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【しらふ日記】 最初の山が一番たいへん

前にソバー・キュリアスの記事を書いて以来、相変わらず飲酒と禁酒を繰り返している。本当は完全断酒が理想なのだが、飲みたいときは好きに飲んで、体の調子が悪くなったり仕事が忙しくなったりすると1〜3週間ぐらい酒を抜く、というスタイルで飲酒と禁酒を続けてきた。今年の夏は禁酒関連の書籍を読む機会が多くあったので、また禁酒にチャレンジしている。現在ノンアルライフ11日目。I’m 11 days sober. だ。これまで何度も繰り返してきた禁酒経験から思うところや得られた知見が溜まっているので、noteに記録し、「しらふ日記」としてまとめていくことにした。禁酒について書くことで、禁酒を続けるモチベーションにしたいと思う。そして願わくば、酒断ちを望む誰かの助けにならんことを。

しらふ生活最大の山場

禁酒で1番しんどい山は初日にやってくる。毎日晩酌をするタイプの酒飲みにとって、まずは1日目を我慢することが何より難しい。とにかく1日目。禁酒を「始める」のが1番の難所なのだ。もちろん、ひどい二日酔いの朝、「もう酒は飲まない」と思って禁酒を始める人も多い。その場合、初日の禁酒は簡単かもしれないが、問題はその翌日だ。体調が復活していつも通りの生活に戻ったときに「今日も飲まない」と思えるかどうか。実際には、いつも通りの「酒を飲む日常」を止める第一歩が難しいのだ。私自身、禁酒中に飲みたくなっても、「ここで飲んじゃえばまた禁酒1日目の山を登らなきゃならなくなる」という思いが抑止力になっている。「飲まない日常」を続けるほうが、「飲む日常」を打破するより、幾分簡単な気がする。とにかく最初に山の頂上まで登ってしまえば、あとは下るだけだから。

さて、今回の禁酒チャレンジの第一歩を助けてくれたのはこの本。

10日間の禁酒チャレンジをサポートする本で、著者のルイス・デイビッドはイギリスのセラピストで、長年にわたり依存症患者のリカバリーを助けてきた人だ。本書では10日間禁酒を続けるためにどのようにアルコールや禁酒、そして自分自身と向き合えばいいのか、すぐに実行できるアドバイスがDay 1から Day 10までの章立てで綴られている。

10日間、毎日1章ずつ読みながら禁酒してみて驚いたのは、各章のアドバイスがその日その日の精神状態にピッタリなところだ。例えば1日目は、いかにして飲酒欲求をやり過ごすかについてアドバイスが書かれている。欲求を「波」にたとえ、その波をサーフィンするのをイメージするよう勧める。ちょっとした欲求は小さい波、強い欲求が起こったら大きな波を乗りこなすことを想像する。著者が”urge surfing”と呼ぶこのイメージトレーニングをすると、不思議と1日目の欲求を乗りこなすことができた。

2日目には、「ちょっとくらい飲んでもいいじゃん」という、脳内の悪魔のささやきに対処する方法が紹介される。まずはそのささやきに名前をつけ(著者は「thought bomb 思考の爆弾」と呼ぶ)、きちんと受け入れたうえで、受け流すこと。「お祝いだから飲もうよ」という悪魔のささやきに対して、はなから「NO!」と拒否するのはストレスが溜まる。ストレスが溜まればそのうち爆発する。だから、「Okay, but not today.(確かに。でもまたこんど。)」と、一旦その提案を認めたうえで、「でも、今日は飲まない」と考えるのだ。これも非常に効いた。特に、週末の開放感から飲みたくなったときに、「飲んでもいいんだけど、飲まないでおこう」と思えたのが嬉しかった。

これまで数々の禁酒本を読んできたけれど、このように、著者が伴走してくれるタイプの禁酒本は初めてだった。著者のルイスさんの優しく力強い語り口と、これまで多くの人をサポートした経験に裏打ちされたアドバイスが実に頼もしい。おかげで、最初の10日間を楽に禁酒をつづけることができた。ジャンルとしては「自己啓発本」だ。「自己啓発」と聞くと、なんとなく胡散臭そうに思う人もいるかもしれないが、英米では“Self-Help Book”と呼ばれ、人気ジャンルの一つである。禁酒生活の始めの一歩を踏み出せないでいる人にはお勧めの本である。いっしょに山を登りましょう。

まだ邦訳は出ていないので、是非とも私が訳したい。(ご興味のある出版社さま、ご連絡ください!)


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