とある平日の昼下がり

「一歩踏み出す」
これが、なかなか出来ない。
特に生活がかかってくると
現状維持を守ろうとしてしまう。
まぁ、これはオレに限ったことかも知れないが
基本的には、出世欲や、物欲というものが
ないので、大胆に環境を変えるということを
好まないという特性がある。
「そうなのだ。」
一歩進むことによって
道幅が狭くなることが嫌いなのだ
常に選択肢が多い道を選ぼうとしてしまう

これは、「一本の電話から」の続きである。
https://note.com/stol6755/n/n7c0c66c147f7

陽子との話を終えた俺は
公園を出て
桜並木のある通りをくぐり抜け
その先にある「T字」の交差点を
右に曲がり、横幅の狭い道路を
そのまま直進した。
いまの時期は、春休みなので
どこから子供が飛び出してくるか
分からないから
車の速度は適度に落として
周囲に気を配りながら車を走らせている。
さらに交差点を左折し
そのまま北の方角へ、約1kmほど
進んだところに目的地がある。

実を言うと、
オレは保険の代理店で働いている。
言い方は悪いが
基本的には、実績をあげていれば
何も文句は言われない。
今日は午前中に用事があったので
許可をもらって、休暇を取っていたのだが
ひとつの着信が、
俺の今日の予定を狂わせた。
その着信の主(ぬし)が
「どうしても今日来てほしい」
と言ってきたのだ。
この着信の主は、自動車保険の契約を
していただいているのだが
今日、電話がかかってきた時点で
満期日まで一週間を
切ろうとしているタイミングであった。
二か月前から、しきりに
電話しているのだが
こちらから電話しても
なかなか電話がつながらない人で
どうしようかと悩んでいたところで
やっと、今日、このタイミングで
電話がかかってきたところである。

もちろん、契約ができずに
満期日を過ぎてしまった場合、
更新はできず、契約は解除となってしまう
これが、何を意味するかと言うと
自動車保険というものは
各契約ごとに等級が定められているが
等級が高ければ高いほど
割引が多くなり、保険の料金は安くなる。

元来、事故などで保険を使うことがなければ
等級は毎年、ひとつづつ高くなってゆくのだけど
事故で保険を使うことがあれば
翌年の等級は三等級ダウンする。

であるから、
せっかく積み上げた等級が
満期を逃すことによって
標準の等級に戻ってしまう。
と言うワケだ。

今回のように担当の決まっている
代理店であれば
大概の担当者は保険の満了日が
切れないかどうかは
常に目を光らせているから
まず、よほどのことがない限り、
知らぬ間に保険が切れるということはない。

特に最近は、携帯電話や
ショートメール、そして、LINEなどの
方法で連絡をする方が増えているから
昔のように顧客とのやり取りを
電話と訪問のみで
行っていた時代に比べれば
顧客との連絡は取りやすく
なっていると言えるであろう。
だからと言って100%とは言えない
世の中に完璧と呼べるものはないのだ。
こと人間社会においては
特にそれが当てはまるだろう。

今回もその一例と言えるし
少なくとも、俺はそのように思う。
「よりによって休日なんかに」
この類いの顧客は得てして
こういうものだろう。
満期日まで余裕がないから
出来るときに更新しておかないと
どうなるか分かったものではないから、
休日でも受け入れるしかなかった。

平日の昼下がり・・・・。

色々と考えながら運転している間に
車は目的地に辿り着いていた・・・・。

「続~平日の昼下がり」
に続いていきます
https://note.com/stol6755/n/n2b40c71368b2



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