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【映画】哀れなるものたち

すごくワクワクする部分と倫理観がぶっ飛んでる映画だった。こんな映画初めて!!すっごい映画に出会ってしまった。ヨルゴス・ランティモス監督。早くも2024年1番な映画だと言えるかもしれません。


何回か観て、今一度世界観と作者の伝えたい事やユーモラスな皮肉を隅々まで受け取りたいと思った。アーティスティックな映像美を今一度!

映像はアールデコ調を基盤としながら、未来的でもありながら、飛行機がゆっくり飛んだり、空の色が自然ではない、セピアになったり,カラフルになったり、何ともファンタジックな世界で語られる哲学的で現実的なストーリー

頭が犬で胴が鳥、または頭が鳥で胴が犬の博士が作り出した生物、鳥犬

天才外科医がドッキングさせた鳥イヌたち



渋谷パルコでの展示




オープニングのインテリア、シルク地に刺繍がしてあり美しい部屋の壁のアップから始まる、ため息もの。
ヴィクトリアの青い甲冑を模したようなタックの入ったデザインの衣装は、色合いが美しく、レディマクベスを思い出した。

監督とエマストーン
フローレンスピューちゃん




肩を強調した大きめのパフスリーブ、1970年代のドレスに子どもっぽさを加えるためのショートパンツ、幼い時は白を基調とした純真無垢な物を着用し、

衣装スケッチ




旅先のドレスはカラフルでキッチュな色合い、娼婦の時はシースルーの羽織を着て、学校に行く時は硬めの黒と白にニーハイという学生スタイル




ウェディングドレスも素晴らしかった



長身のエマストーンはなんでも着こなし、黒くて長い美しい髪、まるで生まれた時から一度も切ったことがないような伸び方と長さも映えていた。


詳細に内容に触れていきます~ここから細かく
ネタバレ✂︎------------------------------------


胎児の脳を自殺したお母さんに移植したことで生まれた、"体は大人、中身は子ども"のベラ。コナンくんと反対笑😆

フランケンシュタイン博士の様な倫理観ぶっ壊れマッドサイエンティストが父親がわりになりながら、彼女を育てていく。ゲップがバブルになって外に出ていくシステムと、彼の育てられた背景の闇を時々感じながら話は進んでいく。

エマストーンが演技力で少しずつ幼児から知性のある大人に変化していく表現が素晴らしすぎる。ララランドの主演とは全く違って別人にしか見えない!裸の姿がだいぶ晒されるけど、そこまでセクシャリティを感じない不思議。



内容は一見、暗くも感じられるけど、ファインダー越しとか、ミニチュアに見せてみたり、カメラの撮り方や、どこか遠い国の話…と視聴者を現実から切り離すファンタジックな映像を挟む事で、暗さを感じさせない。グロテスクシーンはあるけど。


理性が無く、食欲、睡眠欲、性欲と本能のままに生きるピュアなベラ。ベラの口に戸は立たないし、彼女の好奇心を止めることは誰にもできない。

したいことは全部経験してみる。経験した上で自分に湧き起こる感情を見つめ、どうしたら自分が幸せでいられるか、あるがままに生きられるかを模索する。Try & Error

ベラを繋ぎ止めようとする博士と紙面上の婚約者マックスをのして、食欲と性欲のかたまりのダンケンと自由をもとめて大冒険という名の旅行に出るが、本能が快楽だったベラにハリーとマーサによってもたらされた知性。本を読むこと、学ぶこと、哲学の楽しさを知る。理想主義と現実主義、理性と本能、相反するものを持つものたち、それらは偏って持つものではなく、成長と共に自分の中でバランスをとっていくもの

よく見ると色の中に男性たち、青がマックス、紫がゴッド、紅はダンカン


ベラのステップアップに彼はついていけず、ベラは彼から卒業する。いつだって自分と向き合って前に進む人間は、どんどん先に進み、その時に必要な人と出会って、時を過ごし、別れと出会いを繰り返していく。

ベラの衣装も室内のインテリアも華やかで世界観が好き!ってなった

3枚も別バージョンのフライヤーがある!




ベラはどこまでも自由

そして、自分の欲望や好奇心に忠実

ベラは哲学を学び、理想を追い求めるあまり、貧困な人たちを見て、お金を施したくなるも親切ではない人に大金を渡してしまう皮肉(これが現実)

ベラは亀裂の入ったままのダンカンと無一文でマルセイユに降り立つと今、必要なものにフォーカスして身体を売り始める。でももうこの瞬間、ベラは現実と向き合えるようになっている。成長速度の速さよ…

sex and moneyと合理的、ベラはEQはあまり育っていかないんだよね、不思議。娼婦になることで後に得る心の虚無感は初めのうち予想できないし、他の人と比べる事でダンカンが素晴らしいsexをくれる相手だとわかる。

でも、ただただ悲嘆するダンカンよりも行動的で問題解決能力が高いベラ
男性優位社会の皮肉りも描き、娼婦の社会で女性側が選ぶのはどうかしら?と素朴な疑問をぶつけるベラ


やっと大冒険を終えて、居場所を突き止められたベラはパリからロンドンに戻り、父親替わりであるゴッドと再会、ずっと待っていたフィアンセ、マックスと結婚するかと思いきや、
ヴィクトリア(ベラの母体である母)の夫が現れる。そこでも彼女は自分の好奇心を優先し、夫についていく。彼女の辞書に責任や誠実という言葉はない。

夫のクレイジーさにベラの根本にある残酷さとヴィクトリアの自死の理由に気づく。

ベラの残酷さは若さゆえからだと思っていたけど、遺伝もあるね。
血は争えないもんだ。


だいぶ倫理観ぶっ壊れてるぞ!と突っ込みながらのハッピーエンド❤️ベラは医学の道を進みながら好奇心や探究心を満たし、マックスに愛を与え、与えられて幸せでいられるのか?見方によっては希望を残しつつも、倫理観が抜けてる事に気づけてないからある意味バッドエンドかな笑

エンドロールがロールになってなくて、映画の中に出てきた物を表すモチーフを映像に持ってきていて、素敵だった。最後まで隙がなく目が離せなかった


渋谷のシネクイントホワイトで見たので、その後3Fでヒグチユウコさんの描いたポスターも観れたし大満足!

過激な性描写と死体を切るなどのグロテスクシーンはありますが、ぜひ多くの方に見ていただきたいです♪

ヒグチユウコさんのイラストポスター


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映画感想文

NYでフリーランスのライターと日本語の先生をしています。どこまでも自由になるため、どこにいても稼げるようなシステムを構築しようと奮闘中。