりに感動するばかりでした。


病室から脱走!


手術から3日後、驚異の回復力を見せたクマちゃんは、個室に移動することになりました。

「テレビも見れますしね、個室は気兼ねせず面会もできていいですよ」

私たち家族も、それがいいと思い安心していたのですが、翌日とんでもないことに。なんと夜中にクマちゃんが、一人で病室を抜け出し、迷子になったというのです。

「まさか一人で歩けるとは思わなかったので……」

どうやら、つながれていた医療機器を全部外して、病棟内をウロウロしていたところを保護されたようで、本人は全く記憶がないのです。

「心配だから今日から息子の横で寝ます」という義母。
「完全看護なので病院には泊まれないんですよ」という看護師さん。

結局、準集中治療室という、看護師さんの目が届く部屋に移ることになり、「心配で帰れない」という義母をなだめて、やっと帰ることに。

「代われるもんなら代わってあげたかとよ」
病室でも、ずっと息子の足を撫で続け、背中をさすり続けていた義母の背中がとても小さく見えた一日でした。

2回目の手術 脳動脈瘤コイル塞栓術

しばらくして、再手術を受けることになったクマちゃん。
今後は、動脈瘤をコイルで塞ぐそうです。

カテーテル? コイル?
脳の手術なのに、なんで太ももから管を入れるの?

説明を受けてもイメージできなかったので、後でネットでググって調べてみたところ、こんな感じでコイルを入れるのだそう。

社会福祉法人 恩賜財団 済生会熊本病院 血管内治療(コイル塞栓術)より

この方法を考えついた人もすごいけど、この手術を可能にする医療器材を作った人も素晴らしい!

麻酔の同意書にサインするときは、「このまま目が覚めなかったら…」と、
また不安になりましたが、あれだけ大きな手術にも耐えられたんだから大丈夫!という思いもあり、今回は私の心も安定していました。

カテーテルの手術は思ったより早く終わり、術後の経過も順調でした。

「このままいけば早く退院できるかも」
普通に動いたり話したりできるクマちゃんの姿にホッと一息。

この後に地獄のような日々がやってくるとは、その時の私は想像だにしていませんでした。

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