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短編小説 「この世界にごきげんよう」①


 ごきげんよう、絶望と希望が渦巻くこの世界。


 この国は美しい人で溢れている。街にはたくさん美人が歩いている、右を見ても美人、左を見ても美人ばかりだ。街にはこの街の象徴とも言える美しい薔薇が咲き誇っている。

 美しい薔薇には棘がある。だけど、この街の薔薇の棘は全て丁寧に刈られている。美しい花には棘がある。美しい生き物には毒がある、カラフルで目立つカエルは大抵毒ガエルだ。

 この街には美しい人が沢山いる、だけど、その美しい人たちには棘も毒もない。街の薔薇と同じで、棘も毒も綺麗に取り除かれている。


 あるのは絶望と希望だけ。


 この国の女性たちは初潮を迎えた日から、大人として受け入れられる。初潮を迎えた女性たちは国の養成所に入らなければならない。養成所は美しい女性を育てる為に設けられている。国民から女神養成所とも呼ばれている。

 養成所は初潮を迎えたら年齢関係なく入所しなければならない。例外的に身体的障害の人は入所はしなくてもよい。それ以外の女性たちは初潮を迎えたら養成所に入る。

 初潮は個人差がある為、早い人では七歳で親元を離れて養成所に入り、最大十年間は養成所から出られない。初潮が遅ければ親と過ごせる時間は長い為、不正をする者もいる。

 初潮を迎えた事は原則として自己報告なので、初潮は来てないと嘘をつく事もできるが身体検査が初潮が来るまで月一である為、大概バレてしまう。嘘の申告をした場合は罰がある為、大抵の人は正直に申告する。


 養成所では主に日常の作法や歩き方や人との接し方、言葉使いなどを学ぶ。退所できるのは最終試験に合格した者か不合格者、脱落者である。

 合格者は晴れて外の世界で暮らす事ができて、生活も一生困らない程度に保証せれている。だけど、不合格の者、脱落者の一生は最悪のものだ。

 不合格者、脱落者は強制労働か男性たちの性の捌け口として一生を終える。その事は女性なら誰しもが知っている事だ。だから、入所した女性たちは死に物狂いで美しい人になろうと一生懸命、美を磨く。


自己紹介がまだでした。わたしはの名前は、ホープ。十三歳で初潮を迎え、五年で養成所を合格者として退所した。この話は養成所の絶望と希望を書いていく。


 続く。


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