誰もいない海 ボクのひとりじめ
ボクがいく海は千里浜。
国内で唯一クルマで砂浜を走ることができる海岸で、地元民あるあるなんだけど石川県以外の他県の砂浜も車で走れると思って砂にはまってしまうことが多々あるみたい。
そんな千里浜は夏になるとたくさんの人が訪れる。
今年はいろんな影響から例年よりもだいぶ人出は少ないみたいだけど、それもたくさんの車が砂浜に並んで遠浅の海で海水浴を楽しんでる。
ボクも千里浜を訪れてはポートレート撮影をしたりしてこの夏を楽しんでる。
でもボクには独り占めできる海がある。
「千里浜」の延長線上にあるボクの海は地元民しかしらないから基本的に人がいない。海の家やトイレ、シャワーとかがないから海水浴客もいない。
だからボクは、一人になりたいときはこの海にやってくる。
「ひと」を撮りたいと思った
写真を始めてからずっと、一部のまちおこしイベントを除いたらボクは基本的に風景写真を撮っていた。
自分の心の琴線に触れた風景を写真として残しておきたくてボクはカメラを始めたわけだけど、誰もいない風景写真を撮り続けることに少しだけさみしさを感じていたのは事実だし、誰かと一緒に写真を撮る楽しみを味わいたいとも思っていた。
ボクが住んでいる場所はいわゆる”地方”で、頻繁に行われているフォトウォークなんか皆無だし、唯一金沢で開催される予定で楽しみにしていたたけさんぽも世間情勢を鑑みて中止になってしまった。
だからボクは千里浜に来た人の写真を撮ることにした。
知らない人に声をかけること
ボクはこれまでナンパはしたことがなかったし、どちらかというと陰キャの部類に入ると思うから、写真を撮らせてもらうために自分から声をかけるようなことはできなかった。
過去にあったのはボクが写真を撮っていると相手から声をかけてくれたケース。自分から話しかけるのはやっぱり苦手。
そんなボクが勇気を振り絞った。
初めての声掛けは見事に成功した。
人ごみの中で撮ることにつかれてきた
それから何度か、いろんな人のポートレートを撮らせてもらう機会があった。みんな魅力的な人ばかりで、ボクのスキル不足をその魅力で補ってくれていた。
毎回新しい出会いがあって楽しく撮影させてもらってきた。でもこの夏一番の暑さの日に千里浜で撮影していた時にボクはふと思った。
「一人でゆっくり撮影したいな」
って。
わがままだよね。
ボクはボクの誰も知らない海へ向かった
そう思ったその足で、ボクは誰も知らない海で向かっていた。
そこには静かにたたずむ海と空が広がっていた。
太陽が沈む前の空は目の中がオレンジ一色に染まるほど力強くギラギラしてる。
水平線の向こうに太陽が隠れた直後は低コンストラストの世界がやさしくボクを包む。
海から目が離せなくなったボクの頭上から夜のとばりがゆっくりと、でも確実に下りてくる。
刻一刻と変わる空の表情と相反して、波は変わらずにそのリズムを刻み続ける。
スランプ続きだったボクはこの日の海に出会えて少しだけ心を整えることができた。
一人になって心を整える。
そうして改めて思ったことは
やっぱりボクは陰キャだな。
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