上野

じぶん商売

「じぶん銀行」という名称のよさは、口座をはじめて持つ若い人たちの、抵抗ハードルの高さをかなり下げた、という所だと思う。

子供のうちは、お金のながれは、どこか他人事だった。

それを、自分の管理領域とすることの、ハードさと、たのしさ。

大人になると物事はつねに、「たいへん」になっていくと言われて久しい(日本語のうちでの社交辞令? 挨拶のようなもん)けれど、自分の周囲のことを自分でコントロールすることの楽しさだって、忘れちゃいけない。

わたしもこの「じぶん銀行」の発想に触発されて、つくってみた。名付けて、「じぶん商売」

(ぜんぶ漢字表記で「自分銀行」としなかったところも、いままでの銀行の名称と隔絶していて、「れんしゅうちょう」みたいで、いい。これだけ賞賛しておきながら、口座を持ってはいない。)

商売=もうける

と安直にいっちゃいけない。ここでの語彙は、

商売=ぶつぶつ交換

つまり、じぶん商売とは「自分の生き方のなかで、なにかとなにかを交換し、幸福を得る」

という発想のもとにおこなわれる商売なのである。

以前に記事にもした、朝と夜の時間の交換も、この発想だ。

(『朝時間も 夜時間も 代金引き換え方式、らしい』

https://note.mu/stentorcoeruleus/n/n6b2fc3e48714

人生は、「お支払い」の連続だ。しかし、時間もお金も、もったいないからといってお支払いしないでいると、ぶつぶつ交換以前の時代に逆戻りしてしまう。つまり、カレーを作りたいなら、畑を耕し、野菜をそだて、肉牛をそだてて屠り、稲作をし、スパイスを植え、油をさがしてこなくてはならない。

「お支払い」は、なんだか、損をしているような、贅沢しているような、楽しているような、罪を犯しているような、そんな感覚になぜだか陥るが、

お支払いした方が、物事は円滑に、快適にすすむ。分業化。得意な人にまかせておく方が、生産は速く、また品質も高い。

さて、今回の商品はなにかと言いますと

ずばり、「日曜日の余裕」

平日はどうしても、業務に思考力・行動力ともに持っていかれてしまう。そこへもって、朝すこし寝坊して、「お弁当どうする? コンビニでいっか」とくるならまだいいが、「コンビニ飽きたし、じぶんでサンドイッチ作った方がぜったい安くてうまい、なのに、時間がない」となると、これが精神的ストレスになる。

いそいでサンドイッチを作れたはいいが、そのせいで駅まで走るのもまた、ストレスになる。「時間にまにあわなそう」という精神状態は、本気で人を追いつめにくる。

そこで、日曜日にサンドイッチを作って、冷凍しておく。仕事の日の朝に、ジップロックにいれて持てば、お昼にはちょうど解凍している。あるいはレンチン。

サンドイッチつくるなんて、ちょっとした手間なんだ。けど、その「手間」のかんたん度を高めに見積もってしまうと、「けっこう時間かかるぞ」という焦りにかわる。平日に、その「ちょっとした手間」が現れることで、ストレスを感じ、理想実現度がさがる。

そんな、平日にどうしても必要になる「ちょっとした手間」を、いくつか、日曜日の余裕と交換しておく。日曜、遊ぶことややることで目白押しの人にはオススメできないけど、「今ちょっと暇だな」という瞬間が、休日に10分でもあるのなら、これはかなりストレス回避になる。

具体的には、まず、平日の焦った瞬間のことをメモしておく。それから、休日にやっておける作業をおこなう。

つまり、平日の焦りと、休日の余裕とを、すこしずつ交換し、余裕加減を均一化しよう、という試みなのであった。

事務仕事をしていると、仕事の効率って、ほんと最適化がむずかしいな、と実感する。

効率化を実現する、もっとも安直な方法は、「まとめてやる」だ。おなじ作業をずっとしていると、慣れることでスピードが上がる。

しかし、「まとめてやる」作業件数を、まとめすぎると、失敗につながる。なにかとなにかを記憶し、この作業につかう、などとするときは、頭に頼りすぎるせいで、その記憶を想起するのに時間がかかる。結果、作業を二度にわけてやったほうが速い、という話になってしまう。

作業の、集約と、分解。正反対のこれらが、適切な量だけあわさることで、最高のスピードが出せるのだけれども。時間を測って比べて測って比べて……トライ&エラーを繰りかえし、洗練してゆくしか。この分野の探求に、終わりは、ない。

しかし、それを会社で試させてもらい、じぶん商売に役だてられるなんて、どっからみても人生丸もうけである。

ほかにも、「お風呂にながく浸かりたいけど時間がないから、洗ってるあいだ熱いシャワーをかける」だとか、朝うつっぽいから、30分早く寝て、30分早く起きて、すきなマンガを読んでから出社する」だとか。

妙案がある方、ぜひ野崎までお寄せください。



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