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【子ども・大人】大人ってなんだろう?中学生と30歳の学びのアンテナ|22年2月2回目清水裕友さん

中学生のハローワーク2月2回目のゲストは、発達支援のお仕事をされている児童指導員の清水さん。今までの方々に比べると年齢が近く親しみやすそうなお兄さんで、呼び名は「ゆうせんせー」。学生時代は理系分野でバリバリ研究を重ね、仕事も研究職に就いてなんだかすごそうな研究をしていたのに、ぐるりと方向転換されたという。いや、でも、コンパニオンプランツを育てていたというし、学生時代から個々の特性を活かすことに興味あったのかな?そもそも転職って?どんな話が始まるのか検討もつかないまま、大人も子どもも興味津々。


子どもの頃からの謎

ゆうせんせーは子どもの頃、自分はみんなと違うなと感じることが多かったそう。みんなが当たり前のようにわかることが、わからない。「先生ってハゲだよね」って友達同士では盛り上がるけど先生の前では言わない、そんなこと誰も言ってなかったのにみんなは知ってる。不思議で仕方なかったけど、自分なりの結論を導き出した。

「みんなは透明の教科書を見てるんだ」

自分には見えない透明の教科書が配られていて、みんなそれを見て行動している。だから、自分は知らないことをみんなは知っているんだ。僕はその教科書を見ていないから、みんなが守っているルールを知らないし、守れない。

ゆうせんせーの話を聞きながら、「暗黙の了解」って、いつどうやってわかるようになったんだろう?と考えてみる。小学生の頃、私の学年の友達は「セーラームーンはダサい」という共通理解があったけど、1つ上の学年や3つ下の学年の友達はセーラームーンが大流行だった。だから私は、遊ぶ相手によって、セーラームーンを大好きになったり大嫌いになったりすることで、友達と楽しく遊ぶ術を身につけていた。そういえば、こんなこと誰にも教わってない。知らない間に、透明の教科書を読んでたのかも。


学生時代の研究、そして研究職へ

ゆうせんせーは自分の研究についても話して下さった。専門的な言葉も少し登場して、なんだかカッコイイ。

透明な教科書のことを胸に秘め、教師になる道と研究者になる道で迷うゆうせんせー。そんなゆうせんせーに、当時の先生がくれたアドバイスは「教師はずっと続けられるけど、研究には体力が必要」ということだった。ならば、若いうちに研究職にチャレンジだ!調べ尽くして受けた会社は、待遇も良くて同僚も良い人ばかり。就職は大成功!・・・のはずだった。


明かされる「透明の教科書」の真実

同時進行でたくさんの仕事を処理できない。会社は悪くないのに、うまく働けない。これって、教職課程で教わったことに似てない?自ら医療機関の門を叩いたゆうせんせー。そこで、子どもの頃から気になっていた透明の教科書は本当は存在しないということを知らされる。友だちは教科書を読まなくてもわかっていただなんて。

長年の謎が明らかになり、スッキリしたゆうせんせー。ちょうどボードゲームをたくさん持っている友だちができ(後の質問で、SNSで出会ったと聞き、中学生はびっくり!)、ボードゲームを通して自己分析を重ねたおかげで、転職は大成功。たくさんの子どもたちを相手にする教師ではなく、自分と同じように透明の教科書に苦しんでいる子の助けになれる今の仕事は、ゆうせんせーにピッタリだった。

私は転職に失敗したことがあるので、自己分析の大切さはめちゃくちゃ身に染みてわかる。自分が何をしたいのか、いちばん大切にしたいことは何なのか、自分の実力は社会全体で見てどのあたりなのか・・・。自分のことがわからないと、うまくマッチングしないんだよね。ゆうせんせーにボードゲームを教えたという友人は、きっと恩人なんだろう。そういう出会いがあったのは、ゆうせんせーの「透明な教科書に苦しんでいる子を助けたい」という思いが、一点の曇りもない純粋で美しいものだったからに違いない。


大人ってなんだろう

ところで、ゆうせんせーから、冒頭に問いかけがあった。

「大人って何だと思いますか。大人の条件って何ですか」

経済的に自立したら、18歳になったら、自分を律することができたら、感情に振り回されなくなったら、自分の意思で動けるようになったら・・・大人からもこどもからも、いろんな意見が出てくる。「そう思ったら大人」という究極の答えも。

「こんなに条件があるなんて、大人って存在するんでしょうか」
そう結ぶゆうせんせー。私が、男性と女性の境界線とか、障害の有無の境界線は存在しないと感じているように、ゆうせんせーは「子どもと大人の境界線なんか無いよね」って常日頃から考えているのかもしれない。


年齢にふさわしい学び

シュタイナーの著作で、「14〜21歳は28〜35歳と相互理解ができている」「思春期は28・29歳に憧れの眼を向ける」と書いてあったのが、ゆうせんせーの話を聞きながら腑に落ちる。子どもと大人の境界線なんて、正直なところ、あまり興味を持って過ごしていない私。でも、きっと、中学生にとっては興味のど真ん中だ。そういえば思春期って、子ども扱いされると腹が立ったり、大人と対等に議論したくなったりしてたっけ。それに、第5七年期(28〜35歳)は、一人前の大人に見られたくて、反抗期さながらに上司に食ってかかったような苦い記憶もある。

きっと、ゆうせんせーの張っているアンテナと中学生のそれは相互に通じ合っている。第6七年期の私とは違うもので繋がれているんだろう。ちょっと羨ましいけど、真似できそうにない。親や担任のできることを超越した学びは、中学生のハローワークの醍醐味だ。

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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。 小学校・放課後等デイサービスを経て、現在は児童発達支援事業所で障害児支援にあたりつつ、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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