縁を大事にする


レコード会社の新人開発を担当していた頃は、レコード会社の売り上げが絶好調の頃だったので、アマチュアのアーティストにとってレコード会社から連絡がくるなんてことは夢のような話という時代でした。

毎日送られてくる音源や資料を見て連絡をとる場合もあるし、ライブハウスなどでスカウトすることもしばしば。
クオリティーの高いアーティストに対しては当然競合他社も目をつけていて、争奪戦になることもあるわけです。
不思議に思うかもですが、そんな時に私が取った行動は競合した場合は下りるということでした。

私はまず信頼関係を作るというところから始めるので、会社の看板は背負ってますが、私という個人の人間を信頼してくれて契約までたどり着くという手法を取っていたのです。
契約金をいくら払うからとか、今すぐデビューさせるからとか、そういう釣るような発言は一切しません。
それで他社に行ってしまったら、それはもう縁がなかったってこと。

縁というのは本当に不思議なものでハッキリとあるんですね。
数多くのアーティストと関わってきて、それを感じる瞬間がたくさんありました。
新人開発担当者として社内にプレゼンしても、誰も手を上げなくて他社でヒットした例もたくさんあります。
逆に争奪戦になって、他社が相当な契約金を積み上げてもこちらにきてくれることもありました。
しかし競合した場合、どんな手を使ってもこちらに引っ張ってくるというのは、当時のビジネス的な考えでは当然だったのかもしれませんが、私はやりたくないことでした。

「流れ」とか「縁」というのを大事にしていたからです。
縁のないものを一生懸命引き寄せようとしても、どこかに無理が生じます。
それが売り上げにつながればそれでいいじゃんというのは、私には嫌なことだったのです。
だからレコード会社を辞めることにしたんですけどね(笑)
当時は「何キレイごと言ってんだ!」という風潮でしたから。

物でも人でも音楽でも、当然恋愛でも「縁」というのがあります。
その「縁」というものを大事にすることがいい人生を送ることに繋がると思っています。
「縁」があるのに無視してはいけないし、「縁」がないのに無理してもいけません。
誰に取っても素敵な出会いがあります。
気づくか気づけないかはあるかもしれませんが。

「縁」がある人や物は長く長く大事にしていきましょう。


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